Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ストックホルムでワルツを

2019-09-25 | 映画(さ行)


◼️「ストックホルムでワルツを/Monica Z」(2013年・スウェーデン)

監督=ペール・フライ
主演=エッダ・マクナソン スベリル・グドナソン シェル・ベリィクヴィスト

映画館で予告編を見てビビッとくる映画が時々ある。「ストックホルムでワルツを」もそうだった。実在のジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの伝記映画。ジャズは英語で歌うのが当然とされてきた時代に、母国語で歌うことで人気を博し、世界的にも認められた歌手である。ジャズに詳しくないと敬遠する必要はない。自分にできる母国語の表現を貫くことで世間の評価を得たシンガーの物語として観れば、きっとラストに感動が待っている。日本語だって、ロックのビートに乗りにくいだの、日本語でシャンソンなんてとか、日本人がR&Bなんて無理とか昔から言われてきたけれど、偉大な先達が様々な試行錯誤で今を築いた。モニカもそうした試みから世界的に認められるに至った人なんだ。

しかし、モニカの成功への道は決して楽ではなかった。週末はステージで歌うモニカは、子供と仕事を抱えたシングルマザー。音楽仲間とツアーに出れば、子供は親に預けっぱなし。アメリカで歌う機会を与えられて挫折、プレッシャーから酒に溺れて身体を壊し、娘を思う気持ちも音楽活動も空回りするばかり。いろんなものを失いながらも、彼女は聴いて欲しい人に歌を届ける大切さに気づく。

映画のクライマックスは、偉大なジャズピアニスト、ビル・エヴァンスとの共演。ワルツ・フォー・デビーをモニカがスウェーデン語で歌う。その様子は本国に中継され、両親もそれを聴いた。モニカの音楽活動に最初から反対してきた父親が「お前を誇りに思う」と告げる場面は感動的だ。

もしかしたら、このラストを見て「ボヘミアン・ラプソディ」を浮かべる人もいるかもしれない。「人の為になることをしろ」と言い続けた父親が、史上最大のチャリティイベントであるライブエイドに出演するわが子を誇らしげに見る場面だ。親の反対を押し切って音楽で食っていくことって大変なことだ。それはモニカもフレディも同じ。いちばん自分を認めて欲しいと思うのは、反対もしたけど協力もしてくれた家族。どんなジャンルで活動しようと、仕事だろうとそれは同じなのだ。

そもそも音楽映画は大好物なので、この映画にひかれたのはあるが、予告編で流れたのが、モニカの代表曲でもある、walking my baby back home だったことも大きい。この曲は、「刑事コロンボ」のエピソードのひとつ「忘れられたスター」で、大女優が昔を懐かしんで見る映画のタイトルチューンだった。あの回は何度も見たから曲もよーく覚えていた。これが聴ける映画ならきっと良作に違いないと勝手に思ったのだ。予告編は素敵な出会いの場。

ヨーロッパ映画好きに注目してもらいたいポイントがひとつ。モニカの恋人として出てくる映画監督シェーマン。彼はポルノ映画の先駆となる問題作「私は好奇心の強い女」を撮る人物で、劇中イングマル・ベルイマン監督について語る場面もある。なかなか興味深い。



ストックホルムでワルツを [DVD]
エッダ・マグナソン,スベリル・グドナソン,シェル・ベリィクヴィスト
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
 
「ストックホルムでワルツを」オリジナル・サウンドトラック
バーティル・リンダー,イングリッド・ストゥーレガード,ヘレナ・K.ウーマン,ヴィヴェカ・ライデン・マーテッソン,ロッテ・リベック・ペールソン,ペルニラ・カールゾン,ペーター・ノーダール
ユニバーサル ミュージック

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