(前回からの続き)
本稿も長くなってきたので結論を急ぎます。
結局、安倍政権・日銀は、こうした状況に日本の金融業界を追い込んで、対米証券投資をさせたいのだろう、と推測しています。なぜなら、「出口戦略」つまりQE縮小・終了をアメリカが無難に進める(債券価格急落とか金利の急上昇を引き起こさない)ためには、ジャパンマネーによる米国債などの買い支えがたいへん効果的だからです(そうすることでアメリカの日本に対する心証を良くしようということ)。
本稿⑧で、日銀が日本国債を買い占めてわが国の金融機関に買わせないようにしている、と書きましたが、その続きはこんな感じ―――「だから米国債を買いなさい(by 日銀)」。もうこうなってくると経済合理性を超えた安全保障論の世界ですね、TPPと同じく・・・。
さて、そんな思惑のとおり、日本の金融界は対米投資を増やすでしょうか。本稿⑥で(ちょっぴり皮肉を交えて)書いたように、アベノミクス序盤においては政府・日銀の狙いとは逆に金融各社はドル資産を手放したようですが、この先、円安ドル高が長引くようなら、ドル建て債券投資の妙味も高まるかもしれません・・・。
まあそれもQEの今後次第でしょう。ただし「QE縮小なら債券価格下落リスクあり」「QE継続ならドル安リスクあり」といった具合で、どのみちドル資産買いには十分なリスクマネジメントが必要な感じがします(もっともユーロとか新興国通貨建ての資産よりは安全でしょうが・・・)。
ということで、世界中のどの銀行よりも健全なバランスシートを整えたわが国の金融機関が今後、米国債をはじめとする外貨建て資産投資にどの程度乗り出すのか―――じつは日本人よりも、金融政策や資金繰りなどの関係でジャパンマネーを借り入れたい欧米諸国や新興国の金融関係者のほうが、この点にはるかに強い関心を寄せているような気がしています。
それほど、わたしたち日本人のマネー力は強い―――そう思っています。
(「金融危機:『収束』した日本と『これから』の世界」おわり)
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