2023年3月3日 弁理士試験 代々木塾 意匠法9条
(先願)第九条
1 同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
2 同一又は類似の意匠について同日に二以上の意匠登録出願があつたときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができない。
3 意匠登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その意匠登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その意匠登録出願について前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を意匠登録出願人に命じなければならない。
5 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
〔解説〕
・1項(本来の先願主義)
(1)9条1項は、先願優位の原則により重複登録を排除するためのものである。
(2)現在(2023年3月)、意匠審査基準の改訂により、9条1項及び2項は、部分意匠と全体意匠との間でも適用することとなっている。
(3)先願が物品の部分意匠で後願が物品の部分意匠である場合の類否判断
両意匠が同一又は類似となるのは、以下の4要件を満たす場合である(意匠審査基準)。
(a)部分意匠の意匠に係る物品の用途及び機能が、同一又は類似であること
(b)意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能が、同一又は類似であること
(c)意匠登録を受けようとする部分の形状等が、同一又は類似であること
(d)意匠登録を受けようとする部分の当該物品全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲が、同一又は当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであること
(4)先願が物品の部分意匠で後願が物品の全体意匠である場合の類否判断
両意匠が同一又は類似となるのは、以下の4要件を満たす場合である(意匠審査基準)。
(a)全体意匠に係る物品と部分意匠の意匠に係る物品が同一又は類似であること
(b)全体意匠の用途及び機能が部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能と同一又は類似であること
(c)全体意匠の意匠登録出願の形状等と部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の形状等が同一又は類似であること
(d)全体意匠の物品全体に対し、部分意匠の意匠登録出願の意匠登録を受けようとする部分の当該物品全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲が、当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内の相違であること
(5)先願が物品の全体意匠で後願が物品の部分意匠である場合
両意匠が同一又は類似であるときは、9条1項が適用される。
両意匠が非類似であっても、後願は、先願を引用して3条の2により拒絶される場合がある。
(6)建築物の意匠又は画像の意匠の類否判断
基本的には、物品の意匠の類否判断と同様である。
(7)平成10年改正により類似意匠制度を廃止して関連意匠制度(10条)を創設したので、出願人が同一の場合にも9条1項及び2項が適用されることとなった。
・2項(同日出願)
(1)2項は、同日出願であっても重複登録を排除するためのものである。
(2)協議前置としたのは、私的自治を尊重するためである。
・3項(先願の地位)
(1)先願の地位がない出願
(a)放棄された出願
(b)取り下げられた出願
(c)却下された出願
(d)拒絶が確定した出願(3項ただし書の出願は除く)
(2)先願の地位がある出願
(a)意匠権の設定の登録を受けた出願(本文反対解釈)
(b)9条2項後段の理由で拒絶が確定した出願(3項ただし書)
かりに先願の地位がないとすると、同一又は類似の意匠に係る後願が登録されることとなり、先願主義に反することとなるからである。
(3)意匠登録出願が特許庁に係属している間は、先願の地位は失っていないので、9条1項又は2項の引用例となり得る。しかし、実務上は、後願の意匠登録出願の審査促進の要請が特許出願ほど強くないので、意匠登録出願の審査では、先願の処分の確定を待ってから後願を処理することとしている。
・4項(協議命令)
(1)9条2項の同日出願があった場合は、特許庁長官が協議命令をする。
(2)出願人が異なる場合は、特許庁長官の協議命令が先行し、その後、審査官の拒絶理由通知となる。
(3)出願人が同一の場合は、協議をする時間が必要ないため、特許庁長官の協議命令と審査官の拒絶理由通知が同時にされる。
・5項(協議命令の効果)
協議の結果の届出がないときは協議不成立とみなされる。
・平成23年改正前の9条4項(冒認出願は先願の地位がない)の削除
平成23年改正により、26条の2(意匠権の移転の特例)を新設し、冒認に係る意匠権が発生したときは、真の権利者は、冒認に係る意匠権の移転を請求することができることとした。真の権利者を救済するためである。
しかし、冒認出願は先願の地位がないとする平成23年改正前の9条4項を維持したときは、真の権利者は、冒認出願について意匠公報が発行された日から6月(平成30年改正前)以内であれば、新規性の喪失の例外の規定(4条1項)の適用を受けて自らも同一の意匠について意匠登録出願をすることにより、意匠権を取得することが可能となる。
この場合は、真の権利者は、26条の2による移転の請求により意匠権を取得したときは、同一の意匠について重複して意匠権を取得したこととなり、適切ではない。
そこで、真の権利者がこのような重複した意匠権を取得できないようにするため、平成23年改正前の9条4項を削除し、冒認出願にも先願の地位を認めることとした。
これにより、真の権利者が4条1項の規定の適用を受けて意匠登録出願をしたとしても、冒認出願について意匠権の設定の登録がされたときは、真の権利者の意匠登録出願は、冒認出願を引用して9条1項により拒絶又は無効とされることとなる。
この場合でも、真の権利者は、26条の2により意匠権の移転の請求をすることができる。
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2024論文短答入門コース 5月~12月
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令和5年改正に対応した内容とします。
(先願)第九条
1 同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
2 同一又は類似の意匠について同日に二以上の意匠登録出願があつたときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができない。
3 意匠登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その意匠登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その意匠登録出願について前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
4 特許庁長官は、第二項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を意匠登録出願人に命じなければならない。
5 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
〔解説〕
・1項(本来の先願主義)
(1)9条1項は、先願優位の原則により重複登録を排除するためのものである。
(2)現在(2023年3月)、意匠審査基準の改訂により、9条1項及び2項は、部分意匠と全体意匠との間でも適用することとなっている。
(3)先願が物品の部分意匠で後願が物品の部分意匠である場合の類否判断
両意匠が同一又は類似となるのは、以下の4要件を満たす場合である(意匠審査基準)。
(a)部分意匠の意匠に係る物品の用途及び機能が、同一又は類似であること
(b)意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能が、同一又は類似であること
(c)意匠登録を受けようとする部分の形状等が、同一又は類似であること
(d)意匠登録を受けようとする部分の当該物品全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲が、同一又は当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであること
(4)先願が物品の部分意匠で後願が物品の全体意匠である場合の類否判断
両意匠が同一又は類似となるのは、以下の4要件を満たす場合である(意匠審査基準)。
(a)全体意匠に係る物品と部分意匠の意匠に係る物品が同一又は類似であること
(b)全体意匠の用途及び機能が部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能と同一又は類似であること
(c)全体意匠の意匠登録出願の形状等と部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の形状等が同一又は類似であること
(d)全体意匠の物品全体に対し、部分意匠の意匠登録出願の意匠登録を受けようとする部分の当該物品全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲が、当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内の相違であること
(5)先願が物品の全体意匠で後願が物品の部分意匠である場合
両意匠が同一又は類似であるときは、9条1項が適用される。
両意匠が非類似であっても、後願は、先願を引用して3条の2により拒絶される場合がある。
(6)建築物の意匠又は画像の意匠の類否判断
基本的には、物品の意匠の類否判断と同様である。
(7)平成10年改正により類似意匠制度を廃止して関連意匠制度(10条)を創設したので、出願人が同一の場合にも9条1項及び2項が適用されることとなった。
・2項(同日出願)
(1)2項は、同日出願であっても重複登録を排除するためのものである。
(2)協議前置としたのは、私的自治を尊重するためである。
・3項(先願の地位)
(1)先願の地位がない出願
(a)放棄された出願
(b)取り下げられた出願
(c)却下された出願
(d)拒絶が確定した出願(3項ただし書の出願は除く)
(2)先願の地位がある出願
(a)意匠権の設定の登録を受けた出願(本文反対解釈)
(b)9条2項後段の理由で拒絶が確定した出願(3項ただし書)
かりに先願の地位がないとすると、同一又は類似の意匠に係る後願が登録されることとなり、先願主義に反することとなるからである。
(3)意匠登録出願が特許庁に係属している間は、先願の地位は失っていないので、9条1項又は2項の引用例となり得る。しかし、実務上は、後願の意匠登録出願の審査促進の要請が特許出願ほど強くないので、意匠登録出願の審査では、先願の処分の確定を待ってから後願を処理することとしている。
・4項(協議命令)
(1)9条2項の同日出願があった場合は、特許庁長官が協議命令をする。
(2)出願人が異なる場合は、特許庁長官の協議命令が先行し、その後、審査官の拒絶理由通知となる。
(3)出願人が同一の場合は、協議をする時間が必要ないため、特許庁長官の協議命令と審査官の拒絶理由通知が同時にされる。
・5項(協議命令の効果)
協議の結果の届出がないときは協議不成立とみなされる。
・平成23年改正前の9条4項(冒認出願は先願の地位がない)の削除
平成23年改正により、26条の2(意匠権の移転の特例)を新設し、冒認に係る意匠権が発生したときは、真の権利者は、冒認に係る意匠権の移転を請求することができることとした。真の権利者を救済するためである。
しかし、冒認出願は先願の地位がないとする平成23年改正前の9条4項を維持したときは、真の権利者は、冒認出願について意匠公報が発行された日から6月(平成30年改正前)以内であれば、新規性の喪失の例外の規定(4条1項)の適用を受けて自らも同一の意匠について意匠登録出願をすることにより、意匠権を取得することが可能となる。
この場合は、真の権利者は、26条の2による移転の請求により意匠権を取得したときは、同一の意匠について重複して意匠権を取得したこととなり、適切ではない。
そこで、真の権利者がこのような重複した意匠権を取得できないようにするため、平成23年改正前の9条4項を削除し、冒認出願にも先願の地位を認めることとした。
これにより、真の権利者が4条1項の規定の適用を受けて意匠登録出願をしたとしても、冒認出願について意匠権の設定の登録がされたときは、真の権利者の意匠登録出願は、冒認出願を引用して9条1項により拒絶又は無効とされることとなる。
この場合でも、真の権利者は、26条の2により意匠権の移転の請求をすることができる。
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