世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【円安誘導が主因】アベノミクス本領発揮!?電気料金一斉値上げ①

2013-07-09 00:01:05 | 日本

 本稿タイトルのとおり、「アベノミクス」がいよいよ本領を発揮し始めました(!?)。

 今月、全国の電力10社は一斉に電気料金を値上げしました。正確にいえば、燃料費調整制度にもとづく料金の調整で、今年の2~4月期の燃料価格(原油、LNG、石炭)を7月の電気料金に反映したもの。同1~3月期と比べて燃料価格が上昇したため、結果として全10社の料金がそろって値上げとなったものです。標準家庭ベースでは6月の料金より27~116円の引き上げで、値上げ幅は東京電力が最大となっています(6月:7804円→7月:7920円と1.5%の値上げ)。

 いうまでもなくこの電気料金の引き上げは円建て燃料価格の上昇にともなうもの。そしてその最大の要因は「アベノミクス」によってもたらされた円安です。先日の記事で取り上げたブラジルやエジプトなどの新興国とは違って、わが国の足元の通貨安は政府や日銀のリフレ政策によって意図的に引き起こされたものであることに注目です。そう考えると、今回の電気料金の値上げ、さらにはガス料金や小麦・飼料などの輸入必需品の相次ぐ値上げは、「マネーをばらまいてインフレを起こそう!」という政治家や中央銀行の目論見どおりの動きという見方ができるでしょう。

 数ある財やサービスのなかでも、とりわけ電気料金の引き上げは日本経済や国民生活に重大なマイナスの影響を与えると考えています。以前の記事「円安インフレで国民が気づく『円高』のありがたさ④」で書いたとおり、日本人の100%が電気のユーザーだからです。したがって、この先も円安誘導が政策的に進められれば、北は北海道から南は沖縄に至るすべての国民が、個人として、そして法人として、高い電気料金という円安の痛みをたっぷり味わうことになりそうです・・・とほほ。

 電気に関連してもうひとつ重要な点が火力発電の燃料価格が円安で高騰していること。東日本大震災にともない、すべての原子力発電所が稼動を停止している現在、わが国の全発電量に占める火力発電の割合は約90%にも達しています。そしてその火力燃料、とりわけLNG(液化天然ガス)の輸入量と円建ての輸入額は大幅に増え、最近の日本の貿易赤字の主因となっています。

 何度か本ブログで書いているように「アベノミクス」金融政策の本質は「円安誘導による外需狙い」ですが、現時点で輸出振興には目立った効果を発揮していない半面、円安による輸入必需品の円建て価格の高騰を引き起こして貿易赤字額を膨らますという、何とも皮肉な結果を呼んでいます(じつはこのあたりも円安を目論む安倍首相や黒田日銀総裁の計算どおりだったりして!?)。

 もっとも、貿易収支が赤字とはいえ、わが国は所得収支の黒字額が大きいおかげで経常収支の赤字転落は免れてはいますが、さらに円安が進んだら・・・などと想像すると、さすがにコワくなります。

(続く)


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【日本への警告】通貨安インフレに苦しむブラジル国民⑤

2013-07-07 00:01:10 | その他の地域

(前回からの続き)

 さて、バーナンキ米FRB議長によるQE縮小・停止時期の言及によって動揺した世界の金融市場ですが、当面のQE継続が再認識されるとともに、アメリカの景気回復をうかがわせる指標発表が相次いでいることから、ここのところ落ち着きを取り戻し、ふたたびリスクを取る方向に行っているように感じられます。

 にもかかわらず、ブラジルの通貨レアルの為替レートは1ドル2.3レアル近くと、ドルに対して下げ止まる気配がありません(7/5時点)。やはり直近の反政府デモにともなう政情不安や、経常赤字続きに象徴されるブラジル経済の構造的な弱さが嫌気されているのでしょう。

 欧米の緩和マネー流入以外に通貨安を食い止める策を持たないブラジルは、いよいよ厳しい状況に追い詰められていきそうです。しかも、コンフェデ杯優勝に歓喜した民衆の関心がサッカーからふたたび通貨安インフレに向きそうなタイミングでもあります。この先の米FRBの金融政策いかんによっては、ブラジルは一気に資本逃避とハイパー・インフレ、そして大きな社会的混乱に見舞われるかもしれない・・・。そんな予感がするのですが、いかがでしょうか。

 ところで話は変わりますが、アフリカではエジプト情勢がきな臭くなってきました。事実上、軍がクーデターを起こし、民主的な選挙で選ばれたモルシ大統領を解任するという、とんでもない事態になっています。

 そんな軍の暴挙に多くの支持が集まるあたり、それだけ民衆のモルシ政権に対する不満や怒りの大きさが推測されるわけですが、何といってもその元凶は急激な物価高でしょう。そしてエジプトで厳しいインフレを引き起こしたのは、外国からの投資減少や治安の悪化などの結果もたらされた「通貨安・・・上記のブラジルと同じ構図です。

 外貨収入源も外貨準備も乏しいため、何らかのリスク発生で欧米マネーが流出すればたちまち通貨が暴落し、その結果、大多数の市民がインフレに苦しめられる―――ブラジルやエジプトの最近の動静を伝えるニュースに接するたび、そんな新興国の悲哀をつくづく感じます。

 それとともに、庶民の平穏な暮らしや社会の安定を破壊に導く通貨安インフレの恐ろしさをブラジルやエジプトの人々は身をもって日本人に警告してくれているように思えてなりません。なぜなら、わたしたち日本人もまた物価高に直面しつつあるから。そしてその物価高の原因となる通貨安は、安倍政権および黒田日銀が推進する「リフレ政策」(人為的な円安誘導によってインフレを起こそうという政策)によって、意識的に引き起こされたものだから・・・。

(「通貨安インフレに苦しむブラジル国民」おわり)


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【結局は米QE頼み】通貨安インフレに苦しむブラジル国民④

2013-07-05 00:01:59 | その他の地域

(前回からの続き)

 というわけで、インフレを激化させている通貨安を自分たちの力で食い止めることができそうもないブラジル政府・中銀が最後に頼るのは、結局は米FRBのQE(量的緩和策)ということになりそうです、多くの新興国がそうであるように。とほほ・・・。

 アメリカのQEが今後も続けば(あるいは市場がそのように期待すれば)、足元のブラジルの通貨安問題は一気に解決されるでしょう。QEの継続によって、マーケットに溢れた低利のドル資金が少しでも高い運用利回りを確保しようと、新興国の金融市場に流れ込むからです。そうなれば通貨レアルは一転、ドルに対して上昇するとともに、ブラジル国民を苦しめている通貨安にともなう輸入インフレが緩和されるものと予想されます。物価高が止まれば国民の不平不満感が和らぎ、反政府デモも収拾して政情が安定に向かうことでしょう(?)。

 そしてブラジル国債のほうも外国人に買われて価格が上がる(利回りが低下する)ものと考えられます。これによってブラジルでは金利が下がり、個人消費や内外企業の設備投資が刺激されて、景気が上向くことでしょう。当然、ブラジル政府は財政資金を相対的に低いコストで調達することができるはずです。まるで米FRBがブラジルの「財政ファイナンス」をしているに等しい状況ですね。

 米QEは輸出面でもブラジルに好影響を与えそうばら撒かれたマネーがブラジルの主要輸出品である一次産品(天然資源や農産物)の国際価格を引き上げるとみられるからです。

 この場合、ブラジルとしては、とりわけ鉄鉱石価格の再上昇に望みを託したいところ。鉄鉱石の価格は2001年時点で1トンあたり13ドル程度だったものが、2011年には同170ドル近くと、何と12倍以上になりました。たしかに中国における鉄鋼需要の急増はあったものの、この間の(とりわけ2008年のリーマン・ショック後の)QEこそが鉄鉱石を含む資源価格を大いに押し上げる要因となったことは明白です。その鉄鉱石価格ですが、さすがに上がり過ぎたのか、2012年には同140ドル程度まで下がってしまいました。いまブラジルとしては祈るような気持ちではないでしょうか。「米QEよ、どうか今後も続いて鉄鉱石価格をいまいちど高騰させてくれ!」といったところです・・・。

 本ブログでは米QEが生み出すマネーのことを「麻薬」と呼び、その危険性を指摘しましたが、どうやらブラジルもこの麻薬依存症に陥ってしまったようです。上記のように、麻薬が効いているあいだは金利や物価の安定がもたらされるとともに、鉄鉱石などの輸出額も拡大するため、順調に経済成長路線をたどっているように思えます。したがって、ブラジル政府も政治家も、政治・経済・社会の構造改革(自国企業の技術力や競争力強化、公共インフラ整備、福祉・教育政策の充実、貧富差の縮小、などなど)を先送りにします。そしてやがて訪れるQEの縮小・停止により、緩和マネーという麻薬の「禁断症状」に苦しむ羽目になる・・・。

 そんなことを繰り返すブラジル。だから通貨レアルは強くならないし、インフレを抑えることも民衆の反政府感情を和らげることも難しい。そして悪名高きファヴェーラ(都市の貧民街)を無くすなんて夢のまた夢・・・そう思います。

(続く)


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【難しい中銀の舵取り】通貨安インフレに苦しむブラジル国民③

2013-07-03 00:00:44 | その他の地域

(前回からの続き)

 以上のように、ブラジルに急速なインフレをもたらしている通貨レアル安の背景には、米QEの縮小観測にともなうドル資金の流出といった足元の世界的な金融情勢に加え、ブラジル経済の持つ本質的な脆弱性があるといえそうです。したがって、ブラジル政府やブラジル中銀としても根本的な対策がなかなか打てないといったところでしょう。

 とはいえ、このままではますます通貨安が進み、インフレも激しくなって、抗議デモが拡大して政情が不安定化し、さらにレアルが売られて・・・といった悪循環を止めることができなくなってしまいます。したがって政府・中銀としては、経済の構造改革は先送りしてでも、まずは目先の外資流出阻止に動かざるを得ないでしょう。

 すでに述べたように、先月下旬、ブラジル中銀はドル・スワップ入札を実施していますが、中銀は今後もドル売りレアル買い為替介入などの通貨防衛策を繰り出すことになると予想しています。昨年末時点のブラジルの外貨準備高は3790億ドル(IMFデータ)と巨額ではありますが、この先の世界市場の「リスクオフ」の成り行き次第(新興国市場に投資されたマネーの欧米への巻き戻し)によっては、本当にこれで万全といえるのか微妙な感じがします。

 外資流入を促すために高金利政策を継続する必要もあるでしょう。ブラジル中銀はこの4月と5月に2ヶ月連続で政策金利の引き上げ(変更後8%)に踏み切りましたが、これには上記のインフレを抑制するという目的に加え、金利を高めにすることで外国マネーを引き寄せようという意図があるものと思われます。ちなみにブラジルの長期金利(10年物新規国債利率)は11.12%(先週末時点)と、わが国の0.85%、アメリカの2.49%などと比べても相当な金利差があります。これだけ利回りに違いがあれば、アメリカで金利の先高感が出てきたとはいえ、引き続きブラジル国債への外国人投資が期待できそうですが・・・。

 しかしこうした高金利は逆に企業の投資意欲に水を差すことにもなります。上述のようにブラジルにおける直近の物価高の主因は通貨安であって、決して消費や投資が過熱したためではありません(わが国と同じ)。したがってこれ以上の金利高はさらに景気を冷え込ませる可能性が高く、個人消費や設備投資も伸び悩むことでしょう。

 ということで、ブラジル中銀は、高い金利のもとで、これ以上の物価上昇を食い止めつつ、海外投資マネーの流入継続と景気の活性化を図らなくてはならない、という何とも難しい舵取りを迫られている状況にあります。もしこれに失敗したら通貨レアルの暴落と激しいインフレが待っていそうですが、大丈夫でしょうか・・・。

(続く)


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【さえない経済】通貨安インフレに苦しむブラジル国民②

2013-07-01 00:04:42 | その他の地域

(前回からの続き)

 現状のブラジル経済は決して好調とはいえません

 2012年の実質経済成長率は前年比で0.87%と停滞。今年の第一四半期も前年同期比で同1.9%程度の伸びと、前述のインフレ率などと照らし合わせると物足りない値です。

 そして気になるのが経常収支の最近の推移。ブラジルの経常収支は、2000年代前半には黒字を達成していたものの、2008年に赤字に転落してからは、昨年に至るまで5年間連続でマイナスを記録しています。その赤字額は約540億ドルと大きく、昨年2012年の経常収支国別ランキングでは、ワースト1位のアメリカ、同2位インド(危うしインド!?)などの諸国に続き、下から数えて第7位となっています。それだけ外国から借金しなければ国が回らないということになります。

 この原因としてまず挙げられるのが貿易黒字の減少。2012年のブラジルの貿易黒字は前年比35%減の194億ドルと、2002年以来の低水準となったとのことです。とくに重要な輸出品である鉄鉱石ですが、輸出量こそ前年並み(2011年の1.3%減、約3.27億トン)を維持しましたが、輸出額のほうは約310億ドルと、2011年(418億ドル)よりも26%もの減額となりました。この年の世界的な鉱物資源の価格下落の影響でしょう。鉄鉱石のように、世界の市況や天候などの影響を受けやすく、価格変動幅の大きな一次産品(鉱物資源や大豆などの農産物)の輸出額の全輸出額に占める割合が高い(46.8%;2012年)のもブラジル経済の特徴であり、ウィークポイントのひとつでもあります(以上、データはJETRO HP等)。

 所得収支の赤字も経常赤字の大きな原因です。ブラジルでも最近は自動車をはじめとした工業製品の製造や販売、輸出が盛んになってきてはいますが、これらのほとんどはブラジルに進出した欧米企業が担うもの。これら企業はブラジルで手にした利益や配当の多くを本国に送金します。一方、逆のケース(ブラジル企業等が国外の投資から得る利益や配当)はあまりありません。したがって、ブラジル経済が発展して自動車等が売れれば売れるほど国外に流れるキャッシュは増えるわけで、今後もブラジルの所得収支赤字は継続することになりそうです。このへんは、自国企業の資本力や技術力が乏しいがゆえに外国資本の自国への投資に依存せざるを得ない新興国としての構造的な脆弱性をブラジルも抱えているといったことだと思います。

 というわけで、ブラジルの経常収支はこの先も引き続き赤字基調をたどるとみられます(しかも赤字額は巨額になりそう?)。そんな低調な経済環境のもと、前述の米QE縮小観測にともなう緩和マネーのドルへの回帰現象もあって、ブラジルの通貨レアルはじりじりと弱含んでいきそうな気配です。

(続く)


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