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2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条7項

2022-04-28 04:34:05 | Weblog
2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条7項

(訂正審判)第百二十六条
7 第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。


・126条7項(独立特許要件)(実体要件)

 126条7項は、特許請求の範囲を減縮した(126条1項1号)後の発明、又は誤記若しくは誤訳の訂正をした(126条1項2号)後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない旨を規定している。
 かりに独立して特許を受けることができない部分のみが訂正後に残ったとしても、128条の規定により訂正後における明細書又は図面により特許出願がなされたものとみなされ、その特許出願の内容は瑕疵があるということで特許無効審判が請求されることになる。

 平成6年改正において、誤記又は誤訳の訂正を目的とする場合は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては外国語書面)に記載した事項の範囲内において特許の訂正を認めることとしたことから、誤記又は誤訳の訂正を目的とする場合についても、訂正後の発明が独立して特許を受けることができるものでなければならないこととする旨の改正を行った。

 独立特許要件が適用されるのは、126条1項1号又は2号の訂正がされた当該請求項のみであり、126条1項3号又は4号の訂正がされた請求項、訂正がされていない請求項については適用されない。

 独立特許要件とは、29条、29条の2、32条、36条4項1号、36条6項1号~3号、39条1項~4項の特許要件をいう。


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2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条6項

2022-04-28 04:27:28 | Weblog
2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条6項

(訂正審判)第百二十六条
6 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。

・126条6項(訂正の制限)(実体要件)

 126条6項は、126条1項に規定する訂正は、いかなる場合にも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはならない旨を規定している。
 訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、126条6項はそうした事態が生じないことを担保したものである。

 形式上特許請求の範囲の減縮に該当していても、実質上特許請求の範囲を拡張する訂正や、変更する訂正は、認められない。

 「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。

 「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。

・訂正審判の審決例
 発明の解決課題や解決手段が大きく変更されたり、訂正前の発明の実施に該当しない行為が訂正後の発明の実施に該当することとなるときは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更することになる。


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2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条5項

2022-04-28 04:19:44 | Weblog
2022年4月28日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条5項

(訂正審判)第百二十六条
5 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面
(同項ただし書第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあつては、外国語書面))
に記載した事項の範囲内においてしなければならない。


・126条5項(訂正ができる範囲)(実体要件)

 126条5項は、訂正審判において訂正をすることができる範囲について規定している。
 特許後の訂正は、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず、いわゆる新規事項を追加するような訂正は認められない。

 ただし、126条5項かっこ書により、126条1項2号(誤記又は誤訳の訂正を目的とするもの)の場合には、特許がされた特許請求の範囲、明細書又は図面ではなく、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては外国語書面)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
 126条1項ただし書2号の「誤記の訂正」は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならない。
 126条1項ただし書2号の「誤訳の訂正」は、外国語書面に記載した事項の範囲内でしなければならない。

 126条1項ただし書1号と3号と4号の訂正は、特許出願の願書に最初に添付した明細書等に記載じた事項の範囲内ではなくて、特許権の設定の登録時の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならない。


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2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条4項

2022-04-27 05:59:28 | Weblog
2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条4項

(訂正審判)第百二十六条
4 願書に添付した明細書又は図面の訂正をする場合であつて、請求項ごとに第一項の規定による請求をしようとするときは、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項の全て(前項後段の規定により一群の請求項ごとに第一項の規定による請求をする場合にあつては、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全て)について行わなければならない。


・126条4項(明細書又は図面の訂正と請求項との関係)(方式要件)

 126条4項は、平成23年改正において新たに設けられた規定である。
 126条4項は、請求項ごとに訂正審判を請求しようとする場合であって、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならない旨を規定している。
 明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部だけに訂正審判が請求され、その訂正が認められると、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)が生じることになる。 
 そこで、特許権者が行う手続によって1つの特許権に複数の明細書又は図面が発生することを防止するために、明細書又は図面の訂正と関連する全ての請求項を請求の対象としなければならないこととした。

 特許請求の範囲に記載した文言自体を訂正していなくても、明細書又は図面の訂正によって特許請求の範囲の減縮をする訂正に該当すると解されることがある(最高裁平成3年3月19日判決・クリップ事件)。

・明細書の一覧性の欠如(明細書の束)
 明細書又は図面の訂正が、複数の請求項に係る発明と関連する場合に、その明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部の請求項だけについて訂正審判が請求され、その訂正が認められると、その一部の請求項に関連する明細書又は図面は、訂正後の内容が反映されるが、その他の請求項に関係する明細書又は図面については、訂正前の内容のままであるため、請求項ごとに異なる明細書又は図面が発生することになってしまう。
 この場合には、それぞれの請求項について、権利の内容を理解しようとすると、特許登録原簿に記載された審決の確定経緯を追いつつ、訂正前後の異なる複数の明細書又は図面を読み分けなければならず(このような状況のことを、「明細書の一覧性が欠如している」又は「明細書の束」が発生したという。)、権利把握のための負担が増すことになる。
 そこで、平成23年改正に当たっては、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならないこととし、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)の発生を防止することとした。

・具体例
 訂正前の特許請求の範囲の記載は下記のとおりである。
 【請求項1】Aを備えた装置。
 【請求項2】Bを備えた請求項1に記載の装置。
 【請求項3】Cを備えた請求項2に記載の装置。
 訂正前の明細書には、下記の記載がある。
 【0101】Aには、A1とA2が含まれる。
 【0102】Bには、B1とB2が含まれる。
 【0103】Cには、C1とC2が含まれる。

・明細書の【0101】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0101】Aには、A1が含まれる。
 Aを含む請求項1~3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。

・明細書の【0102】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0102】Bには、B1が含まれる。
 Bを含む請求項2と3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。

・明細書の【0103】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0103】Cには、C1が含まれる。
 Cを含む請求項3について訂正審判の請求の対象としなければならない。


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2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条3項

2022-04-27 05:54:22 | Weblog
2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条3項

(訂正審判)第百二十六条
3 二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに第一項の規定による請求をすることができる。
 この場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。


・126条3項(請求項ごとの訂正審判の請求)(方式要件)

 126条3項は、平成23年改正において新たに設けられたものであり、訂正審判の請求の単位について規定している。

 126条3項前段は、訂正審判の請求を特許権単位のみならず、請求項が2以上ある場合には、請求項単位で請求することができる旨を規定している。

 126条3項後段は、1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等があるものについては、「一群の請求項」という概念を導入し、それらの請求項は「一群の請求項」として一体的に扱うこととした。
 「一群の請求項」の中で、かりにに請求項ごとに訂正の許否判断を行うこととすると、請求項ごとに審決確定の時期が異なったり、その許否判断が分かれたりする場合には、特許請求の範囲の一覧性の欠如が生じることがある。
 そこで、請求項ごとに請求しようとする請求項の中に「一群の請求項」がある場合には、これらの「一群の請求項」を一体的に扱って請求しなければならないことを規定し、「一群の請求項」の中で、請求項ごとに審決確定の時期が異なったり、訂正の許否判断が分かれてしまうことを防止することとした。

 「一群の請求項」については、「当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係」と定義し、その趣旨を明確にしたが、この他に、請求項の間の引用の関係が親―子―孫…のようになる等、その他複雑な引用関係を有する場合については、経済産業省令で規定することとした。

・特許請求の範囲の一覧性の欠如
 1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等がある請求項に対して、請求項ごとに訂正の許否判断を行うと、訂正が認められた複数の請求項間で審決確定の時期が異なったり、訂正の許否判断が複数の請求項間で分かれたりすることがあり、特許請求の範囲の一覧性の欠如が生じることがある。
 特許請求の範囲の一覧性の欠如が発生すると、引用される側の請求項の訂正内容が、引用する側の請求項に反映されない状況などが生じることになるため、それぞれの請求項について、権利の内容を理解しようとすると、特許登録原簿に記載された審決の確定経緯を追いつつ、訂正前後の異なる複数の特許請求の範囲を読み分けなければならず(このような状況のことを、「特許請求の範囲の一覧性が欠如している」という。)、権利範囲の把握のための負担が増すことになる。
 そこで、平成23年改正に当たっては、1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等があるものについては、「一群の請求項」として一体的に扱うこととし、特許請求の範囲の一覧性の欠如の発生を防止することとした。

・具体例
 訂正前の特許請求の範囲の記載は下記のとおりである。
 【請求項1】Aを備えた装置。
 【請求項2】Bを備えた請求項1に記載の装置。
 【請求項3】Cを備えた請求項2に記載の装置。
 請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する場合は、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって請求項3も連動して訂正されるから、請求項2及び3が「一群の請求項」を構成する。
 しかし、訂正事項の対象とならない請求項1は、訂正前に請求項2と引用関係があるものの、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって連動して訂正されるものではないため「一群の請求項」を構成しない。
 この場合は、請求項2と3について一群の請求項ごとに訂正審判の請求をしなければならない。請求項1は訂正の対象に含める必要はない。


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2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条2項

2022-04-27 05:50:01 | Weblog
2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条2項

(訂正審判)第百二十六条
2 訂正審判は、特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決(請求項ごとに申立て又は請求がされた場合にあつては、その全ての決定又は審決)が確定するまでの間は、請求することができない。


・126条2項(訂正審判の請求の時期的制限)(方式要件)

 126条2項は、特許異議申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決が確定するまでは、原則として、訂正審判を請求することができない旨を規定している。
 平成5年改正において、特許無効審判が請求されている場合には、その審判手続中に訂正の請求という形で訂正審判と同内容の訂正を認めることにより、訂正の可否についても特許無効審判の審理と併せて審理する審理構造を採用した。
 そこで、特許無効審判が特許庁に係属している時は、訂正審判の請求をすることができないこととした。

 平成23年改正において、126条2項かっこ書を追加したが、これは、特許無効審判が請求項ごとに請求された場合に、一部の審決が確定しても、全ての請求項に係る審決が確定するまでは、訂正審判の請求がすることができないことを規定したものである。

 平成26年改正により、特許異議申立制度が創設されたことに伴い、特許無効審判に倣い、特許異議申立ての決定が確定するまでは訂正審判の請求をすることができないこととした。

 平成15年改正においては、いわゆる「キャッチボール」現象の弊害に対処するため、126条2項ただし書に、例外的に審決取消訴訟提起後一定期間(90日)に限り訂正審判の請求を許す規定を設けた。
 しかし、その後、改正前181条2項(平成23年改正により削除)の規定による「差戻し決定」によって発生する「キャッチボール」現象の弊害が指摘されるようになったことから、平成23年改正においては、「キャッチボール」現象が発生しないようにするため、該当箇所を削除して、訴訟提起後の訂正審判の請求を禁止することとした。

・「キャッチボール」現象について
 平成5年改正前は、特許権に対し特許無効審判の請求がなされた場合、特許権者は、別途、訂正審判を請求し、特許を訂正することによって、特許が無効になることを回避していた。
 しかし、同じ特許権について、特許無効審判と訂正審判がともに係属した場合、特許無効審判の審理対象である明細書及び図面が訂正審判の審決によって変更されることも生じるため、訂正審判の審決が確定するまで特許無効審判の審理を中止するのが通例であり、このことは事件全体の審理が遅延する弊害となっていた。
 このため、平成5年改正において、特許無効審判の係属中に訂正審判を独立して請求することを禁止し、特許無効審判が請求されている場合には、その審判手続中に訂正の請求という形で訂正審判と同内容の訂正を認めることにより、訂正の可否についても特許無効審判の審理とあわせて審理することで審理遅延を回避することとした。
 しかし、平成5年改正の規定では、逆に、特許無効審判が特許庁に係属していない場合、訂正審判の請求について何らの制限を課していないため、特許無効審判の審決がなされた後(特許庁における係属が終了した後)は、別途の特許無効審判が特許庁に係属していない限り、訂正審判の請求をすることができるものと解釈されていた。
 特許無効審判の審決がなされた後、その審決取消訴訟の係属中に、訂正審判によって特許の内容に変更が生じた場合の対応について、最高裁判所(大径角形鋼管事件・最高裁平成11年3月9日判決)は、審決取消訴訟係属中に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審判が請求され、訂正を認める審決が確定したときは、裁判所は当該無効審決を取り消さなければならないと判示し、この判決以降は、特許無効審判の審決に対する取消訴訟の係属中に特許請求の範囲を減縮する訂正を認める審決がなされると、審決の違法性について実体判断を経由せずに無効審決が自動的に取り消される裁判実務が定着していた。
 裁判所が無効審決を取り消すと、特許庁は、訂正された特許の有効性について、再度、特許無効審判を再開して審理・審決を行うこととなる。この審決に対しては、さらに取消訴訟の提起をすることも可能であり、法律上はその後に訂正がなされ、再び原審決が機械的に取り消されることもあり得る。この事件の流れを追うと、①無効審決→②審決取消訴訟の提起→③訂正審判の請求→④訂正の成立審決の確定→⑤無効審決を取り消す判決(差戻し)→⑥再度の特許無効審判の審理と審決→⑦審決取消訴訟、となる。このような特許庁と裁判所間での事件の往復が「キャッチボール」現象と呼ばれるもので、事件が2つの機関を往復することによる、審理の無駄や遅延といった弊害が指摘されていた。
 これに対しては、特許権者の訂正の機会は裁判所の許否にかからない特許庁における手続として確保しつつ訂正をすることができる期間を合理的に制限し、かつ、裁判所から特許庁への柔軟な差戻しを認め、差戻し後の訂正手続を訂正の請求という形で無効審判手続の中に取り込むことを可能にする、との趣旨で平成15年改正が行われたが、柔軟な差戻しができるとされたことにより(改正前181条2項)、裁判所で実体的な審理がされずに差し戻される「キャッチボール」現象は依然として発生し続けることとなった。
 このような状況について、非効率な手続であり、当事者(特に、無効審判請求人)に無駄な負担が生じることや、審理遅延といった弊害が指摘されていた。

・「キャッチボール」現象に対する方向性
 平成23年改正に当たっては、「キャッチボール」現象が発生しない制度を導入するため、審決取消訴訟提起後に訂正審判を請求することができるとする規定(126条2項ただし書)と、差戻し決定の規定(改正前181条2項)を削除することとしたが、併せて審決取消訴訟提起後の訂正審判によって与えられていた訂正の機会が奪われることがないよう、特許無効審判手続中に「審決の予告」を導入することとした(164条の2)。

 特許無効審判が特許庁に係属した時とは、特許権者が特許無効審判の請求の事実を知った時をいう。特許無効審判の請求書の副本の送達があった時が特許無効審判が特許庁に係属した時に該当する。特許無効審判の請求書が特許庁長官に提出された後その副本の送達があるまでに請求された訂正審判は適法な請求とされる(審判便覧)。

 特許異議の申立てが特許庁に係属した時とは、特許異議申立書の副本が特許権者に送付された時をいう(審判便覧)。


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2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条1項

2022-04-27 05:41:52 | Weblog
2022年4月27日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条1項

(訂正審判)第百二十六条
1 特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。
 ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。


 126条は、訂正審判について規定している。
 訂正審判は、主として当該特許について一部に瑕疵がある場合に、その瑕疵のあることを理由に全部について特許無効審判を請求されるおそれがあるので、そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておこうとする者のための制度である。
 そのほか明瞭でない記載があると、とかく侵害事件などを起こしやすいので記載を明瞭にして争いを事前に防ぐため訂正審判を請求する場合などもある。

・126条1項(訂正の主体、対象、目的)

・126条1項本文

 訂正審判を請求することができる者は、特許権者に限られる。
 ただし、審判便覧によれば、専用実施権者は、特許権者に代位して(民法423条)、訂正審判を請求することができる場合があるとしている。

 特許権が共有に係るときは、共有者の全員で訂正審判を請求しなければならない(132条3項)。

・126条1項ただし書

 126条1項ただし書は、訂正審判において訂正が認められるための訂正の目的について規定している。
 訂正審判は特許の一部についての瑕疵を事前に取り除くことにより特許無効審判などの攻撃に備えるものであるから、訂正はそのような目的を達するために最小限の範囲で認めれば十分であり、その最小限の範囲として、126条1項ただし書各号に規定することとした。

・訂正の目的(実体要件)

・特許請求の範囲の減縮(1号)
 発明特定事項の直列的付加(ABC→ABCD)
 発明特定事項の全部又は一部を下位概念に変更(ABC→aBC)
 選択肢の一部を削除(A、B、Cのいずれか→A、Bのいずれか)
 請求項の削除(39条2項違反の解消)全ての請求項の削除も可能

・誤記又は誤訳の訂正(2号)
 誤記の訂正→通常の特許出願
 誤訳の訂正→外国語書面出願

・明瞭でない記載の釈明(3号)
 請求項に「製造方法Aにより製造された物B」と記載されている場合において、「物Bの製造方法A」に訂正することは、明瞭でない記載の釈明に該当する場合がある(審決例)。

・引用形式を独立形式とすること(4号)
 126条1項4号は、平成23年改正において追加された規定である。
 一群の請求項として一体的に取り扱われないように、請求項ごとに訂正審判の審理が行われることを審判請求人が求める場合には、請求項間の引用関係を解消する必要がある。そこで、そのような訂正ができるよう、126条1項4号を追加することとした。
 一群の請求項のうち内容の変更を望まない請求項があるときは、一群の請求項を解消することが必要となる。


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2022年4月26日 弁理士試験 代々木塾 特許法133条4項

2022-04-26 06:02:14 | Weblog
2022年4月26日 弁理士試験 代々木塾 特許法133条4項

(方式に違反した場合の決定による却下)第百三十三条
4 前項の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。


・133条4項(決定書)

 133条4項は、平成8年改正において、133条2項を新設したことに伴い、旧133条3項を繰り下げたものである。

 133条は、審判長の単独権限になっており、合議体の権限とされていないが、これは審理する内容が形式的で簡単なものであるということに基づくものであり、133条以外の事項、すなわち、審理の内容が複雑なものについては、135条に規定するように、合議体によって審理し、審決をもって却下しなければならない。

 平成26年改正の行政不服審査法は、異議申立てを廃止し、審査請求に一本化した。行政事件訴訟法8条1項により、審査請求をすることなく、直接訴えを提起することもできる。184条の2(不服申立て前置主義)は、削除された。


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2022年4月26日 弁理士試験 代々木塾 特許法133条3項

2022-04-26 05:55:49 | Weblog
2022年4月26日 弁理士試験 代々木塾 特許法133条3項

(方式に違反した場合の決定による却下)第百三十三条
3 審判長は、前二項の規定により、審判事件に係る手続について、その補正をすべきことを命じた者がこれらの規定により指定した期間内にその補正をしないとき、又はその補正が第百三十一条の二第一項の規定に違反するときは、決定をもつてその手続を却下することができる。


・133条3項(審判長の決定による手続の却下)

 133条3項は、133条1項と2項の規定による補正命令に従わないときは、審判長はその手続を決定をもって却下することができる旨を規定している。

 却下するか否かは審判長の裁量権の範囲である。

 「手続の却下の決定」の中には、審判請求書の方式(131条1項又は3項)違反又は審判請求の手数料不納の場合において、補正命令に応じないときになされる「請求書の却下の決定」が含まれる。
 補正命令に対して補正がなされない場合は、「その補正をしない」ものとして、133条3項により審判請求書が却下されることになる。
 しかし、131条2項の補正命令に対して補正する場合、その補正が131条の2第1項に違反する不適法な補正の場合には、「その補正をしない」ものといえるか明らかではないため、平成15年改正において、不適法な補正をした場合の対応を明らかにする意味で、その補正が131条の2第1項の規定に違反するときも却下の対象となることを明記した。
 ちなみに、請求書の却下の決定に不服があるときは東京高等裁判所へ出訴することができ(178条1項)、また、これ以外の手続の却下の決定に不服があるときは行政不服審査法に基づく審査請求、又は、行政事件訴訟法に基づく訴訟の提起をすることができる。

 「審判事件に係る手続」には、審判の請求も含まれる。審判請求書に関する事項であって133条1項に規定するもの以外についての不備が解消しない場合には、「審判の請求の却下」ではなくて、「審判の請求書の却下」となる。

 「却下することができる」
 平成8年改正において、旧2項で「その請求書を却下しなければならない」としていたものを、133条3項で「その手続を却下することができる」との裁量規定にしたのは、旧1項に基づく補正命令に対する旧2項の「(却下)しなければならない」という処分と、新133条2項で規定する旧17条3項に基づく補正命令に対する旧18条の「(無効)にすることができる」という処分の両者をあわせて規定するために、広い概念である「することができる」の書き振りにしたものである。
 したがって、これによって、従来の実務上の対応が変わるわけではない。


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2022-04-26 05:50:09 | Weblog
2022年4月26日 弁理士試験 代々木塾 特許法133条2項

(方式に違反した場合の決定による却下)第百三十三条
2 審判長は、前項に規定する場合を除き、審判事件に係る手続について、次の各号の一に該当するときは、相当の期間を指定して、その補正をすべきことを命ずることができる。
一 手続が第七条第一項から第三項まで又は第九条の規定に違反しているとき。
二 手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。
三 手続について第百九十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき手数料を納付しないとき。


・133条2項(1項以外の方式不備に対する補正命令)

 133条2項は、133条1項に規定する場合以外の審判事件に係る手続について規定している。
 平成8年改正前は、審判請求書の審判長による補正命令については、17条3項に規定していたが、審判事件に係る手続が方式に違反している場合の措置は第6章・審判の規定中で明示すべきとの考えから、平成8年改正において条文移動したものである。

 「前項に規定する場合を除き」とあるので、131条の方式不備は除かれる。

 審判事件に係る手続には、審判の請求と、中間手続の両者が含まれる。

 条1項違反の場合には、補正命令はされず、135条により審決却下の対象となる。


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