Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

白銀週間台湾漫遊【4-2】標高1,200mから「首都」へ下る

2015年09月21日 | ■旅と鉄道

 阿里山森林鉄路の現在の終点、奮起湖は、阿里山までの中継拠点として発展してきた街。湖があるわけではなく、盆地に溜まる霧を比喩的に表現したものと言われます。
 せまい路地に店が立ち並ぶ「老街」は、台湾南部の九分との異名も。食堂やお土産屋さんが連なり、登山列車でやって来た観光客を激しく呼び込んでいました。


 茶やわざびなど、台湾の他の街ではあまり見ない特産品もずらり。
 小さな規模の老街とはいえ、賑やかな街を見ていると、あれだけの険しい山道を乗り越えてきたことを忘れてしまいそうです。


 老街からは直接、駅までの路地が抜けています。ギリギリまでお買い物をしてても、大丈夫!?


 奮起湖の中でも大きな宿、奮起湖大飯店にやってきました。セブンイレブンも入っていて、山奥ながら都会並みの品揃えを提供しています。


 この宿、そして奮起湖の名物と言われるのが、奮起湖弁当です。阿里山までの長い道中では、奮起湖駅のホームでこのお弁当を買うのが慣わしだったとか。持ち帰り100NT(382円)、中で食べればスープ付きで120NT(458円)です。
 山菜がたっぷりで味付けもやさしく、今まで台湾で食べたお弁当の中では一番おいしかったです。


 もうひとつの阿里山名物、阿里山コーヒーで一服。180NT(687円)だから、お弁当よりもずっと値が張る高級品です。
 砂糖を入れずとも、自然に広がる甘みが何ともいえず美味でした。


 2時間余りの奮起湖散策を終えて、折り返しの阿里山号で山を下ります。
 車体や枕カバーには、姉妹鉄道として静岡の大井川鉄道が紹介されています。台湾では最近、日本との姉妹路線締結が一種のブームになっていますが、こちらは1986年からと歴史のあるものです。


 木履寮駅では、スイッチバックの線路をスルーして、勾配上の線路の停車します。ディーゼル機関車は、勾配にも強いということでしょうか。


 下界に降りれば、夕方のラッシュが始まろうとする時間。小学校の下校時刻にも当たり、男の子も女の子も、笑顔で森林鉄道に視線を送っていました。
 鉄道が好かれている様子を見ると、なんだかほっとします。


 往復約5時間の旅を追え、嘉義駅着。蒸気機関車の時代に使われていた給水塔の、レトロなタイル文字が出迎えてくれました。


 駅裏に「嘉義鉄道芸術村」の看板が見えたので、足を伸ばしてみました。


 鉄道施設を再生した芸術文化の展示スペースですが、月曜休館だったのは残念。
 広場では露天カラオケ大会が開かれていて、老人たちが日がな1日をすごす場になっているようです。日本の歌も聞こえてきて、拍手を送りたくなりました。


 嘉義駅の裏口駅舎は、バスターミナルと一体化。長距離高速バスや高鉄駅行きのBRTが発着し、乗り換えも便利にできています。
 これは、日本の地方の駅でも見習ってほしいです。


 たかみーと別れ、高鉄嘉義駅行きのBRT(バス高速輸送システム)のバスに乗り込みました。高鉄とお揃いの色なので分かりやすく、スマホでバスの接近情報も手に入れられます。


 高鉄駅まで乗る際には、運転士さんに「高鉄(カオティー)」と言うと、こんなカードを渡されます。下車時にカードを運転士さんに返せば、運賃は無料です。
 一緒にバスを持っていた方から、親切に教えて頂いたこそ分かった「技」です。


 BRTとは言っても、大通りの中央にバス専用レーンと停留所がある、名古屋の基幹バスやソウルの中央バスレーンに近いシステム。専用の立体交差はなく、車の交通信号に従います。
 速達性としては車同等ですが、渋滞に巻き込まれない分 定時性は高く、時間の定まった鉄道利用者には安心できるシステムです。


 そんな市街地を抜けると、さとうきび畑のど真ん中へ。バスは直線道路をノンストップで飛ばし、所要時間から感じる距離以上の距離がありました。


 高鉄の嘉義駅は、空港のような立派なターミナルを構えていてビックリ。しかも大きな施設にふさわしいだけの利用者で賑わっています。モスやスタバなどの大手チェーンが入っているのも、安定した利用者がいる裏付けです。
 嘉義の人口は27万人。台南駅からさして距離はなく、広域から利用客を集めるわけでもないのに、1日の乗降客が1万人を超えるのだから大した実績です。


 コンコースには、嘉義での就業を勧めるこんなポスターも。台湾でも、「地方創生」は欠かせぬ取り組みになっているのかな。


 17時36分発の高鉄で、台北へと戻ります。


 帰路は商務車(グリーン車相当)を奮発しました。日本の700系新幹線のグリーン車とほぼ同じで、座席も柔らかい作りです。足置きは、靴を脱いでくつろげるタイプになってます。
 台北~嘉義間では普通車運賃から415NT(1,584円)増しですが、日本の東海道新幹線で同じ距離をグリーン車に乗れば3,590円増しですから、お得とも言えます。


 安いのに新幹線に勝る点といえば、飲み物とお茶請けのサービス。乗車するとほどなく、専属の客室乗務員がサービスに回ってくれます。
 新幹線のグリーン車だって決して安くはないのだから、この程度のサービスはあってもいいのにと思います。


 台中では主要駅らしく、乗客がどっと乗り込んできて、商務車も満席近くなりました。この切符もお昼頃にネットで予約していたのですが、直前でだいぶ売れたようです。
 夕暮れ時、台中のビル街が、摩天楼のように輝き始めていました。


 ゆったりした乗り心地をもっと味わっていたかったのですが、わずか1時間半で台北着。明日の空港行きバス乗り場を確認してから、ホテルにチェックインしました。
 華華大飯店(フラワーホテル)は、日本からの予約で1泊7,500円。清潔感、設備とも値段相応といったところです。ただ台北駅から徒歩10分圏内という立地を考えれば、値ごろと言えるかも。


 明日は早朝の飛行機で立ってしまうので、台湾の食を楽しめるのは今夜が最後です。とはいえ捷運に乗って繁華街まで乗り込む気力もなく、宿からほど近い點水樓を訪ねてみました。


 比較的お手ごろな値段だった2人用セットをオーダー。小籠包、大根もち、牛肉麺、どれもウマイ!


 満腹にはなったものの、小籠包の味が忘れがたく、お代わりを頼んでしまいました。
 実は台湾のまともなお店で小籠包を食べたのは、前回も通じて初めて。中からじわっとあふれ出るスープが、たまりません。これ目当てに台湾を訪れる人がいるのにも納得! 満足至極のグルメな夜は更けていきました。

白銀週間台湾漫遊【4-1】あこがれの登山列車

2015年09月21日 | ■旅と鉄道

 旅の4日目はちょっと早起き。6時に床を抜け出して、高雄駅に向かいました。
 ラッシュにはまだ早そうだけど、早起きの通勤客で駅前は都会らしい風景に。今日は月曜日。日本人にとっては気楽な連休中日でも、台湾は1週間の始まりです。


 高架化工事真っ只中の高雄駅。長い長い、仮設の こ線橋を渡ってホームへ行きます。
 外を覗き込めば大きな穴が。新しい地下駅が、開削工法で作られているところでした。


 7時ちょうどの自強号(特急相当)に乗って、北上します。昨日の夜に指定券を買えたので空いているのかと思っていたけど、車内は立つ人も出る満員ぶり。台鉄の優等列車は基本的に全車指定ですが、悠々カード利用で立席ならば区間車運賃で乗れるので、通勤で乗る人も多いようです。
 僕らの席にも先客がいましたが、券を見せる前に、立ち去って行きました。


 先頭の車両には派手なラッピングが施されていたので、のぞきに行ってみたら、自転車の固定スペースになっていました。
 台湾では区間車や捷運への自転車の持ち込みも認められており、サイクリストにとっては便利な国です。ただ日本で同じことをやれば、収拾が付かなくなることは目に見えています。


 約1時間半、嘉義駅で下車。阿里山に向かうナローゲージの登山電車、阿里山森林鉄路の始発駅です。
 森林鉄路の窓口には、出発1時間前にして行列が。その傍らではおばちゃん達が、森林鉄路の切符と宿泊をセットにして、激しく売り込んできます。


 が、僕らは たまたま前日から嘉義の知り合いを訪ねていたたかみーに、朝イチで切符を抑えてもらっていました。感謝感謝。
 阿里山森林鉄路は台風災害のため、途中の奮起湖までの運行です。昨年の情報を信じるなら、もう再開されていてもよい頃ではあるのですが、そこは台湾ペース。次にいつ台湾に来られるかも分からないし、ひとまず今回は奮起湖まで往復することにしました。


 途中駅止まりでも、登山列車は人気者。列車が入線してくると、機関車のつながれた最後尾には人垣ができました。
 標高2,200mまで上るパワーを持った機関車は、ナローゲージとは思えない迫力です。


 先頭は動力を持たない客車ながら、運転台がついています。こちらはやはり、ナローならではのかわいいさを感じます。
 あまり「絵」にならないのか、こっちで写真を撮る人はあまり多くありませんでした。


 特急格の「阿里山号」なので、冷房完備、3列のリクライニングシートを装備した快適仕様の客車です。窓は一部を除いて開かず、快適ではあるけどワイルドさには乏しい気も。
 5両編成の客車は満席で、立席券で乗っている人もいました。休日は2往復走る列車も、平日は1往復になってしまうことも影響していそうです。再度、たかみーに感謝。




 10時ジャストに嘉義駅を出発。市街地のど真ん中を、小柄な客車列車が堂々行進していきます。1日1往復の列車だけに、列車を見送る人は物珍しそう。手を振ってくれる人もいました。
 1駅目の北門駅には独立した立派な駅舎があり、車両基地もあります。ここから乗る人も多く、大井川鉄道の新金屋駅を思い出しました。


 しばらくは市街地を走り続けます。平行する道路を、バイクが軽やかに抜き去っていきました。


 青い木造駅舎がかわいい、竹崎駅。嘉義とは別の市街地を構えており、嘉義~竹崎間の需要もありそうですが、区間列車はありません。
 あのスピードじゃ、バスと勝負にならないか。


 竹崎駅を出ると途端に、勾配がきつくなります。スピードもさらに落ち、直後の機関車からは盛大なエンジン音が。カーブもきつく、車窓には我が列車の先頭部分が見え隠れします。
 のどかなナローの近郊列車から、本格的な登山列車へと変貌してきました。


 目に見えるレベルの急な勾配が続き、機関車がオーバーヒートしないか心配なほど。下界が、ぐんぐん遠ざかっていきます。


 車窓は南国的ですが、それでも平地とはだいぶ様子が変わってきました。気候区分上も、嘉義付近は熱帯、奮起湖では亜熱帯に分かれます。さらに阿里山は、温帯に属するのだとか。


 阿里山森林鉄路の一番のハイライトとも言えるのが、樟脳寮から独立山にかけて続くスパイラルループ線。幾重にも幾重にも、まるでとぐろを巻くように山裾を回りながら、高度を稼いで行きます。
 眼下に何度も同じ駅が現れるので、ああループなのかなと思えるのですが、スケールが大きすぎて、今自分がどこにいるのかは見当が付きません。せめてループを実感できるよう、コンパスを持ってきてればよかったと思います。


 交力坪駅。山中の駅でも、保線作業の人や登山客が乗り降りしていきます。
 ホームがなく、ステップがあるだけの駅もいくつか。狭いステップの位置に、ピタリと止める機関士の腕も確かです。


 標高1,000mを超えてもなお、急カーブと急勾配が連続します。車窓には茶畑が現れ、姉妹鉄道でもある大井川鉄道の井川線を思い出しました。


 さらに標高が上がると、霧の中へ。というか、雲の中に入ってきたといった方が適切かもしれません。


 2時間半の乗り応えある旅を終えて、現在の終点・奮起湖着。車外に出ると、肌寒いといっていい気温でした。霧が濃淡をつけながら流れてきて、濃いか薄いかででも、体感温度は変わります。


 まわりの人の様子を見ながら、僕も線路の上へ。ナローゲージは、身長176cmの僕の両足で、軽々またげるほどの間隔です。
 よくぞこの狭いレールの上に、重い車両が載っているものだと思います。




 駅の先には車庫が…と思っていたら、蒸気機関車の展示館になっていました。小さな客車とはいえ、あの急勾配をSLで越えるのに、どれほどの「死闘」が繰り広げられていたのか。今や想像の世界です。


 駅構内を出て、阿里山方面の線路を望みます。数年に渡る運休で、線路はすっかりさび付いていましたが、草は刈り取られていて荒れた感じはありません。
 全線復旧も間もなくのはず。さらに1,000mの高度を稼いだ先の世界はどんなものか、いつかは乗ってみたいです。


 小高い山の展望台に登ると、奮起湖駅が霧の中で模型のようなたたずまいを見せていました。