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モラルハザードを追認する経済減便

2018-04-17 22:10:00 | 交通
国交省は航空会社の定期便で、予約数が少ないことを理由にした「経済減便」を容認、制度化することを固めたそうです。

もともと「経済欠航」の言葉があるように、適当な理由をつけてその実は欠航した方がコストが安い、という本音で欠航しているのでは、という疑念が払拭できない業界ですが、より厳格に「経済欠航」を許さないように統制を強化するのではなく、公然と容認する方向にかじを切ったのだから恐れ入ります。

「路線」「定期」の一丁目一番地は、決められた時間に運航(運行)するということです。
「新高速バス」のスキームができたとき、ツアーバス批判の一つにそこが疎か、蔑ろになっている、というものがありましたし、これは「新高速バス」ではない新規参入業者ですが、慢性的な空席続きに運休を決定した際に、運休期間に先立ち「経済欠航」を強く疑う運休が発生したケースもありました。

ただ、その大前提にしても、ツアーバス批判では声高に叫ばれた反面、「経済欠航」の際にはネットでの受けが宜しかった事業者ということもあってか批判は及び腰でしたし、今回の「経済減便」に至っては頼みもしないのに事業者の経営状態を慮って理解を示す声が早くも出ているあたり、極めてご都合主義です。


今回の制度化ではいろいろな制約や救済策があるから大丈夫、という仕立てで、専門誌も理解を示していますが、利用者の視点に立てば話にならないわけです。
7日前までの通知にしても、じゃあほかの交通機関、特に航空の場合、7日前の段階で予約をしようとしても、本来予約していたタイミングでの料金とかけ離れた高値しか残っていないわけです。あるいは元々高い料金を前提にしていたとしても、予約を待っていたら7日前にあるはずだった便が消えてしまった。こうした不利益への対応はどうなのか。

前後3時間に自社代替便があることが前提、ということにしても、3時間もずれたら旅程は大きく狂います。午後移動のつもりが午前移動になりスケジュールをキャンセルする、あるいは午前移動が午後移動になってしまいスケジュールが合わなくなり移動の目的そのものが成立しなくなる、目的地に辿り着けなくなる、ということも容易に発生します。

「経済減便」は発生例が公示されるので、リスクを測ることができる、と専門誌あたりは言っていますが、冗談にも程があるわけで、そんな不安定な交通機関が「公共交通」とは片腹痛いです。

では、今回の制度化で導入するのはどこか。
「3時間ルール」があるので1社でそれなりに頻発している路線でしか成立しません。LCCが使うという観測が広がっていますが、成田$V千歳、成田&汢ェくらいしか充足する路線はないですし、レガシー2社とSKYによる幹線区間でしょうか、導入が可能なのは。
しかも片道が空席でも折り返しが満席なら飛ばさないといけませんし、機材繰りの柔軟性という意味でも大手が実は使う可能性のほうが高いです。あるいは「別働隊」がコードシェア便を代替便と定義できれば、レガシーと「別働隊」ともに利用可能でしょう。

利用者にとって全くメリットがない「経済減便」ですが、それでも導入したいのであれば、7日前までの通知だけでなく、代替便への振替の実施まで義務付けるべきです。振替先が早朝、深夜になる場合は宿泊費の提供などの「割増」の実施も必要です。イメージとしてはオーバーブッキング時の対応に準じる感じです。
未予約者の選択肢消失への対応としては、代替便への自社基準での「振替」。3時間以内という寝言ではなく、他社便を含めてできるだけ近接時間帯での振替を促し、時間が離れるにつれて「見舞金」を増やす、といった対応が必要です。

そもそも「路線」「定期」である大前提を自社の懐具合で破ろうとするモラルハザードであり、利用者に十二分に手を尽くしたうえでまだメリットがあるのであれば容認する、という厳格な対応が必要です。


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