min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

麻生幾著『外事警察』

2010-11-16 22:30:03 | 「ア行」の作家
麻生幾著『外事警察』NHK出版 2009.9.20 第一刷 

オススメ度:★★☆☆☆

本書は著者である麻生幾氏がNHKより「テロ対策をテーマにドラマをつくりたいので、その原作小説を書いてみないか?」という依頼により書き下ろされた作品である。
ドラマは09年秋、NHK土曜ドラマとして放送の運びとなった。

結論から先に述べよう。ドラマでも麻生幾原案となっていたのだが、なるほど正に原案であって、原作ではない。
確かに登場する警察組織、テロリスト集団名、登場人物は原作からほぼそのまま流用されているが、物語そのものは大幅に脚色されている。
それが原作よりもドラマの脚本構成(脚本:古沢良太)のほうが遥かに秀逸で面白く深みがあるのだ。
前回、同著者の『ZERO』の書評でも述べたのであるが、この麻生幾という作家は小説家としての才能があまりにも乏しいのである。『ZERO』同様エンタメ小説としては全くつまらない。作者の思い入れ、情念が先走りしてしまい、読者は著者の先走りについていけなくなるのだ。
是非、この方には小説家というよりもドキュメンタリ作家に転向されることをお勧めしたい。
さて、日本がかねてよりスパイ天国と揶揄されているように先進諸外国のような防諜機関は存在しないと言われている。
では国家の安全に対する防諜はどこが行っているかといえば、公安警察がほぼ一手にその任についている。
対国際テロリズムは警察庁国際テロリズム対策課が取り仕切っているが、本編では警視庁外事第3課が行っている。それも表の組織ではなく、更に秘匿された裏の作業班、住本チームの物語だ。このような裏組織が実存するか否かは不明。

時あたかもつい先月、実存の警視庁外事第3課の情報が何者かの手によってネット上に流されるという怪事件が発生した事は記憶に新しい。
公安担当者や監視対象者、そして協力者の個人情報ばかりか、捜査の手法、状況まで白日の下に晒されてしまうという前代未聞の警察の失態が報じられた。
この事件をみる限り、やはり麻生幾氏の描く世界が空絵事でないことを物語っている。
それにしてもかかる失態は、関係者の命に係るばかりか、世界の諜報機関からも日本の公安警察が信用を完全に失い、今後自由世界からの情報が供されない事態も想定される。改めて日本にもまともな防諜組織の整備が必要とされる思いがする。



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