min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

はぐれ鷹

2008-04-15 18:43:48 | 「カ行」の作家
熊谷達也著『はぐれ鷹』文藝春秋 2007.10.10  1,619円+tax

オススメ度 ★★★☆☆

幼い時分より動物や鳥類を眺めて遊ぶのが好きであった岳央は、ある日テレビで角鷹(くまたか)の鷹匠の存在を知った。
大学を出た後も鷹匠の事が忘れられず、とうとうその鷹匠の下を訪れ弟子入りを志願した。
鷹匠は何度も断ったがとうとう彼の熱意に根負けしたかたちで弟子として受け入れた。
日本最後の鷹匠と言われる師匠は、高齢でかつ頑迷な性格を持っていた。角鷹(くまたか)の鷹匠としての知識と経験は尊敬できたが、一方裏の部分での金銭欲、名誉欲には幻滅を感じざるを得なかった。
師匠から与えられた若き角鷹の神室号を果たして一人前の鷹として訓練し育てることが可能であろうか?角鷹はあまりにも気高く孤高の生き物であることを知らされる岳央であった。
師匠に弟子入りし半年ばかり経ち、そろそろ神室号の訓練を開始したばかりの頃、幼なじみで憧れの存在であった久美がTV取材を申し込みに岳央の前に現れたのであった。
果たして岳央の神室号はカメラの前で見事に狩りをすることができるのであろうか?

著者熊谷達也氏はかって『邂逅の森』や『相克の森』の著作において、秋田県阿仁に存在したマタギの生態、生き様を綿密な取材の元に我々の前に活写してくれた。
本編においても角鷹(くまたか)の鷹匠という特異な存在とその知られざる世界を我々の眼前に披露してくれたわけであるが、物語としての本編はプロットの配分がなんとも不自然でバランスを欠いている、と言わざるを得ない。
TV取材という岳央にとっては負の存在となるもの、それにからむ初恋の女性とのやりとりに主力がおかれ、肝心の鷹匠としての生き様の描写が二の次になってしまった気がする。
読者としては岳央の人生の最終的な決着がまだ済んでいないのではないか!と思う次第。


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