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【ユーロ無限散布?】金融危機:「収束」した日本と「これから」の世界③

2013-07-17 00:01:10 | 世界共通

(前回からの続き)

 日本がそうであったように、バブルのツケは最終的に金融システムに回るもの。当然、欧州の場合もそうなるでしょう。上述のとおり、デフォルトのおそれが高いPIIGS諸国の国債とかPIIGS企業の債権などをバランスシートに大量に抱え込んだ欧州の銀行の多くが、近い将来、深刻な経営危機に陥ることは明白です。その件数や負債総額、さらにはそれがもたらす経済へのマイナスの影響は90年代末の日本の比ではないでしょう。そしてそれは銀行の財務リストラを通じて「貸し渋り」や「貸し剥がし」などを引き起こし、欧州の実体経済に強烈な景気後退圧力をもたらすでしょう。

 もちろん欧州の各国首脳や金融当局も、こうしたシステミックリスクの発生を危惧し、頻繁に会合を開いて対策の協議(だけ)は行っています。で、直近のメインテーマは「銀行同盟」。これは今春のキプロス債務危機における同国の大手銀行の破綻処理で大混乱を招いたことの反省に立ち、いままでなかったEU内の銀行破綻処理の統一ルールやステークホルダーへの負担基準などを制度化しようというもののようです。

 が・・・いつものように、これまた話がなかなか前に進みません。どうやら大手銀行の検査機能をECB(欧州中央銀行)に集中するのだそうですが、そんな瑣末な(?)ことはともかく、銀行破綻スキームとか預金保険の一元化といった肝心要のルール制定ができる兆しはありません。まあ、真っ先に自国の金融機関が危機に瀕することになりそうなPIIGS諸国や、同諸国への投融資残高の大きな銀行を抱えるフランスあたりは一刻も早く「銀行同盟」をスタートさせたいところでしょう。しかしドイツやオーストリアなどは、自分たちの血税がこれら「外国」の銀行や預金者の救済に使われることに反発を強め、あくまでも自国銀行の破綻は自国政府等が責任をもって対応するべき、という立場を取っています(当然のことではありますが・・・)。この両者間の溝は深く、実効性のある「銀行同盟」設立はとても望めそうもありません。

 そうこうしているうちに時間切れとなるものと思います。具体的には、ギリシャ、スペイン、あるいはイタリアあたりで政権崩壊とか大手企業の倒産が起き、これら諸国の国債が投げ売りされて価格が暴落、利回りが急上昇して金融システムが機能不全に陥ります。同時にこれら諸国はマーケットから資金調達するすべを失って債務不履行寸前に・・・。で、結局は「最後の貸し手」ECBの登場です。このときECBは返済される当てのないPIIGS国債を買い支えて利回り上昇を食い止めようとするでしょう・・・。

 ところでECBにはOMT(Outright Monetary Transactions)という国債買い取りプログラムがあります。流動性不足に苦しむ諸国にはありがたいスキームに思えますが、安直な中銀による「財政ファイナンス」とならないよう、OMTの適用にあたってはそれなりの「ハードル」が設定されています。その条件とは、ECBに国債を買ってほしい国は、まずEUに対してESM(欧州安定化メカニズム)による支援を求め、かつその支援を受けるために財政再建等に取り組むこと、といったもの。この枠組みは昨年9月にスタートしましたが、そうした条件が厳しすぎたのか、まだ一度も要請・実行されたことがありません。

 近いうちに発生するはずの危機では、おそらくECBはそんな建前にこだわっている場合ではなくなるだろうと予想しています。「この国の財政健全化計画はOMT実行の条件を満たしているのかな~」などとのんびり審査していたら、当該国はたちまち資金ショートを起こしてデフォルトを宣言しかねないからです。そうなったら(おそらく日本の金融機関以外の)世界の大手金融機関は連鎖的に破綻し、本当に世界金融恐慌が起こってしまいます。

 こうした破局を避けるための唯一の策は、繰り返しになりますが、(OMTそっちのけで?)ECBが危機に陥った国の国債を無条件で買い取ること。それは「禁じ手」のはずの中銀による国債の直接引き受けを意味します。しかも買ったが最後、ECBはそれらを二度と金融マーケットに売ることはできなくなりそう(国債価格急落・利回り急上昇を招くため)。そして償還される見込みのない国債の無制限の購入でECBがバラ撒いたマネーは回収されることなく市中にあふれることに・・・つまりは通貨ユーロの暴落とインフレ・金利高騰は避けがたいだろう―――そうみています。

 欧州では「銀行同盟」をめぐって相変わらずの鳩首会議が続いていますが、そろそろそんな余裕はなくなるのではないでしょうか・・・。

(続く)


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