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2023年2月13日 弁理士試験 代々木塾 特許法77条

2023-02-13 08:35:13 | Weblog
2023年2月13日 弁理士試験 代々木塾 特許法77条

(専用実施権)第七十七条
1 特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
2 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
3 専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
4 専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
5 第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。

〔解説〕

(1)77条は、専用実施権について規定している。
 旧法(大正10年法)44条1項は「特許権ハ制限ヲ附シ又ハ附セスシテ之ヲ移転スルコトヲ得」と規定していたが、ここにいう制限を付した特許権は用益物権的なものと解されていた。
 すなわち、かりに特許権に関東一円という地域的な制限を付して移転するという場合は、その特許権について関東一円を範囲とする用益物権的な権利を設定することと解されていたのである。その他の時間的な制限、内容的な制限を付した特許権についても同様であった。このような用益物権的な権利を制度として設けることの必要性は社会的にはかなり強いわけであるが、旧法においては44条の規定をはじめ、制限付特許権に関する規定が明瞭でなかったので、実際にはあまり活用されなかった。
 77条に規定する専用実施権は、旧法の不明確な制限付特許権に代わるべきものとして、現行法(昭和34年法)において新しく設けられた制度である。

(2)実施権としては、77条に規定する専用実施権のほかに、通常実施権があるが、通常実施権は債権である。これら2つの実施権と特許権との関係は、あたかも土地の所有権に対する地上権及び賃借権になぞらえることができる。
 すなわち、特許権は所有権と同じように絶対的支配権であり、専用実施権は地上権と同じように用益物権であり、通常実施権は賃借権と同じように債権である。
 専用実施権は物権的な権利であるから排他性を有し、期間、地域、内容を異にすればともかく、同一期間、同一地域、同一内容についての専用実施権が2以上設定されることはあり得ないのである。
 この点、通常実施権については2以上の権利が並存し得るのとは異なる。ただ、専用実施権と通常実施権との関係については、専用実施権の設定後、当該特許権について通常実施権を許諾することは認められないが、専用実施権の設定前に許諾された通常実施権はその専用実施権者に対しても効力を有する(99条)。

・1項(専用実施権の設定)

(1)専用実施権は、排他性のある物権的権利である。

(2)「設定」とは、当事者の設定行為を意味する。契約のほか、遺言でも設定することができる。

・2項(専用実施権の効力)

(1)「設定行為で定めた範囲」
 通常、時間的な範囲(例えば、令和4年7月1日から5年間)、内容的な範囲(例えば、特許請求の範囲にA及びBの2発明が記載されている場合にそのうちA発明について)、地域的な範囲(例えば、北海道地方について)の3種類があげられるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、全て当事者の設定行為によって定めることができる。

(2)「専有する」とは、独占排他的効力(専用的効力と禁止的効力)を有することを意味する。

・3項(専用実施権の移転の制限)

(1)77条3項は、専用実施権の移転の制限について規定している。
 すなわち、専用実施権を移転することができるのは、その実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾がある場合及び相続その他の一般承継の場合に限られる。
 自由譲渡を認めなかったのは、専用実施権を設定する場合は、特許権者と設定を受ける者との信頼関係に基づく場合が多く、かつ、特許権の共有の場合と同様に、特許発明についてはどの程度の資本をもって、どのような技術により実施をするかということが特許権者にとっても重大な関係を有するからである。

(2)専用実施権をその実施の事業とともに移転する場合は、特許権者の承諾は必要とされない。
 この場合に特許権者の承諾を要しないこととしたのは、その実施の事業を移転しても専用実施権を移転することができないとすると、その事業設備は稼働し得なくなる場合が少なくなく、ひいては国家経済上の損失となるからである。

(3)特許権者の承諾を得たうえで専用実施権を移転するときは、専用実施権移転登録申請書に特許権者の承諾書を添付しなければならない(98条1項2号、特登録令30条1項2号)。

(4)相続その他の一般承継により専用実施権を移転する場合は、特許権者の承諾は必要とされない。
 承継者が限定されているので、特許権者に不利益とならないと考えられるからである。

(a)相続は一般承継の一態様である。「その他の」の前の「相続」は「一般承継」の例示である。

(b)「一般承継」は、包括承継と同義である。特定承継に対立する概念である。

(5)専用実施権について質権者があるときでも、専用実施権を移転する際に質権者の承諾は不要である。
 移転後の専用実施権にも質権の効力が及ぶため、質権者に不利益とならないと考えられるからである。

(6)専用実施権について通常実施権者(77条4項)があるときでも、専用実施権を移転する際に通常実施権者の承諾は不要である。
 移転後の専用実施権にも通常実施権の効力が及ぶため(99条)、通常実施権者に不利益とならないと考えられるからである。

・4項(質権の設定の制限と通常実施権の許諾の制限)

(1)77条3項において専用実施権の移転を制限したのと同様に、専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾する際には、特許権者の承諾が必要であることとした。

(2)専用実施権についての質権の設定は登録が効力発生要件であり(98条1項3号)、質権設定登録申請書に特許権者の承諾書を添付しなければならない。

(3)専用実施権者乙が特許権者甲の承諾を得ないで丙に通常実施権の許諾をした場合は、77条4項の強行規定に違反するので、丙の通常実施権の効力は生じない。丙が特許発明を業として実施した場合には、特許権者甲は丙に対して差止請求権(100条1項)等を行使することができる。

・5項(73条の規定の準用)

(1)77条5項は、特許権の共有に関する規定(73条)を準用する旨を規定している。
 専用実施権は、特許権と同様に排他性のある権利であるため、特許権の共有の場合の規定(73条)を専用実施権の共有の場合について準用することとした。

(2)73条1項は、特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない旨を規定している。

(3)73条2項は、特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる旨を規定している。

(4)73条3項は、特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない旨を規定している。
 なお、専用実施権は、独占排他権であるため(77条2項)、専用実施権についてさらに専用実施権を設定することはできない。


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