■「3時10分、決断のとき/3:10 to Yuma」(2007年・アメリカ)
監督=ジェームズ・マンゴールド
主演=ラッセル・クロウ クリスチャン・ベイル ピーター・フォンダ グレッチェル・モン
1957年に製作されたグレン・フォード主演作のリメイクが本作。ハリウッドが今どき西部劇なんて珍しいが過去の良作を見直そうということなのだろうか。時期を同じくして、今年日本でも東映時代劇のリメイク「十三人の刺客」が製作されている。リメイクは失敗することが多いが、面白いものは時を越えても面白い。あとは作り方の問題なんだろう。西部劇というと、どうしても復讐劇や勧善懲悪をテーマとするものが多い。娯楽作として撮られたことはもちろんだし、強きアメリカを映し出すべき時代の背景があったからだ。しかし、時代を経て秀作と評価されている西部劇は、きちんと人間を正面から見据えた人間ドラマとも言える作品が多い。ガンファイトはラスト数分である「真昼の決闘」はその好例だし、数ある西部劇でもガンファイト以外に人情や友情が心に残るものがあってこそ、人々の記憶に残っているはずだ。
この「3時10分、決断のとき」も決してアクションが面白い訳ではない。アクロバティックな馬上の射撃も、目が覚めるような爆発シーンもない。面白いのは男と男の生き様だ。ラッセル・クロウ扮する悪党ベン・ウェイドは情け容赦のない冷血漢なれど、母親を悪く言われたら怒り、女性の幸せを考える情をもちあわせている。おまけに黒ずくめに西部劇らしくない洒落た帽子というファッションまで含めて妙にかっこいい(これは僕の視点だろうけど)。ラッセル・クロウは正直なところ苦手だったのだが、初めてかっこいい・・・と思った。それは映画を最後まで観て、彼が演じたベン・ウェイドに”男気(おとこぎ)”を感じられたからだと思うのだ。
一方でクリスチャン・ベイル扮するダン・アダムスは、南北戦争で足を負傷し今は牧場主として家族をもっている。だが収益はあがらず、病弱な子供の薬代もあって借金は膨らむばかり。映画冒頭で悪党に小屋を焼かれて「どうにかする」としか言えず、年頃の息子にいいところも見せられない冴えない父親。これまで「バットマン」などクールで余裕あるかっこいい役柄が多かったベイルが、一転して泥臭い役柄でいい演技を見せてくれる。「太陽の帝国」の少年が成長したよなぁ・・・と彼をみると映画ファンとしては感慨深い。
誇れるものを息子に示したい・・・というダンの気持ちを知ったベンが多くを語らず護送列車に乗ることに協力する。確かに彼が言うようにユマの刑務所は脱獄しやすいという余裕あってのことなのだろうが、逃げようと思えば逃げられる状況下で、ダンに一花咲かせてやろうとする彼の行動。それは「短いながらも芽生えた男の友情」とか言う言葉は不似合い。男として相手の生き様に敬意を払い、危険も顧みずに行動する”男気”ってやつだろう。いろいろ評を読むとラストの彼の行動がわからん、という意見もある。けれど本当にいい男ってのは言葉少なに自分を示すもの。ダンも息子に見守られて最期を迎えるが、あれだって普通の映画なら「母さんを頼む・・・」だのなんだの言って涙を誘うところだろう。でもこの映画は無言。ベンが仲間を皆殺しにするラストも台詞はもちろん必要ない。真の男の映画には無駄な説明もナレーションもいらない。それが美学なんじゃないだろか。マカロニウエスタンを思わせる音楽もナイスな映画でした。
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オリジナルも観てみたいね。
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