なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

GAVE

2022年12月15日 | Weblog

 先週木曜日の夕方に、めまい・ふらつきの74歳男性の救急搬入依頼がきた。救急当番は外科医(大学病院外科からバイト)だった。検査をオーダーして、その日当直だった常勤医に診てほしいと依頼した。

 当直医は皮膚科だった。検査の結果、Hb6g/dl台の貧血があり、胸腹部CTで腹水貯留を認めた。貧血は小球性貧血(鉄欠乏性貧血で、吐血・下血がないことから緊急性はなさそうだった)内科当番の先生に連絡して、その日は診てくれた。

 翌日内科医の担当となった。腹部CTで胃前庭部の壁肥厚があり、胃癌疑いという放射線科の読影レポートだった(大学病院の遠隔診断)。(たぶん腹水は癌性腹膜炎と判断したのだろう)

 今週この患者さんが入院していたことに気づいて、経過をチェックした。入院後の貧血の進行はなく、程度は横ばいだった。担当医は、水曜日に上部消化管内視鏡検査が予約できたので、その結果待ちとしていたようだ。

 肝機能障害があり、AST>>ALT・γ-GTP上昇があり、アルコール性のようだ。画像上は肝表面の凹凸があると言い難く、脾腫もないが、アルコール性肝硬変が疑われた。

 入院時に発熱があり(コロナは陰性)、肺炎や尿路感染症とはいえなかったが、抗菌薬投与(セフトリアキソン)であっさい解熱していた。5~7割の食事摂取もできていた。

 

 上部内視鏡検査(大学病院消化器内科からバイト)では「萎縮性胃炎・浮腫状変化あり」となっていた。実際の画像を確認すると、胃前庭部の幽門輪周囲の毛細血管拡張による多数の小発赤を認めた。また胃体部に同様の所見が散在していて、噴門部にもあった。(胃食道静脈瘤はなかった)

 前庭部の変化は胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia:GAVE)に相当する。胃体部にもびまん性にあり、肝硬変が関係している(門脈圧亢進症も関係)。

 検査時には小発赤(毛細血管拡張)の数か所からoozingがあり、検査処置(胃を広げたことや擦ったこと)に関連しているのだろう。小腸・大腸の検査はしていないが、この胃病変による慢性的なoozingが貧血の原因になった可能性が高い。

 

 常勤の消化器科医に内視鏡画像を見てもらうと、GAVEだろうという。とりあえず、PPI(ラベプラゾール)をP-CAB(タケキャブ)にして、鉄剤投与で経過をみましょうとなった。

 内視鏡処置としては焼灼術になるので、以前していたアルゴンプラズマ凝固(argon plasma coagulation:APC)は?というと、予算がなくて維持管理できないのでやめてしまっていた。

 地域の基幹病院消化器内科には上部消化管の専門医が2名はいるので、内視鏡処置について紹介したほうがいいかもしれない。

 

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