阿里山森林鉄路の現在の終点、奮起湖は、阿里山までの中継拠点として発展してきた街。湖があるわけではなく、盆地に溜まる霧を比喩的に表現したものと言われます。
せまい路地に店が立ち並ぶ「老街」は、台湾南部の九分との異名も。食堂やお土産屋さんが連なり、登山列車でやって来た観光客を激しく呼び込んでいました。
茶やわざびなど、台湾の他の街ではあまり見ない特産品もずらり。
小さな規模の老街とはいえ、賑やかな街を見ていると、あれだけの険しい山道を乗り越えてきたことを忘れてしまいそうです。
老街からは直接、駅までの路地が抜けています。ギリギリまでお買い物をしてても、大丈夫!?
奮起湖の中でも大きな宿、奮起湖大飯店にやってきました。セブンイレブンも入っていて、山奥ながら都会並みの品揃えを提供しています。
この宿、そして奮起湖の名物と言われるのが、奮起湖弁当です。阿里山までの長い道中では、奮起湖駅のホームでこのお弁当を買うのが慣わしだったとか。持ち帰り100NT(382円)、中で食べればスープ付きで120NT(458円)です。
山菜がたっぷりで味付けもやさしく、今まで台湾で食べたお弁当の中では一番おいしかったです。
もうひとつの阿里山名物、阿里山コーヒーで一服。180NT(687円)だから、お弁当よりもずっと値が張る高級品です。
砂糖を入れずとも、自然に広がる甘みが何ともいえず美味でした。
2時間余りの奮起湖散策を終えて、折り返しの阿里山号で山を下ります。
車体や枕カバーには、姉妹鉄道として静岡の大井川鉄道が紹介されています。台湾では最近、日本との姉妹路線締結が一種のブームになっていますが、こちらは1986年からと歴史のあるものです。
木履寮駅では、スイッチバックの線路をスルーして、勾配上の線路の停車します。ディーゼル機関車は、勾配にも強いということでしょうか。
下界に降りれば、夕方のラッシュが始まろうとする時間。小学校の下校時刻にも当たり、男の子も女の子も、笑顔で森林鉄道に視線を送っていました。
鉄道が好かれている様子を見ると、なんだかほっとします。
往復約5時間の旅を追え、嘉義駅着。蒸気機関車の時代に使われていた給水塔の、レトロなタイル文字が出迎えてくれました。
駅裏に「嘉義鉄道芸術村」の看板が見えたので、足を伸ばしてみました。
鉄道施設を再生した芸術文化の展示スペースですが、月曜休館だったのは残念。
広場では露天カラオケ大会が開かれていて、老人たちが日がな1日をすごす場になっているようです。日本の歌も聞こえてきて、拍手を送りたくなりました。
嘉義駅の裏口駅舎は、バスターミナルと一体化。長距離高速バスや高鉄駅行きのBRTが発着し、乗り換えも便利にできています。
これは、日本の地方の駅でも見習ってほしいです。
たかみーと別れ、高鉄嘉義駅行きのBRT(バス高速輸送システム)のバスに乗り込みました。高鉄とお揃いの色なので分かりやすく、スマホでバスの接近情報も手に入れられます。
高鉄駅まで乗る際には、運転士さんに「高鉄(カオティー)」と言うと、こんなカードを渡されます。下車時にカードを運転士さんに返せば、運賃は無料です。
一緒にバスを持っていた方から、親切に教えて頂いたこそ分かった「技」です。
BRTとは言っても、大通りの中央にバス専用レーンと停留所がある、名古屋の基幹バスやソウルの中央バスレーンに近いシステム。専用の立体交差はなく、車の交通信号に従います。
速達性としては車同等ですが、渋滞に巻き込まれない分 定時性は高く、時間の定まった鉄道利用者には安心できるシステムです。
そんな市街地を抜けると、さとうきび畑のど真ん中へ。バスは直線道路をノンストップで飛ばし、所要時間から感じる距離以上の距離がありました。
高鉄の嘉義駅は、空港のような立派なターミナルを構えていてビックリ。しかも大きな施設にふさわしいだけの利用者で賑わっています。モスやスタバなどの大手チェーンが入っているのも、安定した利用者がいる裏付けです。
嘉義の人口は27万人。台南駅からさして距離はなく、広域から利用客を集めるわけでもないのに、1日の乗降客が1万人を超えるのだから大した実績です。
コンコースには、嘉義での就業を勧めるこんなポスターも。台湾でも、「地方創生」は欠かせぬ取り組みになっているのかな。
17時36分発の高鉄で、台北へと戻ります。
帰路は商務車(グリーン車相当)を奮発しました。日本の700系新幹線のグリーン車とほぼ同じで、座席も柔らかい作りです。足置きは、靴を脱いでくつろげるタイプになってます。
台北~嘉義間では普通車運賃から415NT(1,584円)増しですが、日本の東海道新幹線で同じ距離をグリーン車に乗れば3,590円増しですから、お得とも言えます。
安いのに新幹線に勝る点といえば、飲み物とお茶請けのサービス。乗車するとほどなく、専属の客室乗務員がサービスに回ってくれます。
新幹線のグリーン車だって決して安くはないのだから、この程度のサービスはあってもいいのにと思います。
台中では主要駅らしく、乗客がどっと乗り込んできて、商務車も満席近くなりました。この切符もお昼頃にネットで予約していたのですが、直前でだいぶ売れたようです。
夕暮れ時、台中のビル街が、摩天楼のように輝き始めていました。
ゆったりした乗り心地をもっと味わっていたかったのですが、わずか1時間半で台北着。明日の空港行きバス乗り場を確認してから、ホテルにチェックインしました。
華華大飯店(フラワーホテル)は、日本からの予約で1泊7,500円。清潔感、設備とも値段相応といったところです。ただ台北駅から徒歩10分圏内という立地を考えれば、値ごろと言えるかも。
明日は早朝の飛行機で立ってしまうので、台湾の食を楽しめるのは今夜が最後です。とはいえ捷運に乗って繁華街まで乗り込む気力もなく、宿からほど近い點水樓を訪ねてみました。
比較的お手ごろな値段だった2人用セットをオーダー。小籠包、大根もち、牛肉麺、どれもウマイ!
満腹にはなったものの、小籠包の味が忘れがたく、お代わりを頼んでしまいました。
実は台湾のまともなお店で小籠包を食べたのは、前回も通じて初めて。中からじわっとあふれ出るスープが、たまりません。これ目当てに台湾を訪れる人がいるのにも納得! 満足至極のグルメな夜は更けていきました。