いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

10年前のペルー事件

2007年05月16日 10時44分45秒 | ハマ風は踊る
 平成9年4月24日。127日目にして、ペルーの日本大使館公邸占拠事件は、特殊部隊による見事な救出作戦で解決した。日本政府は「人命尊重」「速やかな平和的解決」「対話路線」を唱えていたが、具体的解決策の提示はなかったようである。
 対する、フジモリ大統領は、「国民が安全に住めるようにする義務がある」として、テロには屈しないという大原則のもと、断固とした決断力、陣頭指揮の行動力を持って実行し解決した。また、日本政府に連絡しなかったのは『国家』の安全を考慮してのことであると発言された。この事件(戦争)処理を通して、両国の「国家観」の違いを浮き彫りにした。フジモリ大統領は、解放された人達の先頭に立ち、バスに乗りながらペルー国旗を掲げ、活躍した特殊部隊は大統領の前で国家を歌った。
 きしくも、日本の政治家が、その相違するところを示してくれた。それは、「保・保」の動きを批判した加藤紘一自民党幹事長の発言であった。
 曰く「中曽根さんたちとは、世代が違い、使う言葉の好みが違う」「中曽根さんたちは、国家と言いたくなるし、わたしたちは国民といいたくなる。先に国民の生活や幸せを考えていくのと、まず国家があることを前提に、個人の意見を抑えるという、ニュアンスの差だ」と。色々な意味で、大勲位菊花大綬章を受章された中曽根康弘元首相は立派である。
 平成9年4月12日付読売新聞「地球を読む」のコラムで、中曽根元総理の次のような考え方が掲載されていた。
「行政改革以上に大事なことは教育改革である。今日諸般の改革をしなければならなくなった根本は、戦後教育の誤りである。その教育改革の一番基本は、教育基本法の改正である。その中身を見ると、人類、平和、自由、民主主義という言葉はあるが、国家、民族、文化、歴史、家庭という言葉はない。」と。そして、「最近の若い政治家の著書を見ると、共同体という概念が希薄である。従って、歴史、伝統、文化に対する思いが少ない」と。また、首相当時、フランスのミッテラン大統領と約2時間、食事をはさんで濃密な東西の文化談義を行ったことが報道された。
 そこで思い出されるのは、平成7年に村山首相、河野外相、橋本通産相(元首相)とシラク仏大統領との昼食会で、親日家の大統領がお三方を相手に日本の古代史から蒙古来襲、ジンギスカンと義経の関係、芭蕉没後300年祭など日本文化を話題にした。
 この時、大統領と対等にやりあったのは、橋本通産相だけだったとか。村山さんも河野さんも黙して語らずだったそうです(パリ支局山口昌子記者の取材)。
 ところで中曽根元首相は、これから日本が持つべき哲学として、
  第一に自然主義…自然を尊び、自然と共存
  第二は歴史主義…民族と伝統と歴史を大事に
  第三は科学主義…合理主義の保持
  第四は宇宙主義…命の中身は、DNA等を通じ先祖代々さかのぼる無限の彼方から与えられた。無限に前進するところに各々の目標が生まれ、理想や希望が発生すると説いている。
 平成9年は日本国憲法制定から50年。地球上には今、191ヶ国が存在している。そのうち成文憲法を持たない9ヶ国を除く182ヶ国中、一言一句改正されていないのは日本国憲法だけであることから実質世界最古の憲法となる。因みに世界で最も古い1787年のアメリカ合衆国憲法は18回、スイス119回、ノルウェーは139回も改正している。日本と同様の敗戦国ドイツは43回、イタリアも6回改正している。
「憲法改正の是非について」衆参両院議員752人中465人のアンケート結果は、是とするものが自民党76%・民主党26%・公明党44%などで若い世代ほど改憲志向が強いと分析していた。
 今回の事件解決までの経緯を見て、日本にもペルー大統領のように、正義のためには己を捨てる覚悟を持った政治家の出現を期待したい。平和ボケの終焉を願う!

 以上の文章は平成9年に「ペルー日本大使公邸占拠事件」に触発されて書き留めていたものである。
 10年後のこの平成19年はどのような状況下にあるだろうか。
平成19年5月14日に憲法改正手続きを定める「国民投票法」が成立した。そして「ちょんまげを結い、とてつもなく太った男たちの戦いのどこに魅力があるのか。知的なスポーツとはとても言えない」と相撲を酷評したサルコジ氏が仏大統領として近く就任する。慰安婦問題の当事者河野洋平氏は衆議院議長にいるこの異常さであり、安倍晋三首相が靖国神社への供物奉納を「出したか出さないかは申し上げない」の発言に「これだけ大きな政治問題で行動したときに言わないのはおかしい」などとどこの国に顔を向けているのかわからない幼児性丸出しの加藤紘一氏を中曽根元総理(89歳)の言動と比較すればそのことは一目瞭然である。そして、政治理念が見られぬ新YKK(山崎拓・加藤紘一・古賀誠)と呼んで喜んでいる旧態依然とした政治姿勢の持ち主たちには呆れる。
 フジモリ元ペルー大統領は、国へ戻れない状況にある。この10年で大きく変わったもの変化しないものそれぞれあり”祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり”といずれにしてもこの世の中何らかの変化を水の流れのごとく移り変わっていく。
 同じ変化をするならば、良い方向に変わって行きたいものである。その意味でも今後の安倍晋三総理のリーダーシップに日本の未来と前進に期待するところ大である。
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