風間一輝著『男たちは北へ』ハヤカワ文庫JA 2008.2.15 720円+tax
オススメ度★★★★☆
フリーのグラフィックデザイナーである桐沢風太郎はアル中の中年である。学生時代の友人が以前、自転車で青森まで行った帰りに彼の元に立ち寄った。
その時友人が語った体験は彼の記憶から消え去ることなく「いつか自分も青森まで行ってみたい」と思っていた。
人生中盤を過ぎると、これは特に男にとってそうなのかも知れないのだが、何故か青年期に抱いた「想い」にとらわれる瞬間があるようだ。
日常から一時逃れるような衝動にかられたかどうかは確かではないが、桐沢はある朝北へ向かった。
東京を出てまもなく、一台のトラックの荷台から段ボール箱が落下するのを目撃し、それを拾った桐沢は近くのコンビニに届けた。その落下した書類の束の一冊をメモがわりに拝借したのだが、これが災いの火種になる。
その書類とは自衛隊の一部の幹部が策定した「秘密作戦」の小冊子であった。
小冊子は50冊あったのだが、桐沢が失敬した一冊が問題であった。この一冊の最後のページには書類を読んだ9名の自衛隊幹部自筆のサインがあったからだ。
この「極秘作戦」を策定したのは三田という幹部であったが、その上官である塚本は直ちに隊内に私設的な奪還本部をつくり回収作戦に出た。
一方、桐沢は小冊子を拾った日の夕刻、ひとりの少年と出会う。少年はある事情でやはりひとり青森を目指すヒッチハイカーであった。
この小説はジャンルで言えば「ロード・ノヴェル」となるらしいが、ひとりの少年の「成長譚」でもある。
「極秘文書」をめぐり自衛隊がからんでくるサスペンスとも言えるのだが、実際、この自衛隊の関与そのものは物語の脇役に過ぎない。なぜなら「極秘文書」の中身が大した代物でもないし、回収方法そのものが杜撰としか言いようがない。
桐沢自身が後に独り言のようにつぶやくのであるが、素直に「無くした物を返してくれ」と言えば済むようなものだ。自衛隊側のひとりよがりの悪あがきであって、桐沢はたとえ彼らの真意(殺してでも奪う)を知ったとしても青森行きを断念するものではないだろう。
桐沢は、いわば「明日を意識しない日々の生活」を送ってきたわけであるが、今回の青森行が少年や他の人々との出会いによって「明日を意識する再生への旅」となったとは思えないし、アル中がこれで直るとも思えない。
黙々と青森を目指す桐沢の存在は、少なくとも少年の精神を鍛え、敵のひとりの生き様すら変えたと思う。
一方の桐沢の心の中でも何かが変化したことに違いない、と思うのだが・・・
ここで大事なことを書き忘れていた。サイクリング。これが本編で最も重要な要素となっている。サイクリング好きな読者は読み進める程に著者の描く世界に感情移入できると思うし、サイクリング未体験の読者もそれなりに楽しめると思う。
重い荷物を積載したサイクリング車による山越えは、越えたと思うとまた登り、頂上は遙か遠くに。期待と落胆、その繰り返し。その様はあたかも「賽の河原」で石を積む姿にダブる。意識を無に近づけてペダルをこぐ境地はある種、修行僧のそれに近いのであろうか。
ひとり言=たわ言
主人公の桐沢はどうみても横文字職業のグラフィック・デザイナーとは思えないなぁ。
一体どんな作品を書こうってんだい?(笑)
アル中の割にはずいぶん程度のイイ?アル中じゃないの?この人!
最近、なんかこの作品に触発されたとは思わないが、チャリ(21段変速のマウンテンバイク)を買ってしまった。んだども、青森に行きたいとは思わないぞっと(苦笑)
北海道独立!むむっ、なかなかいいかも。
軍事的にはその気になれば確かにたやすく達成できるんでないかい。でもその後が大変だろう。
特に経済的になりたたないのでは?
ここ3年ほど北海道に住んでみて思うのは、今の道産子には独立精神のカケラもないのでは?内地への依存心が高すぎる!
あ、そうか、道民を人質にして日本政府から身代金をせしめればいいのか。
オススメ度★★★★☆
フリーのグラフィックデザイナーである桐沢風太郎はアル中の中年である。学生時代の友人が以前、自転車で青森まで行った帰りに彼の元に立ち寄った。
その時友人が語った体験は彼の記憶から消え去ることなく「いつか自分も青森まで行ってみたい」と思っていた。
人生中盤を過ぎると、これは特に男にとってそうなのかも知れないのだが、何故か青年期に抱いた「想い」にとらわれる瞬間があるようだ。
日常から一時逃れるような衝動にかられたかどうかは確かではないが、桐沢はある朝北へ向かった。
東京を出てまもなく、一台のトラックの荷台から段ボール箱が落下するのを目撃し、それを拾った桐沢は近くのコンビニに届けた。その落下した書類の束の一冊をメモがわりに拝借したのだが、これが災いの火種になる。
その書類とは自衛隊の一部の幹部が策定した「秘密作戦」の小冊子であった。
小冊子は50冊あったのだが、桐沢が失敬した一冊が問題であった。この一冊の最後のページには書類を読んだ9名の自衛隊幹部自筆のサインがあったからだ。
この「極秘作戦」を策定したのは三田という幹部であったが、その上官である塚本は直ちに隊内に私設的な奪還本部をつくり回収作戦に出た。
一方、桐沢は小冊子を拾った日の夕刻、ひとりの少年と出会う。少年はある事情でやはりひとり青森を目指すヒッチハイカーであった。
この小説はジャンルで言えば「ロード・ノヴェル」となるらしいが、ひとりの少年の「成長譚」でもある。
「極秘文書」をめぐり自衛隊がからんでくるサスペンスとも言えるのだが、実際、この自衛隊の関与そのものは物語の脇役に過ぎない。なぜなら「極秘文書」の中身が大した代物でもないし、回収方法そのものが杜撰としか言いようがない。
桐沢自身が後に独り言のようにつぶやくのであるが、素直に「無くした物を返してくれ」と言えば済むようなものだ。自衛隊側のひとりよがりの悪あがきであって、桐沢はたとえ彼らの真意(殺してでも奪う)を知ったとしても青森行きを断念するものではないだろう。
桐沢は、いわば「明日を意識しない日々の生活」を送ってきたわけであるが、今回の青森行が少年や他の人々との出会いによって「明日を意識する再生への旅」となったとは思えないし、アル中がこれで直るとも思えない。
黙々と青森を目指す桐沢の存在は、少なくとも少年の精神を鍛え、敵のひとりの生き様すら変えたと思う。
一方の桐沢の心の中でも何かが変化したことに違いない、と思うのだが・・・
ここで大事なことを書き忘れていた。サイクリング。これが本編で最も重要な要素となっている。サイクリング好きな読者は読み進める程に著者の描く世界に感情移入できると思うし、サイクリング未体験の読者もそれなりに楽しめると思う。
重い荷物を積載したサイクリング車による山越えは、越えたと思うとまた登り、頂上は遙か遠くに。期待と落胆、その繰り返し。その様はあたかも「賽の河原」で石を積む姿にダブる。意識を無に近づけてペダルをこぐ境地はある種、修行僧のそれに近いのであろうか。
ひとり言=たわ言
主人公の桐沢はどうみても横文字職業のグラフィック・デザイナーとは思えないなぁ。
一体どんな作品を書こうってんだい?(笑)
アル中の割にはずいぶん程度のイイ?アル中じゃないの?この人!
最近、なんかこの作品に触発されたとは思わないが、チャリ(21段変速のマウンテンバイク)を買ってしまった。んだども、青森に行きたいとは思わないぞっと(苦笑)
北海道独立!むむっ、なかなかいいかも。
軍事的にはその気になれば確かにたやすく達成できるんでないかい。でもその後が大変だろう。
特に経済的になりたたないのでは?
ここ3年ほど北海道に住んでみて思うのは、今の道産子には独立精神のカケラもないのでは?内地への依存心が高すぎる!
あ、そうか、道民を人質にして日本政府から身代金をせしめればいいのか。
もう、どのくらい走られたでしょうか。
当初通勤に使おうかな、とも思ったのですが、家から勤務先まで約15km。札幌の東から西へ向かうとかなりの登り坂があります。
まだトライしてないけど会社に着いたら「はい、ご苦労さん、今日の仕事はおしまい!」ということになりそう。
土日に街の中心部(約5kmくらいか)の往復程度でしょうねぇ、もう年だから。
でも天気の良い日は気持ちいいですよ。
どこかに一人でサイクリングに行きたい・・・