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19.4.20 短答H18〔19〕

2007-04-20 11:17:20 | Weblog
 平成18年度 短答式試験

〔19〕特許出願についての拒絶査定不服審判における前置審査に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。

(イ)前置審査において、審査官が、原査定の理由と異なる拒絶の理由を発見し、出願人に対してその拒絶の理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。この場合において、その期間内に出願人からなんら応答がなく、特許をすべき旨の査定をすることができないときは、審査官は、拒絶をすべき旨の査定をすることなく、その審査の結果を審判官に報告しなければならない。
〔解答〕誤り
 特許法164条3項は、「審査官は、第1項に規定する場合を除き、当該審判の請求について査定をすることなくその審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない。」と規定している。したがって、特許査定ができないときは、審査官は、拒絶査定をすることなく、特許庁長官に審査の結果を報告しなければならない。すなわち、審査の結果を報告するのは、特許庁長官であって、審判官ではない。この時点では、審判官は指定されていない(137条1項かっこ書)。
 集中力が欠けると、この種の問題については、判断ミスが生じやすい。

(ロ)前置審査において、審査官が、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消し、特許をすべき旨の査定をしようとする場合に、審判の請求書が不適法なものであると認められたときは、その審査官は、請求人に対して、その審判の請求書の補正を命じることができる。
〔解答〕誤り
 特許法137条1項は、「特許庁長官は、各審判事件(第162条の規定により審査官がその請求を審査する審判事件にあつては、第164条第3項の規定による報告があつたものに限る。)について前条第1項の合議体を構成すべき審判官を指定しなければならない。」と規定している。したがって、前置審査が行われているときは、審判官の指定はされないことになる。この場合、審判請求書の方式要件の点検は、特許法17条3項の規定により、特許庁長官が行うこととなる。したがって、審査官が、審判請求書の補正を命じることはない。
 条文レベルでやさしい。

(ハ)前置審査において、拒絶査定不服審判の請求前にされた明細書の補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないと認められたときは、審査官は、決定をもってその補正を却下しなければならない。
〔解答〕誤り
 特許法163条1項は、「第48条、第53条及び第54条の規定は、前条の規定による審査に準用する。この場合において、第53条第1項中「第17条の2第1項第1号又は第3号」とあるのは「第17条の2第1項第1号、第3号又は第4号」と、「補正が」とあるのは「補正(同項第1号又は第3号に掲げる場合にあっては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。」と規定している。したがって、前置審査官は、審判請求前にされた補正については、却下することができない。
 条文レベルでやさしい。

(ニ)文献公知発明が記載された刊行物の名称が明細書に記載されていないことを理由に拒絶をすべき旨の査定がなされた。この場合において、その査定に対する拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内に当該刊行物が提出されたときは、当該請求は、前置審査に付される。
(解答〕誤り
 特許法162条は、「特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があった場合において、その日から30日以内にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったときは、審査官にその請求を審査させなければならない。」と規定している。
 したがって、当該刊行物を提出したとしても、明細書、特許請求の範囲又は図面について補正がされないときは、前置審査に移管されることはない。
 条文レベルでやさしい。

(ホ)前置審査において、拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内にした明細書の補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないと認められたときは、審査官は、常に、決定をもってその補正を却下しなければならない。
〔解答〕誤り
 特許法164条2項は、「審査官は、前項に規定する場合を除き、前条第1項において準用する第53条第1項の規定による却下の決定をしてはならない。」と規定している。前項は、「審査官は、第162条の規定による審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならない。」と規定している。
 したがって、前置審査官は、特許査定をしない場合は、当該補正を却下することはできない。
 条文レベルでやさしい。

 (イ)がひっかけ問題であるので、この種の問題には、注意が必要である。

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