特許法7条の解説
(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)
第7条
本条は、民事訴訟法31条及び32条と同様に、未成年者等の手続能力を制限する旨を規定しています。
第1項
〔未成年者〕
未成年者が手続(例えば特許出願)をするときは、原則として(ただし書に例外あり)、法定代理人によりすることが必要となります。つまり、法定代理人によらずに、未成年者が自ら手続をすることはできないことを意味します。
ただし、未成年者であっても、独立して法律行為をすることができるときは、法定代理人によらず、自ら手続をすることができます。
例えば未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされますので(民法753条)、法定代理人によらずに自ら手続をすることができます。その後、離婚したとしても成年とみなす効果は排除されることはありません。
また、法定代理人から営業を許可された未成年者は、その営業に関して、成年者と同一の行為能力が認められています(民法6条)。この場合は、許可した営業の範囲において法定代理権が消滅し、法定代理人は代理することはできません。
〔成年被後見人〕
成年被後見人が手続(例えば特許出願)をするときは、法定代理人によりすることが必要となります。
成年被後見人とは、後見開始の審判を受けた者をいいます(民法8条)。後見開始の審判の要件として、その者が、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であることが必要です。およそ7歳未満の未成年者の能力と同程度の能力しかない者を意味します。家庭裁判所は、職権で、成年後見人を選任します(民法843条1項)。
〔違反の効果〕
本項の規定に違反して未成年者や成年被後見人が自ら手続をした場合には、補正命令の対象となります(17条3項1号、133条2項1号)。審判以外の手続については特許庁長官の権限で補正命令をします(17条3項1号)。審判の手続については審判長の権限で補正命令をします。補正命令に従わないときは、当該手続は却下されることになります(18条1項、133条3項)。
なお、本項違反の手続は、補正命令の対象とならなかったとしても、無効となります。ただし、特許法16条の規定により追認された場合には、手続の当初に遡及して有効となります。
第2項
被保佐人が手続(例えば特許出願)をするときは、保佐人の同意を得ることが必要となります。つまり、被保佐人は自ら手続をすることはできますが、その際、保佐人の同意が必要であるということです。未成年者や成年被後見人は自ら手続をすることができませんが、被保佐人は自ら手続をすることはできます。
被保佐人とは、保佐開始の審判を受けた者をいいます(民法12条)。保佐開始の審判の要件として、その者が、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者であることが必要です。
本項違反の効果は、1項違反の場合と同様です。
第3項
法定代理人が手続をする場合において、後見監督人があるときは、その同意を得なければなりません。
後見監督人は、後見人の事務を監督すること、後見人と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること等がその職務となっています(民法851条)。つまり、法定代理人が未成年者や成年被後見人の利益を害する行為をしないように監督するのが職務となります。
未成年後見監督人は、遺言で指定される場合(民法848条)、家庭裁判所が選任する場合(民法849条)。
成年後見監督人は、成年被後見人等の請求又は職権により、家庭裁判所が、選任することができます(民法849条の2)。
本項違反の効果は、1項違反の場合と同様です。
第4項
被保佐人又は法定代理人が、相手方が請求した審判又は再審について手続をするときは、2項及び3項の規定は、適用しないこととしています。
2項により、被保佐人は保佐人の同意を得て手続をしなければなりませんが、被保佐人が特許権者であって第三者から特許無効審判の請求を受けたような場合には、本項により、被保佐人は保佐人の同意を得ないで答弁書を提出することができます。無効審判請求人からすると、保佐人の同意がないから答弁書の提出ができないとなると、審判の審理が進行せず、請求人の利益が害されることになるからです。
3項は、法定代理人が手続をする場合には、後見監督人があるときは、その同意を得ることが必要となりますが、未成年者又は成年被後見人が特許権者であって第三者から特許無効審判の請求を受けたような場合には、本項により、法定代理人は後見監督人の同意を得ないで答弁書を提出することができます。
本項は、被保佐人や法定代理人が他人の特許権について審判を請求する場合には適用されません。この場合は、2項及び3項がそのまま適用されることになります。
本項は、2項及び3項の例外であって、1項の例外ではありません。未成年者や成年被後見人が相手方が請求した審判について自ら手続をすることができるわけではありません。
(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)
第7条
本条は、民事訴訟法31条及び32条と同様に、未成年者等の手続能力を制限する旨を規定しています。
第1項
〔未成年者〕
未成年者が手続(例えば特許出願)をするときは、原則として(ただし書に例外あり)、法定代理人によりすることが必要となります。つまり、法定代理人によらずに、未成年者が自ら手続をすることはできないことを意味します。
ただし、未成年者であっても、独立して法律行為をすることができるときは、法定代理人によらず、自ら手続をすることができます。
例えば未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされますので(民法753条)、法定代理人によらずに自ら手続をすることができます。その後、離婚したとしても成年とみなす効果は排除されることはありません。
また、法定代理人から営業を許可された未成年者は、その営業に関して、成年者と同一の行為能力が認められています(民法6条)。この場合は、許可した営業の範囲において法定代理権が消滅し、法定代理人は代理することはできません。
〔成年被後見人〕
成年被後見人が手続(例えば特許出願)をするときは、法定代理人によりすることが必要となります。
成年被後見人とは、後見開始の審判を受けた者をいいます(民法8条)。後見開始の審判の要件として、その者が、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であることが必要です。およそ7歳未満の未成年者の能力と同程度の能力しかない者を意味します。家庭裁判所は、職権で、成年後見人を選任します(民法843条1項)。
〔違反の効果〕
本項の規定に違反して未成年者や成年被後見人が自ら手続をした場合には、補正命令の対象となります(17条3項1号、133条2項1号)。審判以外の手続については特許庁長官の権限で補正命令をします(17条3項1号)。審判の手続については審判長の権限で補正命令をします。補正命令に従わないときは、当該手続は却下されることになります(18条1項、133条3項)。
なお、本項違反の手続は、補正命令の対象とならなかったとしても、無効となります。ただし、特許法16条の規定により追認された場合には、手続の当初に遡及して有効となります。
第2項
被保佐人が手続(例えば特許出願)をするときは、保佐人の同意を得ることが必要となります。つまり、被保佐人は自ら手続をすることはできますが、その際、保佐人の同意が必要であるということです。未成年者や成年被後見人は自ら手続をすることができませんが、被保佐人は自ら手続をすることはできます。
被保佐人とは、保佐開始の審判を受けた者をいいます(民法12条)。保佐開始の審判の要件として、その者が、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者であることが必要です。
本項違反の効果は、1項違反の場合と同様です。
第3項
法定代理人が手続をする場合において、後見監督人があるときは、その同意を得なければなりません。
後見監督人は、後見人の事務を監督すること、後見人と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること等がその職務となっています(民法851条)。つまり、法定代理人が未成年者や成年被後見人の利益を害する行為をしないように監督するのが職務となります。
未成年後見監督人は、遺言で指定される場合(民法848条)、家庭裁判所が選任する場合(民法849条)。
成年後見監督人は、成年被後見人等の請求又は職権により、家庭裁判所が、選任することができます(民法849条の2)。
本項違反の効果は、1項違反の場合と同様です。
第4項
被保佐人又は法定代理人が、相手方が請求した審判又は再審について手続をするときは、2項及び3項の規定は、適用しないこととしています。
2項により、被保佐人は保佐人の同意を得て手続をしなければなりませんが、被保佐人が特許権者であって第三者から特許無効審判の請求を受けたような場合には、本項により、被保佐人は保佐人の同意を得ないで答弁書を提出することができます。無効審判請求人からすると、保佐人の同意がないから答弁書の提出ができないとなると、審判の審理が進行せず、請求人の利益が害されることになるからです。
3項は、法定代理人が手続をする場合には、後見監督人があるときは、その同意を得ることが必要となりますが、未成年者又は成年被後見人が特許権者であって第三者から特許無効審判の請求を受けたような場合には、本項により、法定代理人は後見監督人の同意を得ないで答弁書を提出することができます。
本項は、被保佐人や法定代理人が他人の特許権について審判を請求する場合には適用されません。この場合は、2項及び3項がそのまま適用されることになります。
本項は、2項及び3項の例外であって、1項の例外ではありません。未成年者や成年被後見人が相手方が請求した審判について自ら手続をすることができるわけではありません。