安倍政権の「一億総活躍への挑戦」という看板は、太平洋戦争に向けての【大本営の鼓舞】を連想させる、ブラック企業の感覚に近い。
つまり、寝る間も惜しんで、[お国のためなら倒れるまで奮闘せよ]との、人を酷使するイメージが付きまとう。
2014年の総選挙での政権公約には、「人手不足問題の解消」を掲げて、「適正な労働条件の確保を図る」と謳っている。
この適正な労働条件とは、説明もなしで、2015年初頭の施政方針演説では、画一的な枠をはめない【フレックスタイム制度】を拡充すると言い出している。
つまり、仕事をさらにきつくして、24時間フルに働ける環境を作りたいのだ。
その一方では、「時間外労働への割増賃金に引き上げなどにより、長時間労働を抑制します。」言い出している。
さらに「年次有給休暇を確実に取得できる」仕組みを創り、働き過ぎを防ぎ、「ワーク・ライフ・バランスが確保できる社会をつくる。」と宣言している。
この字句は、2015年に打ち出された施政方針演説にあるが、ほとんど、そのまま2016年初頭の施政方針演説にも繰り返されている。
この1年間で、何をしたかの説明もないので、成果はゼロなのであろう。
安倍政権の特性は、大企業のお友達経営者の言い分を聞くだけで、働き方をできるだけ自由にさせて、企業のお役に立つ人だけを重点活用したいのだ。
その反面で、ブラック企業的な人を酷使する企業体質に批判があるので、体面上では、働き過ぎの残業を減らす方向や、有休取得と奨励するポーズを採る。
体面を繕うだけと見られるので、改革は全く進む気配もなく1年が過ぎる。
安倍首相の本質は、人をやる気にさせる環境作りよりも、酷使して人手不足をなくせば、生産性が向上すると思っている様である。
その反面では、企業は儲けが増えても、人の価値を上げる給与増加は、最小に抑えることに専念している。
それで、非正社員の賃金を引き上げる具体策もないまま、「同一労働・同一賃金」やら、「均等待遇」を言いだして、カッコだけは挑戦する意欲をみせている。
実現への検討会は、挑戦の意欲もない「ヒラメ政治家」と「事なかれ主義官僚」ばかりだから、時間をかけて検討している実績だけを出す姿勢にとどまる。
こうして時間が経過して、賃金デフレに逆戻りをする流れが安倍路線なのだ。
春闘の賃上げ要請だけをしていても、消費購買力の上向きは限定的だ。(続)