神経内科に通院している79歳男性が発熱・関節痛で外来を受診した。担当している神経内科医が主治医となって入院させていた。
咳・痰はなかったが、胸部X線・CTで右肺炎を認めた。抗菌薬の投与を開始したが、発熱(38~39℃)が続いて、炎症反応は横ばいだった(CRP10)。抗菌薬はスルペラゾン(スルバシリンABPC/SBTではない)を使用していたが、メロペネムに変更した。発熱が続いて、再度検査するとCRP22と上昇していた。
関節痛も続いていた。発熱・炎症反応上昇は肺炎が軽快しないためか、関節炎の影響かと悩んだらしく、内科病棟に相談に来た。ごく軽度の腎障害(血清クレアチニン1.0)がもともとあるが、腎前性の要素が加わって3.0に上昇していた。入院後に点滴をして、血清クレアチニンは1.84まで改善していたが、NSAIDは投与しにくい。
胸部X線を比較すると、少なくとも悪化はしていない。全身の関節痛と記載されていたが、実際は炎症は右足関節と右膝関節で、左膝関節は軽度だった。肩・肘・手関節の症状はない。肺炎に伴って関節炎(偽痛風)が起きていると思われた。
腎障害がなければNSAID内服(セレコックスを使っている)だが、絶対ダメではないだろうが、やはり使い難い。ステロイドを使用してみることにした(主治医もそのつもりだったらしく、すぐに同意された)。
「すぐに使えるリウマチ・膠原病診療マニュアル」羊土社に、偽痛風で腎機能が悪くてNSAIDを使用できない時には、ステロイドを使用するとある。プレドニン20mg/日を2~3日、10mg/日を2~3日、5mg/日を2~3日、2.5mg/日を2~3日で、その後中止とするが、「あくまで一例で、裏付ける文献はない」そうだ。
プレドニン20mg/日を1回使用すると翌日には平熱になって、食欲も改善していた。主治医は大喜びだったが、ステロイドなので解熱はするから安心はできない。その後は発熱はなく、炎症反応はCRP10まですぐに低下して、関節炎の所見も軽快した。肺炎の悪化もないようだ。偽痛風の治療でステロイドを使用したことは自分ではなかったかもしれないので(記憶にない)、いい経験にはなった。
サイエンス漢方の井齋偉矢先生によれば、「肺炎に治療に抗菌薬だけ使用するのは抗菌治療を行ってるのみで、抗炎症治療は行っていない。抗炎症は患者さん任せになっている。抗炎症治療を西洋薬で行うとすればステロイドしかない。それは抗菌治療にはマイナスになる。そこで肺炎の抗炎症治療として小柴胡湯を抗菌薬と併用で使用すると、みるみる肺炎像が改善する。」そうだ。