意匠審査便覧10.30.01
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として内外国特許公報等が提出された場合の取扱い
意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるために内外国特許公報等(内外国の特許公報、実用新案公報、意匠公報及び商標公報)が意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として提出された場合、これらの公報へのその意匠の掲載は意匠法第4条第2項の「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因」したものとは認められないから、その意匠については同規定の適用を認めず審査を進める。
(説明)
意匠法第4条第2項に規定される「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して」の文言は、新規性の喪失の例外事由を限定的に列挙した特許法第30条第1項に比較して包括的表現となっているが、そのように表現したのは立法時の議論にも見られるとおり、意匠の場合は特許法に規定する「試験」、「刊行物に発表」、「学会発表」の他に意匠登録出願前であっても実施化に先立つ市場調査又は実施に相当する「販売」、「展示」、「見本の頒布」等が行われる事例が多いとの事情を考慮し、当該意匠がこれらの公開意匠の存在を理由として登録を受けることができないとすることは創作者にとって酷であり産業の発達に寄与するという法の目的にもとる結果ともなる場合があることから、これら公開行為も新規性の喪失の例外事由に含めるためであったと解され、とすると、上記の文言は新規性の喪失の例外事由を必要以上に拡大するものではない。
ところで、特許法第30条第1項にいう「刊行物に発表」とは、特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に刊行物を発表した場合をいうのであって、例えば、公開特許公報は、特許を受ける権利を有する者が特許出願をしたことにより、特許庁長官が手続の一環として特許法第65条の2の規定に基づき出願に係る発明を掲載して刊行するものであるから、これによって特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に当該発明を刊行物に発表したものということはできない。これは、外国における公開特許公報であっても同様である、と解されている。(昭和61年(行ツ)第160号 平成元年11月10日最高裁判決)
そうすると、意匠法第4条第2項にいう「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して」についても、この最高裁判決の論旨から「意匠登録を受ける権利を有する者自らの主体的な行為に起因して」と解すべきである。
また、仮に外国特許公報等に掲載されることを新規性喪失の例外事由として認めることは、パリ条約による優先権等の主張の利益と重ね過重な保護を与えることとなったり、時機を失した出願の救済につながることとなり、結果として第三者に不測の事態をもたらす場合も予測されることから、創作者の救済措置として必要な限度を越えていると言わざるを得ない。
したがって、意匠登録出願前に当該意匠が上記公報等へ掲載されることは、法の予定する新規性の喪失の例外事由に該当せず、「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因」したものとは認められない。
よって、本文のように取り扱うものとする。
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として内外国特許公報等が提出された場合の取扱い
意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるために内外国特許公報等(内外国の特許公報、実用新案公報、意匠公報及び商標公報)が意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として提出された場合、これらの公報へのその意匠の掲載は意匠法第4条第2項の「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因」したものとは認められないから、その意匠については同規定の適用を認めず審査を進める。
(説明)
意匠法第4条第2項に規定される「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して」の文言は、新規性の喪失の例外事由を限定的に列挙した特許法第30条第1項に比較して包括的表現となっているが、そのように表現したのは立法時の議論にも見られるとおり、意匠の場合は特許法に規定する「試験」、「刊行物に発表」、「学会発表」の他に意匠登録出願前であっても実施化に先立つ市場調査又は実施に相当する「販売」、「展示」、「見本の頒布」等が行われる事例が多いとの事情を考慮し、当該意匠がこれらの公開意匠の存在を理由として登録を受けることができないとすることは創作者にとって酷であり産業の発達に寄与するという法の目的にもとる結果ともなる場合があることから、これら公開行為も新規性の喪失の例外事由に含めるためであったと解され、とすると、上記の文言は新規性の喪失の例外事由を必要以上に拡大するものではない。
ところで、特許法第30条第1項にいう「刊行物に発表」とは、特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に刊行物を発表した場合をいうのであって、例えば、公開特許公報は、特許を受ける権利を有する者が特許出願をしたことにより、特許庁長官が手続の一環として特許法第65条の2の規定に基づき出願に係る発明を掲載して刊行するものであるから、これによって特許を受ける権利を有する者が自ら主体的に当該発明を刊行物に発表したものということはできない。これは、外国における公開特許公報であっても同様である、と解されている。(昭和61年(行ツ)第160号 平成元年11月10日最高裁判決)
そうすると、意匠法第4条第2項にいう「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して」についても、この最高裁判決の論旨から「意匠登録を受ける権利を有する者自らの主体的な行為に起因して」と解すべきである。
また、仮に外国特許公報等に掲載されることを新規性喪失の例外事由として認めることは、パリ条約による優先権等の主張の利益と重ね過重な保護を与えることとなったり、時機を失した出願の救済につながることとなり、結果として第三者に不測の事態をもたらす場合も予測されることから、創作者の救済措置として必要な限度を越えていると言わざるを得ない。
したがって、意匠登録出願前に当該意匠が上記公報等へ掲載されることは、法の予定する新規性の喪失の例外事由に該当せず、「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因」したものとは認められない。
よって、本文のように取り扱うものとする。