Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

自転車泥棒

2013-06-11 | 映画(さ行)

■「自転車泥棒/Ladri Di Biciclette」(1948年・イタリア)

●1949年アカデミー賞 外国語映画賞
●1949年NY批評家協会賞 外国語映画賞
●1949年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞

監督=ビットリオ・デ・シーカ
主演=ランベルト・マジョラーニ エンツォ・スタヨーラ リァネッラ・カレッリ 

今も不況だ不況だというけれど、戦後の不況がいかに苦しいものだったか。ネオ・リアリスモの映画は厳しい社会と向かい合う人々を映像に収め続けた。この「自転車泥棒」も、主役親子は素人を起用し、オールロケーションで撮影する、現実を見つめた映画である。ひとつの職業を得ることがいかに困難な時代だったのか。簡単に会社を辞めたり定職に就かない若者のことを考えると、今が不況とはいってもいかに恵まれていることか。それを思わずにはいられない。

たった一台の自転車を取り返すことができなかったアントニオは、サッカー場の外に止めてある多くの自転車を見て「一台くらい・・・」という気持ちになっていった。だが彼はそちらではなく、街角に一台だけ止めてある手近な自転車を盗もうとしてしまう。人間の弱さ。それを台詞なしに見事に表現している。ラストの何も言えずに夕暮れの町を歩く親子の姿に、やりきれなさを感じてしまう。それは人の弱さ故でもあり、時代に対してであり、貧困を救いきれない政府であったりするのだが。息子から見る父親は情けなく、惨めだ。なかなか自転車が見つからずにイラだつ父に叩かれても息子は父親を慕う。つかまって小突き回される父親にすがって泣く少年の姿は涙を誘う。

(2003年筆)




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