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19.4.26 短答H18〔44〕

2007-04-26 11:30:11 | Weblog
 平成18年度 短答式試験

〔44〕特許法に規定する審決取消訴訟に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

1 特許を受ける権利の共有者が、共同して拒絶査定不服審判を請求し、請求は成り立たない旨の審決を受けた場合、各共有者は単独で審決取消訴訟を提起することができる。
〔解答〕誤り
 最高裁判決平成7年3月7日(磁気治療器事件)は、「実用新案登録を受ける権利の共有者が、その共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に、右共有者の提起する審決取消訴訟は、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解すべきである。けだし、右訴訟における審決の違法性の有無の判断は共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって、右審決を取り消すか否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるからである。実用新案法が、実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは共有者の全員が共同で請求しなければならないとしている(同法41条の準用する特許法132条3項)のも、右と同様の趣旨に出たものというべきである。」と判示している。


2 請求は成り立たない旨の審決の謄本が、審判を請求した者に対し、ある年の5月15日(月曜日)に送達された場合、その審決に対する審決取消訴訟を同年6月15日(木曜日)に提起することができる。ただし、審決取消訴訟の提起のための付加期間は定められていないものとする。
〔解答〕誤り
 特許法178条3項は、「第1項の訴えは、審決又は決定の謄本の送達があつた日から30日を経過した後は、提起することができない。」と規定している。
 特許法3条1項1号が適用されるので、5月16日が30日の初日となる。5月は31日まであるので、16日あることになる。残りは14日であるので、30日の末日は、6月14日(水曜日)となる。


3 審決取消訴訟において、5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体でする際には、当事者の意見を聴かなければならない。
〔解答〕誤り
 特許法182条の2は、「第178条第1項の訴えに係る事件については、5人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。」と規定している。
 すなわち、当事者の意見を聴かなければならないとする規定はない。


4 審決取消訴訟において、裁判所は、審判の手続で審理判断されていた刊行物記載の発明のもつ意義を明らかにするため、審判の手続に現れていなかった資料に基づき、当該特許出願当時における当業者の技術常識を認定することができる。
〔解答〕正しい
 最高裁判決昭和55年1月24日は、「実用新案登録の無効についての審決の取消訴訟においては、審判の手続において審理判断されていなかつた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断することの許されないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところであるが(最高裁昭和51年3月10日大法廷判決)、審判の手続において審理判断されていた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断するにあたり、審判の手続にはあらわれていなかつた資料に基づき右考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)の実用新案登録出願当時における技術常識を認定し、これによつて同考案のもつ意義を明らかにしたうえ無効原因の存否を認定したとしても、このことから審判の手続において審理判断されていなかつた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法、違法を判断したものということはできない。」と判示している。


5 特許無効審判についての審決取消訴訟において、審決取消しの判決が確定したとき、改めて行われる特許無効審判手続の審判官は、当該取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につき、その判決を不服とする当事者が従前の主張を裏付ける新たな証拠を提出した場合に限り、当該認定判断が誤りであるとの主張をすることを許すことができる。
〔解答〕誤り
 最高裁判決平成4年4月28日(高速旋回式バレル研磨法)は、「1 特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは、審判官は特許法一八一条二項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い、審決をすることとなるが、審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理ないし審決には、同法三三条一項の規定により、右取消判決の拘束力が及ぶ。そして、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、審判官は取消判決の右認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって、再度の審判手続において、審判官は、取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと、あるいは右主張を裏付けるための新たな立証をすることを許すべきではなく、審判官が取消判決の拘束力に従ってした審決は、その限りにおいて適法であり、再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることができないのは当然である。このように、再度の審決取消訴訟においては、審判官が当該取消判決の主文のよって来る理由を含めて拘束力を受けるものである以上、その拘束力に従ってされた再度の審決に対し関係当事者がこれを違法として非難することは、確定した取消判決の判断自体を違法として非難することにほかならず、再度の審決の違法(取消)事由たり得ないのである(取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断の当否それ自体は、再度の審決取消訴訟の審理の対象とならないのであるから、当事者が拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断を誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返し、これを裏付けるための新たな立証をすることは、およそ無意味な訴訟活動というほかはない)。」と判示している。