《 産経記者起訴 》 【 韓国でも報道の自由が危ない 】 2014/10/15 地方紙「社説」より
[産経新聞の前ソウル支局長が、ウェブサイトで韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を棄損(きそん)したとして、情報通信法違反罪で在宅起訴された。朴氏の意向を反映したものとみられる検察の判断は、報道の自由を脅かすもので、日韓関係にも影響が懸念される。直ちに起訴を取り下げるべきだ。問題の記事は旅客船セウォル号の沈没事故が起きた4月16日、朴氏の存在が7時間にわたり確認されなかったことに対し、韓国誌のコラムを引用したとしながら、特定の人物と会っていたのではといううわさを紹介した。独身女性である朴氏が強い不快感を抱いたのは容易に想像できる。明確な根拠のないうわさ話を記事にして掲載した同紙の報道姿勢も問題がないとは言い難い。
しかし、先に書いた韓国メディアはおとがめなしで、産経の記者だけが起訴されるのは公平性を欠いている。韓国内の反日感情を背景に、日本メディアを狙い撃ちしたと言われても仕方あるまい。
前支局長は8月以降、3回の事情聴取を受けた。日本政府はもちろん、韓国内メディアからも批判が出た。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は刑事手続きの取り下げを求めていた。
韓国では法令上、被害者の意思に反して起訴することはできない。朴氏は国際社会からの厳しい視線を十分に認識していたはずだ。「起訴しなくてもいい」と大人の対応をしてもらいたかった。
自分に不都合な報道に対して刑事責任を追及するやり方は、民主主義の根幹である自由な取材・報道活動を妨げる行為で、断じて許し難い。
韓国はもともと軍事独裁政権が長く、民主化されたのは27年前にすぎない。国民がようやく手に入れた報道と言論の自由が再び危機にある。このままでは言論を弾圧する国として、国際的なイメージが下がりかねないことを韓国政府は自覚すべきだ。
日韓関係も新たな火種を抱え込むことになった。9月にニューヨークで開かれた日韓外相会談で、首脳会談実現に向けた話し合いがあったばかり。関係修復の動きに水を差す格好になってしまったのは残念でならない。
翻って日本。政府は昨日、特定秘密保護法の運用基準を閣議決定した。秘密の範囲が曖昧なことや監視機関に実効性が期待できないなど、多くの問題点を残したまま施行しようとしている。「国境なき記者団」が発表した今年の「報道の自由度」で、日本は韓国より低い59位。ネックの一つに挙げたのが、くしくも秘密保護法の成立だった。
菅義偉官房長官は「民主国家としてあるまじき行為だ」と勧告を批判したが、日本も決して胸を張れる状況ではないことを自覚すべきだ。]
[産経新聞の前ソウル支局長が、ウェブサイトで韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を棄損(きそん)したとして、情報通信法違反罪で在宅起訴された。朴氏の意向を反映したものとみられる検察の判断は、報道の自由を脅かすもので、日韓関係にも影響が懸念される。直ちに起訴を取り下げるべきだ。問題の記事は旅客船セウォル号の沈没事故が起きた4月16日、朴氏の存在が7時間にわたり確認されなかったことに対し、韓国誌のコラムを引用したとしながら、特定の人物と会っていたのではといううわさを紹介した。独身女性である朴氏が強い不快感を抱いたのは容易に想像できる。明確な根拠のないうわさ話を記事にして掲載した同紙の報道姿勢も問題がないとは言い難い。
しかし、先に書いた韓国メディアはおとがめなしで、産経の記者だけが起訴されるのは公平性を欠いている。韓国内の反日感情を背景に、日本メディアを狙い撃ちしたと言われても仕方あるまい。
前支局長は8月以降、3回の事情聴取を受けた。日本政府はもちろん、韓国内メディアからも批判が出た。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は刑事手続きの取り下げを求めていた。
韓国では法令上、被害者の意思に反して起訴することはできない。朴氏は国際社会からの厳しい視線を十分に認識していたはずだ。「起訴しなくてもいい」と大人の対応をしてもらいたかった。
自分に不都合な報道に対して刑事責任を追及するやり方は、民主主義の根幹である自由な取材・報道活動を妨げる行為で、断じて許し難い。
韓国はもともと軍事独裁政権が長く、民主化されたのは27年前にすぎない。国民がようやく手に入れた報道と言論の自由が再び危機にある。このままでは言論を弾圧する国として、国際的なイメージが下がりかねないことを韓国政府は自覚すべきだ。
日韓関係も新たな火種を抱え込むことになった。9月にニューヨークで開かれた日韓外相会談で、首脳会談実現に向けた話し合いがあったばかり。関係修復の動きに水を差す格好になってしまったのは残念でならない。
翻って日本。政府は昨日、特定秘密保護法の運用基準を閣議決定した。秘密の範囲が曖昧なことや監視機関に実効性が期待できないなど、多くの問題点を残したまま施行しようとしている。「国境なき記者団」が発表した今年の「報道の自由度」で、日本は韓国より低い59位。ネックの一つに挙げたのが、くしくも秘密保護法の成立だった。
菅義偉官房長官は「民主国家としてあるまじき行為だ」と勧告を批判したが、日本も決して胸を張れる状況ではないことを自覚すべきだ。]