◾️「女ガンマン・皆殺しのメロディ/Hannie Caulder」(1971年・イギリス)
監督=バート・ケネディ
主演=ラクエル・ウェルチ ロバート・カルプ アーネスト・ボーグナイン クリストファー・リー
タランティーノ監督作「キル・ビル」に大きな影響与えたとされる異色西部劇。キービジュアルでもある"裸にガンベルトとポンチョ"というセクシーなイメージで知られる映画だが、とにかくラクエル・ウェルチを愛でるには文句なしの一品。マカロニウエスタン的なテイストだが、イギリス資本で製作された珍品。西部劇でおなじみの顔も多い中で、クリストファー・リーが銃職人を演じているのは注目すべきところ。
3人組の悪党に夫を殺されて乱暴されたヒロイン、ハニー・コールダー。彼女は復讐を成し遂げる為に、すご腕の賞金稼ぎプライスのもとで銃の腕を磨く。修行によって主人公が腕をあげていく過程や、殺しのリストを消していくように一人一人姿を消していくのはまさに「キル・ビル」に通ずるところ。復讐に燃えるヒロイン像も影響と言えるだろう。
お話自体は、言葉足らずな部分が多く、スッキリしない印象が残る。保安官も一目置くプライスについても、中盤で登場する寡黙なガンマンについても詳しい素性は最後まで語られない。またハニーの為に作られた銃は軽くて引き鉄が二つ?と説明されるが、映像で見せることも、またクライマックスの銃撃戦でもその効果と思われる場面もないのは残念なところ。
しかし、銃が作られている間の、メキシコでの穏やかな日々の描写は実に美しい。逆光で撮った浜辺でハニーとプライスが手をつなぐ場面は印象的だ。また、3人組のコミカルなやりとりや、ハニーがブカブカのズボンを身体に合わせる為に着衣で入浴する場面など、血まみれの復讐劇であることを忘れさせてくれる。プライス役のロバート・カルプ、僕ら世代はテレビドラマ「グレイテスト・アメリカンヒーロー」のちょっと頼りない捜査官や、「刑事コロンボ」の悪役イメージが強いだけに、寡黙なガンマン役はちょっと意外だった。
珍品の類いになるのかもしれませんが、見られてよかった1本です!