先週の金曜日(6月25日)に、55歳女性が内科医院から紹介されてきた。受診時に発熱がなかったので、発熱外来扱いにならず内科新患で診ていた。担当の先生(大学病院からバイト)から連絡がきて、外来に診に行った。
その内科医院に約1週間の入院を2回繰り返していたが、また発熱があるので、という紹介だった。診断はいずれも急性腎盂腎炎だった。不明熱とも記載していた。(今どき珍しい有床診療所だった)
入院の経緯(使用した薬剤、検査結果、期間)が記載されていなかったので、地域医療連携室から問い合わせてもらうことにした。
5月31日から6月7日までと、6月14日から22日までの入院だった。1回目の入院時は白血球16200・CRP20.0と炎症反応が高値で、治療後は白血球6400・CRP0.54と軽快していた。2回目は白血球11400(CRPは抜けていた)で、治療後は白血球8300・CRP0.99となっていた。
尿検査所見はなかった。その後さらに問い合わせて、抗菌薬使用後の尿培養検査の結果がきて、陰性だった。肺炎はないので、尿路感染症ということらしい。
使用した抗菌薬は2回とも、メロペネム0.5g1日2回点滴静注とレボフロキサシン500mg内服の併用、それに補液とあった。
当院受診時は、白血球10900・CRP14.5だった。尿検査は尿沈渣が赤血球5-9/HPF・白血球10-19/HPFで細菌(+)と、急性腎盂腎炎と決め難い。胸腹部単純CTが撮影されていて、少なくとも肺炎はない。
少なくとも2日間は抗菌薬が使用されていないので、血液培養2セットと尿培養を提出した。血液検査で炎症反応以外の異常はない。
患者さんは案外元気で、2回入院したので入院はしたくないという。悪寒戦慄はない。セフトリアキソン点滴静注とケフレックス2000mg/日内服で数日経過をみることにした。
予約した6月28日(月)に内科外来を受診したが、前日にも受診していてアセトアミノフェンを追加処方されていた。発熱が続き、白血球23600・CRP16.0と高値だった。(尿所見は改善)
抗菌薬が効いているので、何らかの細菌感染症と思われる。(レボフロキサシンが効く、一般細菌以外も否定できないが)1週間の治療で治りきらずに再燃してくるということは膿瘍だろうか。尿路なら腎膿瘍になる。
造影CTで確認したが、左腎臓に造影されない部位がちょっとあって膿瘍?と思ったが、はっきりしない。放射線科読影レポートでは、大腸壁の肥厚と腸間膜リンパ節腫脹が指摘された。腎臓は正常とされていた。炎症性腸疾患ではありませんか、というコメントがついていた。(腹痛・下痢・血便の訴えはなかった)
入院してセフトリアキソンで数日みるかとも思ったが、それでは効かない菌種の可能性もあり(外来でSPACEが出ることもある)、実績のある?メロペネムで開始した。
入院後は解熱して、3日治療後の今日は白血球6500・CRP1.4と著明な改善を呈していた。レボフロキサシンが効く一般細菌以外の微生物(レジオネラ、クラミジア、マイコプラズマ)ではない。血液培養2セット、尿培養はいずれも陰性だった。起炎菌はまったくわからない。
2017年に膀胱炎(発熱はなく、症状は頻尿・排尿痛)で同じ内科医院で2回治療して、それでも再燃したことがあるそうだ。地域の基幹病院泌尿器科に紹介された。
画像検査で今回と同様に大腸壁の肥厚を指摘された。炎症性腸疾患疑いだったらしい。消化器内科で大腸内視鏡検査が行われたが、異常はなった。そうしているうちに膀胱炎は治癒して再燃しなかった。
その前後でバルトリン腺膿瘍で婦人科クリニックで切開をしたことがあり、再発して治療を繰り返した。基幹病院婦人科に紹介されたが、3回目の治療後は再燃していない。
3回目に治る人なのか。
あまり気持ちの良くないメロペネム点滴静注だが、1週間は継続する。来週もう1回検査して、その後どうするか決めることにした。
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