なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

食道癌ー頸部リンパ節転移

2014年04月15日 | Weblog

 内科クリニックから左頸部リンパ節腫脹の66歳男性が紹介されてきた。先週電話があって、大学病院でピック病と診断されていること、理解力が低下していて検査できるかどうかわからないことを伝えてきた。今日外来で診ると、確かに弾性硬の腫瘤が触知できた。鶏卵を半分に切ったような大きさだった。これは癌の転移だ。胸部X線で気管が右側に圧排されている。1か月前に腫瘤に気づいたそうだ。同じころから、嚥下障害があって、体重が5kgは減少している。

 頸部から腹部まで造影CTを撮った。胸部食道に腫瘤があって、周囲に浸潤している。食道癌だった。そのまま上部消化管内視鏡検査を行うことにした。どうしても口を空けてくれないので、経鼻で行うことにした、内視鏡室の看護師さんが3人で抑えてくれた。当初は奇声を3~4回発したが、その後は「やめましょう、やめましょう」と繰り返して言っていた。食道内に粘液・唾液・食残があってなかなか視野がとれなかった。消化器科医がどれどれ代わりましょうと診てくれた。ぐっと左側臥位にして吸引を続けると、ぽっかりと視野がとれた。門歯列から30~40cmの10cmにわたって食道癌があり、全周性に狭窄をきたしていた。経鼻のNだったのでなんとか胃内まで内視鏡は進んだ。食道の生検をして終了した。

 腹部CTで頸部、胸部、腹部にリンパ節転移がある。肺血管に接して浸潤しているように見える。手術適応はない。といって、放射線療法も抗癌剤も難しいだろう。緩和ケアとしての入院も、点滴をすぐに抜去してしまってコミュニケーションがとれないので、今の段階では難しい。このまま自宅で過ごせるだけ過ごして、介護困難になったり、食事摂取がまったくできなくなった時に入院を苦慮するのはどうかと家族に提案した。希望があれば、がんセンターのセカンドオピニオン外来に紹介することもできますと伝えた。生検の結果をみることもあり、明後日妻に来てもらって、家族の話し合いの結果を教えてもらうことにした。

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