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庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

消極的な取組に終始した航空業界の非合理な国産化。

2015-10-21 | バイオ燃料・バイオマス

将来とも、ジェット燃料を「石油由来の燃料」に依存したままでは、立ち行かなくなることは、航空会社も当然判っている。

現在は、ジェット燃料は精製された状態で、日本に輸入されているのが現状だ。これが、「バイオジェット燃料を混合した燃料」への切り替えを迫られても、海外から輸入すれば、今と同じで問題ではないと考えていた様だ。

この様な状況だから、経済産業省が国内企業にバイオ燃料の研究開発を要請して、補助金を用意しても、積極的に協力する企業はごくわずかである。

 

だが、2020年からは世界の航空会社では、「二酸化炭素の排出削減」の義務が生じるので、あらゆる努力を払って、「バイオジェット燃料」の実現を図っている。

その時になって、日本の航空会社が【海外のバイオジェット燃料の輸入】をしようとしても、日本に輸出する余裕はないと、断られる可能性が高い。

それで、今頃になって、慌てて国産化した「バイオジェット燃料の製造」を、駆け込み的に始めているわけである。

しかも、原料となる藻類から抽出される油は、ユーグレナ社の様に、アメリカで量産を始める状況にならざるを得ない。

 

結局のところ、原料はアメリカ産を輸入して、日本で「バイオジェット燃料」に精製する設備だけは、設置しておけば、日本が輸入出来ないことはない。

石油の輸入依存度を少しでも減少させる絶好の機会であるのに、藻類の培養設備や、油の抽出設備は海外に設置して、量産をするしか選択できない。

国産化の目標は、チグハグな政策の迷走によって、原料の油を輸入して「精製だけを国産化」する、非合理的な生産しか出来ない計画になってしまった。

原料になる藻類からの油を、早急に国産で可能にすることが急務である。

 

ところが、国内での藻類の培養を目指して研究開発している企業グループは、「光合成型藻類」の一種である「ボトリオコッカス」を採用している。

この藻類は、現在までに発見されている種類では、もっとも油脂の生成量が多いので、マスメヂィアにも取り上げられて、大きな話題になった。

しかし、日本の気象条件では、【藻類が必要とする太陽光が低いレベル】に留まり、オマケに曇天や雨天が多いので、培養事業は容易ではない。

その上に、開放型の培養池では他の微細植物も入り込み、培養を妨げてしまう。

それを防ぐために、培養池の水の酸性度を高くする必要があり経費がかかる。

それで、量産時のコスト予測は、大幅に目標を超えて難渋している様だ。(続)


国内産のバイオジェット燃料の実現までの障壁。 

2015-10-20 | バイオ燃料・バイオマス

日本のバイオ燃料のベンチャー企業である「(株)ユーグレナ」は、石垣島で「ミドリムシの培養の事業」を進めてきた。

創業してから10年近くが経過しているが、本格的な量産体制への投資は、日本ではなく、アメリカ本土への計画で進めている。

さらに、ミドリムシから搾った油は、原油と同様に、航空機燃料の成分に精製することが必要になる。

日本国内には、航空機燃料向けに「バイオジェット燃料に精製」する設備が無いので、国内での生産には、『精製設備』を建設する必要があった。

 

航空機業界では、2020年からは「二酸化炭素[CO2]の排出量」に上限を設ける行動計画を策定している。

それをクリアーするためには、ジェット燃料の「植物由来にバイオジェット燃料」をある割合で混合させる対策が、必須であるとされている。

つまり、日本の飛来する航空機のジェット燃料は、混合燃料に切り替わるのであるが、日本から離陸する航空機の燃料は、日本の空港に「混合燃料と備蓄して給油」しなければならなくなる。

国内にも「バイオジェット燃料の精製工場」を建設する必要が生じている。

 

日本の航空会社では、全日空が中心となって「アメリカの石油大手シェブロン」から技術供与を受けて、2018年に稼働する『精製設備の建設』に着手する。

この技術は、アメリカでは航空機向けのバイオ燃料精製プラントとして、すでに商業化を目指して進んでいる計画に倣って、基本設計の供与を受ける。

つまり、アメリカ発の技術を日本に移転する構図で、日本独自の技術開発は断念している状況である。

原料となる「ミドリムシの増殖事業」は、日本発のベンチャー事業であるが、量産規模の事業はアメリカ大陸でなければ、事業採算性が見込めない状況だ。

 

この様に、日本の脱石油燃料の政策は、民間企業の努力はあるものの、国策的なジェット燃料自給化の動きは、まったく出来ないでいる。

それは、原料の生産を「光合成型藻類の培養」に頼る方式を、補助金の対象にしたからである。

(株)ユーグレナ社は、ミドリムシの培養には、石垣島の様に太陽光の日照率が有利な地域で、実証的な事業を始めて、「培養ノウハウを蓄積」してきた。

その結果は、量産設備はアメリカの日照率の良い地域に移転する選択だ。(続)


日本の政府と燃料供給石油企業は経済成長の機会を傍観。

2015-10-19 | バイオ燃料・バイオマス

石油燃料の代替となる「バイオ燃料の普及促進」は、地球環境保全に貢献するのは当然であるが、実は経済成長を促進する効果も期待できるのだ。

欧州委員会が、「バイオ燃料の技術開発を支援」する制度として、2020年からの「バイオジェット燃料の混合義務付け」を決定したのも、その意図がある。

現在の技術レベルでは、「バイオジェット燃料」の量産価格は、通常の石油由来の「ジェット燃料」に比較して、2倍くらいの価格である。

これが、多少は安価に出来る様になっても、割高な「ジェット燃料」を、利用しようとする航空会社はいない。

 

そこで、市場競争に依存しない促進政策として、「一定割合のバイオジェット燃料を強制的に利用する制度」を決定した。

すると、航空会社はできるだけ安価に「バイオジェット燃料」を調達する必要に迫られて、関係する燃料企業に、早期の開発を要請する。

燃料企業は取引先の航空会社の強い依頼では、他の案件に先駆けて、研究開発への投資と量産設備の新規投資計画を進めなければならない。

それを見ている『新規参入意欲のある企業』も、研究開発と設備投資の計画に着手して、既存の燃料企業を追い越す勢いで、投資を始める。

 

この様に、将来に明確な目標を掲げれば、民間企業の意欲を引き出すことで、経済活動の活性化が図れるのである。

ところが日本では、航空会社の【脱石油燃料】の長期方針は、まったく心もとない状況で、政府が支援をしない限り、研究投資すらしようともしない。

そのぬるま湯に浸りっぱなしの、燃料会社は【欧州のバイオ燃料義務付け】には、外国企業の「バイオジェット燃料」の供給を受けるつもりである。

買取り価格が高騰しても、なすすべがない状況に追い込まれてしまいそうだ。

 

せっかくの「経済活性化のチャンス」であるのに、欧州の動きを見ているだけの「長期政策のビジョン」すらない日本政府は、早くも諦めの様相である。

安倍政権は、電力の脱石油の動きは、原子力依存のママに、「再生可能電力の最大限の促進」を謳っている。

しかし、輸送用燃料の脱石油に関しては、代替技術の開発促進は、名目だけの予算付けで、研究開発の支援をしているつもりであるが、実績はゼロに等しい。

欧州の様に、目標年限を決めて「利用義務付け制度」を導入する検討もしていないで、ただ、従来どうりの【研究助成の補助金政策】に、終止している。(続)


欧州では政府の義務付でバイオジェット燃料の普及に。

2015-10-18 | バイオ燃料・バイオマス

バイオジェット燃料の研究開発を促進する政策として、「ジェット燃料に賦課金を課す」ことで財源を生みだし、『優遇した価格で買取る制度』を説明した。

現実的に成果物(バイオジェット燃料)が供給された段階で、成果を生んだ企業に、上乗せ金額が支払われるので、無駄使いになることが全くない。

今までの様に、研究開発を申請した企業に補助金を支給するのでは、成果が確実に生まれてくるかは、保証の限りではない。

現実は大半の研究補助金は、無駄な研究投資に使われて、失敗に終わっている。

 

成果物に対し、支援の上乗せをする方法は、「再生可能電力の[FIT]制度」が、2012年7月から施行されて、読者もなじみがあり理解し易いであろう。

しかし未だに、成果に対する報酬制度が、効果的であるかを疑問視する専門家も多いので、別の【促進制度】の事例を紹介しておこう。

それは、期限を区切った『使用の義務付け制度』で、具体的には欧州委員会の決定によって、2020年から欧州に到着する航空機に課せられた制度である。

バイオジェット燃料を20%混合した燃料を使用することが義務とされ、それができない航空会社には、課徴金が課せられる。

 

要するに、「バイオジェット燃料の量産価格」が高い場合でも、2割の燃料はバイオ燃料を使用しなければならない規則である。

仮に、ジェット燃料の価格が100円/L.の場合に、「バイオジェット燃料価格」が【200円/L.】であったとしよう。

混合燃料の平均の燃料価格は、【120円/L.】になるので、ジェット機利用者は、その分の経費を負担することになる。

航空会社は、燃料費が上がると利用客が減るので、できるだけ安価に「バイオジェット燃料」を製造・供給できる企業を選定する努力を払う。

この要求にこたえられる企業は、シェアを伸ばして企業は成長する仕組みだ。

 

つまり、政府が強制的に使用量を増やす制度にすれば、何が何でも、早く安価な「バイオジェット燃料」を研究開発して、成功させるインセンティブが働く。

欧州委員会では、この効果を狙って「世界での先進的なバイオ燃料企業」を、育成する方針なのである。

しかし、欧州諸国に在籍している企業だけが、成功して勝ち残るわけではない。

アメリカ企業や、その他のバイオジェット燃料の量産に適した地域での、「新興企業が勝ち残る」可能性も大きい。

それでも、あえて脱石油を加速するのだ。(続)


目標を明確にして挑戦する事業者の成果物の買取優遇で。

2015-10-17 | バイオ燃料・バイオマス

政府が脱石油燃料の開発促進を、10年以上も前から看板政策に掲げてきたが、なんにも成果を生み出せないで、迷走している原因は、推測ができるだろう。

それは【達成すべき目標を曖昧なまま】にして、各省庁の担当部門が、予算獲得の手段にしてしまっているからである。

中央の官僚たちは、認められた大義名分のある「政策課題」に、自分たちの権益が及ぶ方法で、予算を獲得するのが最優先の目標になっている。

その政策課題が求める「成果の目標」が、アイマイであるから、政策の中身の適否はあまり「真剣に検討」をしないで、見栄えの良い課題に補助金をつける。

 

こうして、バイオ燃料の政策的な研究支援は、自動車用の代替燃料(見栄えが良い)を政策課題に掲げた。

先行国でのエタノールの量産化(ブラジルで実績)が、もっとも実用化が近いとして、サトウキビの栽培が日本には適地もないのに、税金を投入した。

沖縄でのサトウキビの栽培による砂糖事業は、補助金なしでは成り立たない実情を無視して、【補助金をつければ研究開発は進む】だろう、との甘い想定だ。

原料をお米にしてみたり、木質材からエタノールと製造するなど、事業性のまったく見えない研究に、予算獲得の目標だけで、研究補助金を出し続けた。

 

中央官庁の官僚たちは、植物栽培や製造技術もしらず、事業採算性の想定も出来ないので、ただ、補助金を申請してくる事業者の資料を見るだけである。

申請資料の出来栄えが、補助金合格の条件とは言わないが、とにかく、失敗しても責任は補助金の申請者にあるから、【真剣に検討】はしないで済む。

そのうち、どこかの事業者が成果を出せば、自分たちの手柄として、予算獲得の増額の説明に使える、と期待だけは、している様だ。

技術開発や新規事業の開発は、官庁が考えるほど{容易な挑戦課題}ではない。

 

そこで、このブログで何度も説明した様に、補助金ではなく、『成果物を優遇した固定価格で買取り』する制度が、研究開発の促進に効果的なのである。

なぜ、補助金政策よりも効果的かは、すぐに理解ができるだろう。

目標の到達点{量産価格と供給量の義務}を、明確に提示して、この目標に向けて、研究開発した事業体から、優遇価格で買取る契約をする。

事業者を公募して、「上位の3~5社」と、研究開発の契約を結ぶのである。

「バイオジェット燃料事業」の場合は、市場のジェット燃料価格が100円/L.の場合に、200円/L.で10年間の買取り契約をする仕組みである。(続)


政治家の主導でバイオジェット燃料の量産目標を立てよ。

2015-10-16 | バイオ燃料・バイオマス

脱石油燃料の政策は、バイオ燃料を国産資源活用で、実現するのが目標である。

バイオ燃料のなかでも、「バイオジェット燃料」を最優先で開発することが、日本の消費者の利益にかなうのである。

しかし、日本政府はなかなか方針が定まらずに、この10年間くらいは、迷走したままで、成果を生まない【空白の10年間】であった。

経済産業省は、何も方針を決めることも出来ないで、時間を浪費しただけだ。

 

バイオ燃料による石油の代替策としては、10年前には自動車用のガソリンの代替燃料になる【植物由来のエタノール】が注目されていた。

しかし、エタノールは、ガソリンに比べて発熱量が8割くらいに低下する上に、吸湿して水分が悪影響を及ぼす。

その様な欠点があるので、混合するにしても5~10%程度を許容するのが限度である。

エコ燃料とした発売されたが、消費者の支持は得られずに、石油業界も商品の扱いには冷淡であったので、普及はほとんど進まない状態だ。

 

その上に、経済産業省、農水省、環境省が、補助金を出して、国内の植物資源を原料にしたエタノール製造をバラバラに研究開発の支援をしてきた。

しかし、どの研究も「量産コストをガソリン並」にできないで終わっている。

そのために、普及目標量を「ブラジルから輸入するエタノール」で埋め合わせする様な、おかしな政策になってしまった。

石油の輸入に依存しているのを、ブラジルからのエタノール輸入に切り替えているだけで、将来の展望もないままに、漂流してしまった。

 

まず最優先すべきは、「ジェット燃料」の転換である。

欧州諸国への[航空機の乗り入れ]には、2020年には、「ジェット燃料」を、植物由来のバイオジェット燃料」を、混合する燃料の使用が義務化されている。

この燃料を、日本国内で生産できない場合は、海外産の「バイオジェット燃料」を、大量に輸入しなければならなくなる。

しかも、現在の様な取組では、かなり割高の【燃料費用の負担】が必要になり、輸入に依存する羽目に陥り、貿易赤字の増加になってしまう。

航空会社は、燃料を製造する技術も事業も、見通しもつかないまま、石油企業の動きを傍観するだけで、官庁の動きに依存したままである。

政治主導が今こそ必要で、政府が普及目標を立てて先頭に立つべき段階だ。(続)


藻類からバイオ燃料を製造する一連の技術開発を具体化。

2015-10-15 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料の製造技術の研究開発では、『従属栄養型藻類』の生成する油脂を原材料にする方法が、研究段階では成功している。

これに着目して、支援する必要がある「技術分野は多岐に渡る」ので、読者の判り易い様に、課題別の研究開発を上げて、おさらいをしておきたい。

まず『従属栄養型藻類』には、現在の第一候補は、「オーランチオキトリウム属」の藻類で、この原種は、日本で発見されている。

この藻類を、さらに品種改良をして、「より効率よく油脂を体内に生成する」品種を創りだす研究が重要になる。

 

次に、油脂を大量に生成する品種が、摂取するエサを、選定する必要があるが、日本の近海で栽培できる「大型コンブ」に含まれる養分が適している。

そこでまずは、この種類の大型コンブを栽培する技術の改善が必要である。

この技術は戦前の日本での研究が積み重ねられて、世界で最も進歩していた。

それが、戦前の満州国時代に中国沿岸での栽培に技術移転したので、今では世界一の生産地帯は、中国になってしまった。

この研究の更なる発展を、日本で再開して重点化すれば、海洋産業の活性化にも貢献するキッカケになるであろう。

 

この大型コンブから、養分を抽出して、『従属栄養型藻類』のエサを製造する技術は、日本の化学工業、食品工業の応用研究で、重点的に実行可能である。

今の段階から研究者を育成し、量産技術の開発を進めれば、多くの発明が生まれて特許化できて、日本の知的財産になる。

ベースとなる技術は世界の一流レベルであるから、研究技術者に明確な目標を提示すれば、短期間でも大きな成果を生みだす可能性は大きい。

大量生産の目標計画を適切に掲げて、設備の開発研究を惜しまずに進めれば、量産コストの低減も実現出来る。

 

そして、藻類に餌を与えて油脂を体内生成する『増殖設備の開発』が、本格的に取り組まれる。

この設備は、太陽光を受光する必要はないので、増殖に最適なシステムに設定すれば良いので、大きな敷地面積を必要としない。

日本の様に土地利用の経費が高くても、量産コストを引き下げる努力が成果を生みだし、石油由来の燃料を凌駕する、量産コストの実現が可能になる。

経済産業省や民間企業の経営者には、この実現可能性が理解できる筈だが。(続)


研究開発の重点化を図る段階では日本発を重視をすべき。

2015-10-14 | バイオ燃料・バイオマス

日本の将来のエネルギー供給の【自給率向上】には、誰しも異論は出ないが、どの様な技術と事業化で、具体化するかは、全く迷走している。

それは、大手企業や中央官庁は、すぐに欧米の技術動向が気になって、その後追い的な研究開発に、人材と研究資金を回してしまうからである。

前回までに、このブログでは、『従属栄養型藻類』の増殖事業によって、「バイオジェット燃料の事業化」の促進を図るべきだ、と提案した。

しかし、この技術の内容を理解している関係者は、ホンの一部にしかいいない。

 

明治維新以来の悪弊で、何かと言うと【欧米の技術導入をありがたがる習性】が、日本人の身に浸みこんでしまっている。

日本で発案されて、日本のローカルな地域で研究されている技術は、軽視されがちになって、研究支援や人材の投入には、力を注がない傾向が強い。

欧米発の【光合成型藻類の栽培】による「バイオ燃料事業化」には、国や大手企業の支援が厚くなっている。

しかし、『従属栄養型藻類』の増殖事業化には、理解が進まないので、支援は薄いままで、せっかくの熱意とアイデアが生かされていない。

 

欧米技術の崇拝は、もうやめてもらいたいのだが、意識転換には国や有識者の率先垂範が実施されるべきである。

工業製品の分野では、どうしても明治維新以来の欧米に対する後進意識が、習い性になって意識転換を邪魔している。

だが、最近では日本発の文化的な分野や、日本古来の食文化などが、世界から高く評価され始めている。

和食の分野では、地域の知恵と伝統によって、欧米社会では追従できないレベルに達して、今では各国に和食文化が広がり始めている。

 

エネルギー技術の分野でも、太陽光発電の技術開発では、世界の先端を進んでいたのだが、経済産業省の大きな判断ミスで、産業化を失速させてしまった。

バイオ燃料の技術開発では、世界でもまだ未発達の技術段階にある。

日本で発想されて、国内資源を利用できる『従属栄養型藻類』の増殖で、バイオ燃料の産業化を、今こそ最重点において支援すれば、トップに躍り出られる。

欧米技術に対する劣等意識は、日本を活性化するには、ブレーキにしかならないのだ。

中央官庁と国政の責任を負う政治家は、日本発の分野を最重視すべきだ。(続)


日本の長期的なエネルギー自給率向上に貢献する政策を。

2015-10-13 | バイオ燃料・バイオマス

【光合成型藻類の栽培】による「バイオジェット燃料生産」について、どの様に評価するのが良いか、意見が分かれるところである。

筆者は、日本に技術導入をして工場建設して生産を開始しても、同様の技術を日照率の良い外国(オーストラリアなど)での生産には、負けると判断した。

量産コストがどうしても、割高になるのは、目に見えているからである。

例えば、「バイオジェット燃料」のオーストラリアでの量産価格が[80円/L]で実現したと想定してみよう。

その場合に同様の技術を日本に工場設置して量産すると、[80円/L]×1.4≒[112円/L]が、日本での量産価格になる。

 

その時期にジェット燃料価格が、[100円/L]であるとして話を進めると、オーストラリアで航空会社に「バイオジェット燃料」を販売すれば、利益が出る。

しかし、同じ技術で【日本で生産したバイオジェット燃料】は[112円/L]になってしまうので、赤字になってしまう。

太陽光の日照率の差異が1.1倍程度であるならば、[88円/L]程度に収まるので、採算性は成り立つのだが、それは無理な話である。

現実には、オーストラリアと日本の日照率の差異は、1.4倍も違いが自然の気候条件であり、企業努力や技術進歩で縮小することは不可能なのである。

 

日本で生産しても利益が出る量産価格は、[100円/L]以下が必須で、企業努力で引き下げができた場合には、同じ手法と技術で、オーストラリア生産品は、[72円/L]まで、引き下げられる。

同じ努力を投入し、同じ投資をするならば、日本よりも有利な地域に計画するのが、グローバル化した世界の潮流である。

市場競争を前提として「投下資本利益率」を重視する世界では、「バイオジェット燃料の量産」では、【光合成型藻類の栽培】の方法は、日本では成功しない。

 

いや、それでも日本では、「バイオジェット燃料の国産化」が、長期の国策として必要になっている、との意見が強くなって行くであろう。

その答えは、このブログで説明してきた様に、『従属栄養型藻類の増殖』事業の技術開発で、バイオジェット燃料の量産価格[100円/L]を達成することだ。

これには、海外での開発技術を導入する様な、安直な方法では実現しない。

国内産業として技術育成策を、計画的に実行しなければ実現できないのである。

その政策は、『バイオジェット燃料の固定価格買取り制度』の実現である。(続)


外国産のバイオ燃料に依存する将来展望で良しとするか。

2015-10-12 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料の生産の元になる油脂を、「光合成型藻類の栽培」によって大量生産する場合は、太陽光の日照率が大きく影響することは理解されたでしょう。

つまり、日本で生産して市場に供給するよりも、日照率の良好な外国の地域に工場を建設して大量生産する計画が、事業採算面で有利である。

だが読者の中には、それは「太陽光発電も日照率に影響される」と言われるひとがいて、日本でも事業採算が成り立っているではないか、と言うでしょう。

その場合は、「再生可能電力」発電事業と「バイオ燃料」の生産では、明らかに輸送の面で比較ができないことを、着目しなければならない。

 

電力生産の場合には、日本の様な島国では、外国から電力を輸入することはできないので、同じ様な気象条件の日本国内での競争になる。

日照率の良い地域と悪い地域の差異は、せいぜい、1.1倍程度しか違わない。

だから、日本国内での電力市場での競争力は、1割程度の差しか生まれないのだ。

ところが、太陽光発電設備の主要な部品である「太陽光パネル」の生産は、中国の様に電力費用が安く、人件費も土地代の安い国で生産している。

完成品を海上輸送してでも、日本製よりも安い「太陽光パネル」を、日本市場に供給可能なので、そのうち、日本工場での生産品を駆逐してしまうだろう。

 

バイオ燃料の場合には、日照率が有利な地域、例えば、「オーストラリア」の日照率の良い地域に「バイオ燃料工場」を建設すれば、量産コストを低減できる。

完成したバイオ燃料を、「日本に輸送して、日本製よりもは安い価格で供給」することが可能である。

それを承知でも、日本国内工場の建設にまい進した場合には、【外国生産のバイオ燃料】の輸入に関税をかけるしか、守れなくなる。

[TPP交渉]の経緯を見るまでもなく、これから新たな分野の国内産業保護の関税をかけることは期待できないので、自由市場競争になるのは必須だ。

 

最終的には、外国生まれの「光合成型藻類栽培のバイオ燃料生産」は、輸入品が日本市場で勝ち残るのである。

これは、今回の紹介した「イスラエル企業の新開発藻類バイオ燃料」の生産技術だけに限らない。

その様な理由で「光合成型藻類」は、エネルギー自給率の改善には貢献しない。

化石燃料由来(石油)のエネルギー輸入は減るので、[CO2排出]削減には貢献できるので、それで良いとするならば、日本人がお人好しすぎないか。(続)


脱石油のバイオ燃料製造技術は、海外企業の開発では。

2015-10-11 | バイオ燃料・バイオマス

エネルギーの自給率を高めるために、石油の代替にできるバイオ燃料の国内生産を実現する。

その技術は、日本の自前の技術にこだわる必要はないので、海外の企業が開発して方法を技術導入するのは構わない。

そこで、最近の情報で「イスラエルの企業が藻の栽培」の方法で、成功したと公表されている技術を、紹介しておこう。

この技術は特許を出願していて、技術料を支払うことで、導入は可能である。

 

イスラエルの[UniVerve社]は、藻の栽培とその化学物質の濃縮、分離を一貫処理できる技術プロセスを開発した。

この処理の過程で、食糧、資料、バイオ燃料などが製造され、現在の原油と同等の量産コストで可能であるとしている。

コスト予測では、1バレル50ドル以内で生産できるとして、革新的な技術であることをアピールしている。

「藻の栽培でバイオ燃料の原料の生成」に成功するには、栽培面積当たりで「最高の収率、最低のコスト」の実現である、と語っている。

 

現在は、アメリカ、ヨーロッパ、中国の企業と基本合意書を交わして、技術移転の計画を進めている。

確かの「藻の栽培で生成された油脂」を、有価物のバイオ燃料や各種のバイオ物質を精製する技術は、海外からの移転が可能である。

しかし、大元の【光合成による藻の栽培】は、太陽光の日照率に影響されることを忘れてはいけない。

イスラエルは、地中海に面した太陽光の恵まれた地域であり、日本の日照率に対して1.4倍程度の有利さがある。

 

イスラエルでは本格的な工場を建設中で、藻の栽培とバイオ燃料の量産コストが実証される予定だが、規模拡大の段階でコストが1.2倍程度に上昇する。

その技術を日本に工場建設した場合を想定すると、日照率が7割程度に低下するので、量産コストは1.4倍に上昇するだろう。

両方の要因を勘案すれば、バイオ燃料の量産コストは、1.85倍に上昇するのは確実で、日本での生産は割高になるのは覚悟しなければならない。

それでも、アメリカで始めたから、技術内容は信用できると思いこんで、技術導入に紛争するベンチャー企業が飛び込んで行くのが日本である。(続)


石油依存の不安定状態からバイオ燃料の輸入依存に転換か。

2015-10-06 | バイオ燃料・バイオマス

輸送用燃料の脱石油の動きは、日本政府や石油業界に任せていては、今後の10年、20年経っても、まともな量産品が開発出来ない。

アメリカや欧州諸国の「バイオジェット燃料」、「バイオディーゼル燃料」の開発技術が進んで、量産品を輸入する段階まで、このママで行くつもりの様だ。

その時期になってから、やっと、石油の輸入依存が少しは緩和される様に、アメリカ産「バイオジェット燃料」を輸入するつもりの算段であろう。

「バイオディーゼル燃料」についても、ヨーロッパの技術開発の成果が見えてから、輸入することしか、頭にはない様である。

 

だが石油資源は、政情が不安定な中東地区から大半を輸入しているので、石油や天然ガス輸入が途絶える事態が想定される。

安定した国からの輸入(アメリカ、ヨーロッパ諸国)に切り替える意義はあるが、国内生産の比率を上げる様にしないと、本当の安全保障にならない。

アメリカの石油自給率は、39%でオイルシェールによる開発が進んで、今では50%を超える勢いである。

安全保障の戦略上は、100%超えるまでは、石油代替のバイオ燃料を海外に輸出することはないと想定した方が妥当である。

 

ヨーロッパ諸国の石油自給率は、ドイツが4%、フランスが2%である。

今から50年間は、石油代替のバイオ燃料製造をしても、輸出は絶対にしない。

ということは、安定した国からのバイオ燃料輸入はあり得ない、と見るべきだ。

つまり、バイオ燃料の原料となる作物を大量に栽培できる国に、「バイオ燃料の製造工場」を設置して、そこからの輸入に依存することになる。

この地域がどこになるかは、今のところ定かではないが、安定した地域になるとは限らないで、局地紛争が起きる可能性は十分に想定される。

 

つまり、石油の代替燃料が開発されても、海外に生産工場を設置する構想では、不安定な中東地域から、少しは不安の少ない地域からの輸入依存になる。

長期間をかけて、安心度が少し向上する様な「エネルギー戦略」を立てるのは、賢い戦略とは言えない。

これから本格化する「脱石油燃料戦略」を構想するならば、原料の段階から国内で生産されて、一貫して「国内に製造工場を設置」するのがベストである。

それには、日本の国内で大量に入手できる「原料作物(植物)の栽培計画」が、基盤になるのだ。

日本の近海で栽培できる「大型海藻」は第一候補である。(続)


輸送用エネルギー自給率の改善に最も不熱心な国は日本。

2015-10-05 | バイオ燃料・バイオマス

日本の輸送用機器の燃料は、大半が石油由来で「原油自給率」は0%である。

一部の自動車では、天然ガスを使用しているが、この自給率もわずか4%で、国際紛争でも起きれば、たちまち、乗用車、トラック、船舶も停止してしまう。

ジェット機も国内線は運航停止になり、代替の移動手段(鉄道など)に、依存せざるを得ない。

国際線も、日本に来航する場合は良くても、かえりの燃料が補給出来ないから、日本への航空便も休止になるであろう。

 

万が一の事態がおきても、国の社会活動、経済活動の最低限を確保出来ることが、中央政府、自治体の最大の責任である。

石油系燃料の輸入が途絶える事態が発生した場合には、あらゆる努力を払って、対応策を講じなければならない。

現在は、石油ショック時の教訓によって、石油系企業に「90日間以上の備蓄」を義務付けているが、異常事態が90日以内に解決するとは限らない。

それ以上に長引いた場合は、日本社会の混乱は計り知れない状態になる。

 

安倍政権は、中東、イランからの石油輸入が途絶える様な「ホルムズ海峡の機雷封鎖」などの事例を上げて、集団的自衛権行使の安保法案を強行採決した。

それほどに、石油の輸入確保は、日本の死活問題につながるとの危機感を持っているのに、石油燃料の代替技術の開発には、まったく真剣さがない。

異常事態が起きてから、「石油代替燃料の開発」に取組んでも、まったく間に合わないのは明白である。

これが10%程度でも自給率向上の『バイオ燃料』の製造実績があれば、大増産の支援をすることで、備蓄石油の枯渇期限を引き延ばすことが可能である。

 

自衛隊を紛争に巻き込まれる危険性を覚悟する決断をする割には、日本の長期的なエネルギー確保と自給率の大幅改善策を、軽視し過ぎている。

まずは、量産コストが少し高い段階でも良いから、数%程度の「バイオ燃料の義務付け」を実施すべきである。

自動車用としては、「エタノール燃料」の混合ガソリン[E10](10%混合)を、普及させることが実施されている。

航空機燃料では、何も実行していないので、「ジェット燃料賦課金制度」を早急に実現し、その財源を利用して、バイオジェット燃料製造を進めるべきだ。

生産実績をかさね、量産コストの評価しながら、技術革新を進めるのだ。(続)


華やかで表面的な話題ばかりを追いかける日本の実情。

2015-10-04 | バイオ燃料・バイオマス

「光合成型藻類」が生成する油脂を原料として、バイオ燃料を大量生産する場合には、「広い土地面積と有利な日照率」が必須の条件である。

これを軽視して、技術力さえあれば「大量生産は可能」だと信じて、研究開発に大金を投じても、国内生産を継続することは無理になる。

途中の段階で、【有利な地域に生産拠点】を移して、その国の利益になる様な制度も元に生産する運命にある。

日本の公的な資金を使って開発していても、日本の国民の利益につながるとは限らない状況が、起きるリスクは付きまとうのだ。

 

それ故に、国の重点施策としては、国情に適した『従属栄養型藻類』が生成した油脂を原料に、バイオジェット燃料の大量生産の実現を実施すべきだ。

その第一段階に、東北大学、筑波大学、仙台市の共同プロジェクトが、2012年から取り組んだ実験に成果を生んだことは、注目すべきことである。

しかし、マスメディアの扱い方は、『脱石油のバイオジェット燃料』の華やかな話題ばかりに視線が注がれて、それを実現する「地道な研究成果」を扱わない。

メディアは、表目的な目立つ話題ばかりを優先するので、【「下水処理の有益物」を利用したバイオ燃料】には、関心をよせないのだ。

 

また、多くの人が食品廃棄物に関係しているのだが、あと始末には無頓着で、「有益な資源」を再利用しての、「従属栄養型藻類」の研究開発には無関心だ。

これを、補助金で支援して「バイオ燃料製造」の原料に利用する事業化に、開発資金を投じる企業も、見あたらないのが現状である。

20年以上も前から、「廃食油の収集と精製」で、「バイオィディーゼル燃料」に製造する事業が実験的に進められている。

しかし、食品関係の廃棄物を収集するシステムがないので、収集コストの削減ができない状況では、普及拡大がむずかしい。

 

そこで、このブログで紹介してきた「大型海藻類の大量栽培」によって、『従属栄養型藻類』の増殖に必要なエサを供給する仕組みが、期待されるのだ。

家畜類(牛、豚、鶏など)の酪農では、大量にトウモロコシなどの穀物類をエサに与えるのは、常識である。

この方法にならって、『従属栄養型藻類』の増殖事業に、大量に栽培した「大型海藻類」から製造したエサを与えることで、バイオ燃料になる油脂を生産する。

太陽光エネルギーを必要としないので、設備の土地面積は少なくて済む。(続)


財源創出の次は国内でのバイオジェット燃料支援策を。

2015-10-03 | バイオ燃料・バイオマス

ジェット燃料の新技術開発促進には、公的な支援策が必要であり、その政策費用の財源は、「ジェット機利用者」に負担してもらうことは理解されたでしょう。

では、どの様な方法で製造される「バイオジェット燃料技術」を、支援すればよいのか、その説明が必要ではないか、との要求が出てくるでしょう。

それは、「日本でのバイオジェット燃料製造方法」は、『従属栄養型藻類』の大量増殖によって、藻類が体内に生成するオイルを原料にする方法です。

このブログで、繰り返して説明してきましたが、何故、それに重点にするのか、理由がまだ納得がいかない人も多いでしょう。

 

そこで、今までの石油代替燃料の開発と代表的な方法の経緯を整理して、要点の説明を加えて理解の助けにします。

まず初めに、石油代替燃料の製造が大規模に進められたのは、ブラジルのサトウキビから作る「バイオエタノール」です。

お酒を作る発酵の方法で、砂糖きびの糖分をアルコールにする方法で、今や大量に生産されて、自動車用燃料として、ブラジルでは普及しています。

これにならって、アメリカでは、トウモロコシから作る{コーンエタノール}が、一部で普及が進んでいる。

 

しかし、今以上の増産をすると、食糧の栽培と競合するので、途中から促進を止めて、いまでは、多年生の草類から「セルロース成分を自動車燃料化」する研究開発が支援されている。

この研究は2005年頃からアメリカ政府は力を入れたが、有効な大量生産技術の見通しは、まだついていない状態で、今後も量産コスト低減は難しい。

そこで、アメリカ政府は、「光合成する藻類が体内に生成する油脂」成分を原料にする方法に、方針を転換している。

2009年頃からは、エクソンモービル社などの大手も、研究を継続している。

 

アメリカの様に、太陽光の恩恵を有利に得られる「大陸国家」であれば、この「光合成型藻類」の品種改良で、量産コストの引き下げが可能であろう。

しかし、日本の様に太陽光を受ける土地面積が限られて、【日照率が低い地域】での事業は、量産コスト削減が目標に届かない懸念がおおきい。

日本での「藻類からのバイオ燃料」を研究開発している民間企業も、最終的には日本国内での生産は、諦めざるを得ない状態になるだろう。

海外に生産移転では、エネルギー自給率の改善には貢献出来ないのである。(続)