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Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

だから斜陽が止まらない

2025-08-26 20:45:05 | 時事
アフリカ開発会議が横浜で開催されていました。G7とか先進国の行事だと我も我もと自治体が名乗りを上げ、報道も熱が入りますが、間歇的な報道でメディア的には重要視されていません。それが国民のレベルといえばそれまでですが、奇しくも中国の「一帯一路」が初期のインフラと「債務のワナ」から資源開発に軸足を移して再展開しているという記事がありました。その舞台は「現代のシルクロード」というよりもアフリカ諸国がターゲットであり、古くは完成から間もなく半世紀、構想からは実に60年となる「タンザン鉄道」に遡るアフリカへの一石を見るに、日本外交の拙さ、国民意識の低さは目を覆います。

今回の会議でJICAがアフリカ4か国との「ホームタウン構想」を打ち出しましたが、排他主義者やその国政政党などが「地方をアフリカに売る」と叫んでいます。もちろん現地メディアがそう取られてもおかしくない報道をしているわけですが、普通に考えたらジョークの域でもあり、それを真顔に取って批判するというのは相手国に対しても失礼でしょう。国政政党が焚きつけているのですから。

そういうデマの流布に当該自治体も躍起になって否定のコメントを発表していますが、デマの流布で収拾がつかなくなっているとはいえ、あの内容では各国との交流は御遠慮したい、という本音が滲み出ている市もあるわけで、結局はアフリカなんて嫌、というところです。しかしそれが「先進国」であればその地方を支配することも可能な実力があるのですが、先進国(欧米豪の白人国家)であれば「おらが街が〇〇になる」と歓迎ムードになるでしょうし。

これで中国との経済競争など片腹痛いわけで、もはや負けるべくして負ける状態でしょう。経済安保とか言ってもそんな下心というか本音がむき出しで誰が協力するのか。
排外主義者が「山形県長井市をタンザニアに捧げた」と騒いでいますが、これではタンザン鉄道以来の経済関係が続くタンザニアが中国に反して日本を向くことは未来永劫無いでしょう。
いわんや嫌悪感を隠さないようなコメントを出した木更津市は論外で、相手のナイジェリアがどういう国かもわかってないんでしょうね。今やアフリカ最大の経済大国で石油など資源も多いが石油に依存しないレベルまで経済が伸長しているのに。

ちなみにこのアフリカ開発会議、国際社会では珍しく日本主導で実施されています。1993年の第1回から今回で9回目ですが、EUや米国、中国の影響がない会議体であり、日本の国家戦略上、アフリカにプレゼンスを示せる貴重な機会ですが、この程度の反応というところに官民挙げての外交音痴、経済音痴ぶりが滲み出ています。歴代外相や次官が地道にアフリカなどの途上国を訪問してきたのはなぜか。日本が貧しいのにカネをばらまくな、という俗耳に入り易い批判を浴びせている国民は、日本の没落を狙う外国の第五列でないとしたら、相当な外交音痴、無知の類です。今回「問題」になった4ヶ国がどういう国か。ちょっとでも知っていればこんな無礼で怒らせたらヤバいと気が付きますし、そういう発想が起きないのが外交音痴、経済音痴の真骨頂です。ビザはヤバい?これも無知の証左。向こうのエリートが来るような仕掛けを作るほうがよほど有効です。いかにして単純労働者でない階層を招くかですよ。それこそ自治体にある企業からの輸出先開拓でのアドバンテージだって期待できますし。

アフリカ開発会議やアフリカとの関係を否定することがなにをもたらすか。それこそ人民服を着ていた時代から半世紀以上の布石を敷いてきた中国の思うつぼでしょうし、永遠に中国に勝てないレベルまで堕ちた感じです。今回の4ヶ国はいずれも中国との関係が深いとされており、日本の行動は目の上のたんこぶでしょう。資源でコントロールしたい米国も同じでしょうね。独自戦略で資源確保に邁進した田中角栄がウラン開発に手を出して米国の怒りを買った結果がロッキード事件というのは有名な話です。ロッキード側は実は訴追されていませんし、そもそも発端は中核の資料が米上院のチャーチ委員会に「誤送付」されたという田舎芝居レベルですから。

自分たちが影響力を行使できない会議体で経済関係を深められては困るのはこうした国々です。デマまで振りまいてアフリカ諸国の離反を誘おうとしている国政政党やその尻馬に乗るメディアや著名人は、正直中国などの第五列と言っても差し支えありません。例の政党はもともと「右の緑の党」に過ぎない政党ですから、「右」味は本当の目的の為の方便であり、今回はそれがはっきり出た格好です。無責任、あるいは確信犯的な扇動が外交関係を壊しかねない重大事を招く主犯です。

なお日本人の欧米(白人)信仰と有色人種蔑視の本音は、自分たちが差別される側、ということを忘れた格好でしみついています。これはなまじ植民地支配を受けなかったことも影響しているわけで、第二次大戦での敗戦も間接統治にとどまり、米国の「統治」が巧妙だったこともあり、欧米は常に「お手本」だったことも大きいです。

周辺諸国との軋轢が起きると、敢えて友好を唱える必要はない、なぜならば、と福沢諭吉の脱亜論を振りかざす人も多いですが、どんなに尻尾を振っても「異民族」「異教徒」は「欧米クラブ」には入れないことはトルコのEU加盟問題を見れば一目瞭然です。コストと血を流す軍事面ではNATOに加盟しているというのに。そしてアジアではない、と「蔑視」することで得られるものは何か。ネットでよく「日本スゴイ」系の「親日国ガー」という記事や書物の宣伝が出ていますが、皮肉にも親日国とされる国ほどドライですからね。自国のメリットになるのであれば中国に付きますから。そもそももはや各国で日本がもてはやされているのはサブカルなどヲタの世界だけですから。

上梓から半世紀以上、執筆開始からは60年以上という小松左京のベストセラー「日本沈没」には、いよいよ日本が「沈没」する際に政府が手配して国民が海外に避難(移住)するというシーンが出てきます。そしてそこでは国民の意向は欧米やリゾートばかり、と政府がぼやくくだりが出てくるわけで、海外旅行の自由化、外国為替の自由化以前で海外との接点が極めて限定的だった当時の国民性を反映させた表現としての「国民性」が、国際化されたはずの今現在においてもほとんど変わっていないことがわかります。同書では日本は地学的要因で「沈没」しますが、それが荒唐無稽としても、経済的、外交的に「沈没」することは十分あり得るわけで、その時世界中から見捨てられるリスクはかえって高まっているとも言えます。



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