《 政治とカネ 》 【 危機感持ち「自浄」へ踏み出せ 】 2014/10/18 地方紙「社説」より
[小渕裕子経済産業相が「政治とカネ」の問題で、窮地に立たされている。
政治団体が支持者向けに開いた2010年と11年の観劇会で、回避収入と支出が大きく食い違い、差額約2642万円を負担した形になっていることが分かった。翌12年は記載もされていないという。有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に違反する恐れがあり、記載が虚偽なら政治資金規正法に抵触する。
まずは事実関係の詳しい調査、説明が不可欠。だが、どちらに転んでもずさん極まりない資金管理であったことは間違いない。事実であれば金額の大きさ、継続性の点からも悪質と断じざるを得ない。
小渕氏も「知らなかったでは済まされないという思い」と述べ、責任を一定認めた。国政を担う閣僚としての自覚と、公金たる歳費や政治資金を預かって活動している意識の欠如は到底容認できず、うやむやな決着は許されない。当然進退も問われよう。
飽かずに繰り返され、一向にやまない「政治とカネ」の問題。政治不信を深めている原因は、政治家自身にある。
昨今はどこの企業でも経費の適正使用や領収書を伴う報告の義務化が厳しくなされている。「号泣議員」で話題の地方議会も徐々に、政治活動費などの厳格化、透明化に取り組み始めた。その「当たり前」を、ひとり国会議員だけができないのなら、ザル法と悪名高い政治資金規正法を改正し、性悪説に基づいた厳しい縛りをかけねばなるまい。
かろうじて維新の党が、使途報告の義務がない月100万円の文書通信交通滞在費について、10月支給分から独自に使途を公開する方針を決めた。しかし、自民党は「公開する必要はない」(谷垣禎一幹事長)とにべもなく、他党の反応も鈍い。これでは「自浄」など望むべくもない。
まして消費税増税を決定した際、国会議員は身を切る改革を約束した。が、まったく進む気配もない。逆に4月には、復興財源や「増税への理解を得る」との名目の「歳費の2割削減」も、どさくさ紛れに打ち切った。身内に甘く、不透明なカネの流れを隠して恥じない体質のままでは、国民に痛みを強いる資格はない。
大臣を選んだ安倍晋三首相の任命責任もまた、重い。
第1次安倍内閣では、政治資金の使途に疑惑が持たれ、閣僚2人が辞任し1人が自殺した。今回も小渕氏だけではなく、松島みどり法相が選挙区でうちわを配って公選法違反を疑われ、江渡聡徳防衛相も収支報告書の訂正問題で集中砲火を浴びている。
「気の緩み」では到底片づけられず、決してささいな問題でもない。政権として真摯(しんし)に反省し、危機感を持って自浄に踏み出さねばならない。]
[小渕裕子経済産業相が「政治とカネ」の問題で、窮地に立たされている。
政治団体が支持者向けに開いた2010年と11年の観劇会で、回避収入と支出が大きく食い違い、差額約2642万円を負担した形になっていることが分かった。翌12年は記載もされていないという。有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に違反する恐れがあり、記載が虚偽なら政治資金規正法に抵触する。
まずは事実関係の詳しい調査、説明が不可欠。だが、どちらに転んでもずさん極まりない資金管理であったことは間違いない。事実であれば金額の大きさ、継続性の点からも悪質と断じざるを得ない。
小渕氏も「知らなかったでは済まされないという思い」と述べ、責任を一定認めた。国政を担う閣僚としての自覚と、公金たる歳費や政治資金を預かって活動している意識の欠如は到底容認できず、うやむやな決着は許されない。当然進退も問われよう。
飽かずに繰り返され、一向にやまない「政治とカネ」の問題。政治不信を深めている原因は、政治家自身にある。
昨今はどこの企業でも経費の適正使用や領収書を伴う報告の義務化が厳しくなされている。「号泣議員」で話題の地方議会も徐々に、政治活動費などの厳格化、透明化に取り組み始めた。その「当たり前」を、ひとり国会議員だけができないのなら、ザル法と悪名高い政治資金規正法を改正し、性悪説に基づいた厳しい縛りをかけねばなるまい。
かろうじて維新の党が、使途報告の義務がない月100万円の文書通信交通滞在費について、10月支給分から独自に使途を公開する方針を決めた。しかし、自民党は「公開する必要はない」(谷垣禎一幹事長)とにべもなく、他党の反応も鈍い。これでは「自浄」など望むべくもない。
まして消費税増税を決定した際、国会議員は身を切る改革を約束した。が、まったく進む気配もない。逆に4月には、復興財源や「増税への理解を得る」との名目の「歳費の2割削減」も、どさくさ紛れに打ち切った。身内に甘く、不透明なカネの流れを隠して恥じない体質のままでは、国民に痛みを強いる資格はない。
大臣を選んだ安倍晋三首相の任命責任もまた、重い。
第1次安倍内閣では、政治資金の使途に疑惑が持たれ、閣僚2人が辞任し1人が自殺した。今回も小渕氏だけではなく、松島みどり法相が選挙区でうちわを配って公選法違反を疑われ、江渡聡徳防衛相も収支報告書の訂正問題で集中砲火を浴びている。
「気の緩み」では到底片づけられず、決してささいな問題でもない。政権として真摯(しんし)に反省し、危機感を持って自浄に踏み出さねばならない。]