Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

バティニョールおじさん

2013-07-26 | 映画(は行)

■「バティニョールおじさん/Monsieur Batignole」(2002年・フランス)

監督=ジェラール・ジュニョー
主演=ジェラール・ジュニョー ジュール・シトリック ミシェル・ガルシア 

 最近やたらと血を見たので(「キル・ビル」のことね・笑)、人間味のあるものを妙に観たくなりました。第2次大戦中、占領下のパリで肉屋を営む主人公バティニョール。娘のフィアンセが隣のユダヤ人一家をチクったことから、ドイツ軍協力者となった彼。しかしユダヤ人一家の息子シモンが収容所から逃げてきたのをかくまったことをきっかけに、次第に彼を救おうと思うようになる・・・。

 バティニョール氏はシモン少年を最上階の女中部屋にかくまうのだが、何せ少年だけにじっとしてはいられないし、世の中に対して疑問だらけだ。彼の身を守ろうとするバティニョール氏の懸命さはどこか笑いを誘う。「戦場のピアニスト」でエイドリアン・ブロディが音も立てずに静かに暮らしていたのを観ているだけに、あれでよく見つからないよなぁと思えるところはある。それもバティニョールおじさんの努力のおかげなのだ。最初はただのお人好しから始まったことだが、次第にバティニョール氏自信が人種を超えて人間を守ろうとする姿勢に変わっていく。クライマックスで最大の危機に陥るが、「自分はユダヤ人だ。この子の父親だ。」と嘘を言い、そしてユダヤ人に対するフランス人や警察・ドイツに味方する人々の仕打ちに猛烈に抗議するのだ。ここはとても感動的。ジュニョー監督は、戦時下のパリで肉屋をしていた自分の祖父をモデルに、あの時代に生きていたら自分はどういう行動がとれたか?と自問自答してこの物語を作り上げたそうだ。

 監督・主演のジェラール・ジュニョーは、パトリス・ルコント監督作にも出演しているコメディ畑の俳優さん。優れたコメディアンは、人間を観る眼が違う。本作でも脇役の一人一人まで、その人の生き方が感じられる。それだけに映画全体が嘘くさくないし、深みが出てくるのだ。例えば逃げてきた主人公たちに好意的な警察官や、レジスタンスに関わっていると名乗る青年、アパートの最上階に住む青年・・・。ドイツ協力者となる娘のフィアンセが不気味な雰囲気で印象的だが、あの時代にああやってドイツにすり寄っていった人々もいたのだなぁ。「愛と哀しみのボレロ」ではドイツ兵の恋人になったとして、エブリーヌ・ブイックスが責められる場面が出てくる。本作でもシモンが隠れている部屋の隣室でドイツ将校とセックスをする女性が出てくる。「(ドイツ兵とは寝ても)私はユダヤ人を売ったりしないわ!」と主人公に言い放つ。そんな端役まで当時のフランスが見えてくる。

 ジュール・シュトリック扮するシモン少年はインテリ家庭で育った頭の切れる子で、学のなさそうなバティニョール氏との対比が面白い。これは彼らの逃避行を追ったロードムービーでもあり、対照的な二人を中心に据えたバディムービーでもある。

(2003年筆)

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