Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

白銀週間台湾漫遊【3-2】台湾は路面電車先進国へ

2015年09月20日 | ■旅と鉄道

 台南から高雄までは、区間車(普通電車)で移動します。
 韓国と違って、地方の国鉄在来線でもきちんとローカル輸送が行われている台湾。台南~高雄間でも、昼間は2本/時間以上の列車が走っています。ICカードも通用して、仙台か広島あたりの都市圏輸送を見ているようです。


 時間に余裕があったので、台南から2駅目の保安駅で下車。木造平屋建ての、昔ながらの駅のたたずまいにひかれての、気まぐれです。
 駅舎は古くとも、ホームへのエレベータはきちんと整備されており、都市圏の駅として利用者が多いことを物語っています。


 駅前広場より望んだ駅舎。瓦葺・切妻屋根の建物は、僕の地元の駅の建替え前を思い出します。
 看板だけは、「昔ふう」に右書きされた新しいものになっており、古い駅舎の価値を認め、これからも大切に使っていこうという意思を感じられました。


 肘掛のない長いベンチに、振り子時計。壁に塗り重ねられたペンキに、味わいがあります。
 窓や扉が開け放たれ、開放感があるのは南国らしい雰囲気です。


 駅舎内で唯一新しいものといえるのが、悠々カードのカードリーダー。券売機で切符を買う人は少数派で、ほとんどの乗客が、リーダーへタッチ&ゴーしていきます。


 再び南下する区間車に乗って、高雄市内の馬頭駅で下車しました。
 広いホームの真ん中に置かれたベンチは、区間車に変わる前の客車鈍行「普快車」の座席です。普快車も、残るは南海岸の1往復のみ。昨年、時代離れしたのんびりした時間を楽しんだことを思い出します。


 橋頭駅では、高雄の捷運に乗り換えることができます。市内の北部にアクセスするなら、橋頭駅での乗り換えが便利です。
 捷運の高架ホームも、防風壁ひとつ見当たらない開放感。台北とも違う気候を物語ります。


 台北と同じく、高雄の捷運も飲食は禁止。薬を飲みたい時や暑さで喉が渇いた時は難儀しますが、駅も車内も清潔に保たれています。
 台北ではピクトグラムと文字だけだった禁止の告知も、高雄ではこんな「萌え」系ポスターで訴えていました。


 1駅の橋頭糖廠駅で下車。駅前の製糖博物館には、さとうきびを運搬していたトロッコが観光用として残っていると聞いており、降りてみました。
 製糖博物館は、駅を出て左手に歩いて約5分。サイクリングも楽しめる公園として整備されており、短い日曜日を楽しむ家族連れが押し寄せていました。暑さに弱い日本人としては、よくこんな蒸し暑い中サイクリングできるなあと感心します。


 貨物駅の跡。台湾では5分車と呼ばれるトロッコが留め置かれ、さとうきびの運搬で活況を呈した時代を、少し想像することができました。


 それはいいとして、体験トロッコの乗り場が見当たりません。警備員さんに聞いてみれば両手を挙げ、まったく反対側だよと苦笑い。もうトロッコの出発時間も迫っているし、どうしようかと思いあぐねていたら、警備員さんがバイクで登場しました。1人ずつ乗せていくよ!と。
 なんて親切!でも大丈夫かなと躊躇する間もなく、ヨメさんが連れ去られて行きました(笑)。数分後に戻ってきたバイクで、僕も後部座席の人に。木々の間をすり抜けていくバイクの乗り心地、それはもう爽快の一言でした。

 トロッコの駅で降ろされましたが、この駅は、現在は使われていないとのこと。終点、花卉中心駅まではバイクで乗り入れられないとのことで、線路上を歩いて行くよう言われました。


 か細いトロッコの線路を歩けば、気分はスタンド・バイ・ミー。


 15分ほど歩いていると、終点側の駅に止まっているトロッコが見えてきました。16時00分の発車時刻まで5分、危なかった~!
 駅の窓口で、ここまで歩いてきたと申し出れば、本日2度目の苦笑い。片道乗車は想定されていないようですが、子ども用の切符を出してサービスしてくれました。今日は暑くなくてよかったと労われたけど、十分暑かったです。


 ナローゲージとはいえ、重い貨物を引っ張っていた機関車は立派なもの。


 トロッコは人が乗れるよう改造されていますが、メッシュの鉄板で囲われただけのワイルドさです。
 走り出せば、遊園地の豆汽車のような雰囲気。実際に乗っているのも子ども連ればかりで、製糖工場の一アトラクションのようでした。


 見たことがない形の連結器。


 サイクリングコースとも併走し、物珍しそうな視線が向けられます。


 観光用トロッコながら、大きな道と交差する立派な踏み切りも。カメラを向ける人も見られましたが、鉄っちゃんかな?台湾では、鉄道も立派な趣味として認知されています。


 さきほどの休止駅を通過すれば、左に台鉄、右上には捷運の線路が近づいてきました。立派な2つの現役路線に比べ、トロッコの線路はなんと か細いものか。
 しかし台湾各地に張り巡らされていた細い鉄路が、砂糖が貴重品だった当時、台湾の経済を支えてきたのです。


 トロッコの終点…というか始発駅の「捷運駅」は、まさに捷運の駅に隣接した高架下にありました。真横にある駅のトイレにまで行っていたのに、トロッコの存在にまったく気づかなかった…
 最初から見つけていれば労せずに乗ることはできたのだろうけど、人の親切に触れることもできたし、バイクやスタンド・バイ・ミーなんて貴重な経験もできたので、結果だけ見ればオーライでした。


 捷運に乗って、高雄の市内を縦断。繁華街を地下で抜けて、凱旋駅で下車しました。地上に上がると、道路をまたぐ遮断機のない踏み切りが。現在試運転が行われている捷運の新路線、環状軽軌です。台湾初の路面電車、そして「世界初」の技術を導入した最新鋭のLRTになります。
 数分もたたずに、タイミングよく踏み切りの警報音が鳴り始めました。警備のおじさん達も、交通誘導に当たります。台湾初の路面電車、車の側としても未知の世界のはずで、慣れるまで誘導するのでしょう。


 やってきました、5両編成のLRT!低床式の最新鋭LRVです。スマートな流線型は、日本よりもヨーロッパのLRVに近いものを感じます。
 無料試乗を行っているとの情報も得ていたのですが、ドアが開くことはなく残念。駅には特に試乗に関する告知はなかったものの、地元の人も車両に近づいては、「乗れないのか」といった表情を見せていました。


 しばらく待っていると、終点で折り返してきたLRTがやってきました。
 線路は芝生で敷き詰められ、まるで公園のよう。都市景観としてもよいし、ヒートアイランドの緩和効果もあります。もちろん、設置にも維持にもお金がかかるものではありますが。




 ただ低床電車や芝生軌道は、鹿児島や熊本でも見られるもの。高雄のLRTが世界に先駆けて導入したのは、バッテリー駆動方式です。
 停留所に着くとガチャン!とパンタグラフが上がり、停車時間のものの数十秒の間で、次の停留所までの電気を充電します。


 おかげで線路には架線がなく、景観上もスッキリ。日本統治下を通じても路面電車がなかった台湾ですが、一気に世界最先端を走り出そうとしています。
 例によって開業は伸び伸びですが、完成したら是非また乗りに来たいものです。


 捷運で高雄駅に戻り、今夜の宿にチェックイン。高雄康橋大飯店(高雄カインドネスホテル)高雄駅前店です。2人で1泊2,180NT(8,321円)。日本のビジネスホテルチェーン並みの値段です。


 建物自体はそれほど新しくはないようですが、全面リニューアルされていて清潔、快適。


 最新鋭のホテルらしいのが、コンセントの数がやたら多いこと。たいていのホテルでは、家から持ってきた「タコ足」でしのぐことが多いのですが、ここでは半分以上を余すほどでした。


 窓を開ければ、台鉄の高雄駅構内を見渡せました。これは期待していなかっただけに、嬉しかったです。
 高雄駅周辺の台鉄は、地下化の工事の真っ最中。写真の旧高雄駅舎も、駅としての役割を終えて、地下化工事の広報館になっています。「曳き家」で動かされていますが、地下化後には本来の位置に戻されるとのこと。


 朝食にウェルカムコーヒー(又はケーキ)が付いているのは嬉しい上に、ロビーではコーヒー、アイス、ソフトクリームが食べ放題です。
 満足度はかなり高く、また泊まりたい、日本に進出してほしい!と思うほどのホテルでした。


 ちょっと休憩してから、再び街へ。捷運とタクシーを乗り継ぎ、西子湾の打狗英国領事館へやって来ました。前回訪台時に気に入ったものの、一人で寂しい思いをしたので、ヨメさん連れで再訪です(笑)。
 レンガ造の洋館は、領事館の公舎だった建物。


 洋館のテラスから高雄の港の夜景を見ていると、長崎のグラバー園を思い出しました。
 お祭りでもあっていたのか、市街地では花火も上がっており、最高の夜景です。


 せっかくなので奮発して、館内の英国料理店でのコース料理をオーダーしました。テラスで食べることもできて、貴族にでもなった気分です(笑)。


 リンゴがたくさん浮かんだアイスティーは、英国式?さっぱり甘くて、おいしかったです。
 コースの前菜やスープも上品な味わいで、純英国風の雰囲気も相まっていい感じです。


 続いて登場、メインディッシュ。僕のポーク(写真)はともかく、ヨメさんのチキンが鶏一匹分あるんじゃないか!?というほどのボリューム。しかも八角がきいた、台湾風味の英国料理でした。
 これはこれでおいしく、僕も手伝いながら大量のチキンと格闘。お腹いっぱいになり、それでも少し余すほどでした。


 前回は丘の上の公舎を領事館だと思い込んでいて、そのまま帰ってしまっていたのですが、実は麓の建物こそが領事館であると今回判明。9時の閉館時間が迫っていましたが、急いで見学しました。


 ライトアップされた領事館もきれいで、異国情緒あふれる港町、高雄の夜を満喫できました。


 港からの夜景も眺めて、捷運の連絡バス・橙1系統で駅へ。領事館の入場券の裏側にハンコをもらっておくと、無料で乗車できます。


 西子湾駅の側には、貨物駅跡を活用した鉄道博物館があるのですが、今回も時間が遅くて見学はかなわず。代わりにまだ続いていた花火大会を、広い貨物駅跡の背景に眺めることができました。


 乗換駅の美麗島駅で、一旦改札を抜けてコンコースへ。ステンドグラス風のドームは、世界一美しい地下鉄駅と呼ばれます。昼間にはピアノの生演奏も行われ、文化が感じられる地下鉄です。
 駅の上は六合観光夜市で賑わっているはずですが、明日の朝も早いので宿へ直行。居心地のいいホテルの布団に、くるまったのでした。

白銀週間台湾漫遊【3-1】レトロ百貨店に憩う

2015年09月20日 | ■旅と鉄道
 台湾3日目は6時に早起きして、北投温泉の名物、川原の露天風呂へ行って見ました。公営ということで、入湯料は40NT(153円)と激安です。
 台湾では一般的な、水着着用の温泉。体を洗うのも脱衣所兼用の水シャワーで、日本の共同湯とはだいぶ様子が違います。


 早朝というのに、地元のじい様・ばあ様で満員。棚湯方式で、源泉に近い温泉は45度と、別府のアチチ湯に慣れた身にも結構な熱さです。温泉成分も濃い感じで、よく温まりました。
 温泉マナーには厳しいと言われる台湾ですが、湯船で顔をぬぐわない、髪をつけない、足だけ湯につけないといった点以外は、日本のマナーと同じです。逆に脱衣所やシャワーの使い方が分からなくてまごついていたら、地元の方が親切に教えてくれました。


 ホテルのコーヒーショップでブレックファーストを食べ、3日目がスタート。予約している新幹線に間に合わせるため、8時過ぎには出発です。
 8月の台風の爪あとは、ここ新北投にも残っていました。


 今日、明日と台北を離れるので、大きな荷物は台北駅のコインロッカーに。よく分からず捷運の駅に預けたのですが、捷運の駅ロッカーは時間制、台鉄の駅ロッカーは暦日制が多く、長時間の利用なら台鉄の方が安かった!
 もちろん数時間の街歩きであれば捷運の方が手ごろなわけで、状況に合わせて使い分けたいところです。


 捷運台北駅名物、シュールなアヒル人の像。前回訪台時はただただ謎だったのですが、「退屈な日常のユーモアとして…」云々の説明書きが設置され、ようやく意図を理解できました。シュール感は変わりませんが…
 ところが、数日後に通りがかったたかみーによれば、看板と台座だけを残して撤去されていたとのこと。一体いずこへ!?謎が謎を呼ぶ、アヒル人です。


 台鉄駅の大ホールに来ると、台北に来たことを実感できます。週末の朝とあって、大勢の旅姿の人が床に座り込んで、列車までの時間を過ごしていました。


 前回訪台時には在来線をメインに使いましたが、今回は時間もないので、高鉄を軸に移動します。まずは台南まで、一気に南下です。


 車内の様子は、700系新幹線そのもの。荷物置き場があるのは便利で、使っている人も多くみかけました。ぎっしり詰め込むのが是の東海道新幹線でも、本当は望まれている設備だと思います。
 座席もそっくりではありますが、座り心地は、日本よりやや固めでした。


 広告枠をはみ出す広告は、高鉄独特といえるかもしれません。
 板橋を出れば、指定席もほぼ満席状態に。昨日の昼には余裕で指定券を取れたのですが、直前で売れる傾向にあるようです。


 北部ではビル街と穀倉地帯が交互に現れ、車窓も新幹線みたいだと思っていましたが…


 南に下るにつれて、車窓に映る植物の植生が変わってきました。在来線よりも視線が高くて見通しがきき、郊外を走る分、より南国感を強く感じます。 
 旅なら旅情を感じられる在来線!と思っていましたが、「新幹線」から見る、移り変わる台湾の車窓も印象的でした。往復するなら、片道ずつ使い分けたいところですね。


 見たいところはたくさんあるので、車内で早めの昼ごはんを食べて時間節約。「高鉄弁当」の車内販売の時間には早かったので、台北駅の売店で台鉄弁当を仕入れておきました。
 日本だったらビールを開けたいところですが、台湾ではあまり公共の場では飲まないようなので我慢。八角の匂いがきつく、苦手な人は苦手な台湾の弁当だけど、僕はおいしく頂けました。


 高鉄台南駅着。暑い気候を反映してか、ホームはずいぶん開放的で、「新幹線」の駅として見れば違和感があります。
 高鉄の駅は台北以外、中心部を避けて作られており、外には広大な農地が広がっていました。


 市内へのアクセスは台鉄の新線が担っており、区間車(普通列車)が接続しています。地方都市圏でも、悠々カードが使えて便利です。
 ちなみに高鉄の駅名は台南ですが、台鉄の駅名は沙崙。さらに、台鉄の台南駅は別にあります。新竹や台中も同じパターンで、日本や韓国の感覚で行くと戸惑うこと必至です。


 2002年・韓国製の「おなじみの電車」ではありますが、新幹線アクセス列車として車内はリニューアルされていました。レザーの座席はモケット張りになり、窓上には2画面の案内装置が。
 都会の最新車両に負けない装備になっていました。


 台鉄の方の台南駅に到着。台湾の地方に行くと、古い駅舎を大切に使っている都市が多いですが、ここも例外ではありません。白亜の駅舎は、南欧の建築物を見ているようでした。
 内部も、改札口付近が吹き抜けていて広々。日本の昔のターミナル駅にも、吹き抜けが多かったなと懐かしくなります。


 バスはよく分からなかったので、タクシーに乗って市内へ。85NT(324円)の初乗りの距離は日本より長く、交通機関は割安感が強いです。
 降り立ったのは、その名も「林(ハヤシ)百貨」。日本統治下の1932年に建てられた百貨店建築を再生して、昨年オープンしたばかりの新名所です。


 台湾の建築物らしく、1階はセットバックされ歩行者の空間になっています。そういえば今はなき久留米の井筒屋も、こんな構造でした。
 薄茶色のスクラッチタイルが、いい味出しています。


 中は台中の特産品や、地元のクリエイターのデザインによる雑貨品を売っており、レストランやカフェもあります。
 古きよき、百貨店建築の雰囲気を伝える館内。もちろんRC造の建築物なのですが、柱を触っても冷たい感じがしません。しっくい塗りかな?


 丸窓は、内部と外部に共通する意匠。




 階段も、重厚なつくりです。


 さすがにエレベータは新調されていましたが、階数表示は創業当時のものを再現した差針式。エレベータガールでもいれば、さらに懐かしい雰囲気になることでしょう。




 建築物としての見所も多い林百貨ですが、扱っている商品も見ていて面白いです。工芸品だけに値段は安くないものの、ついつい手が伸びそうになります。


 日本統治下だった時代の建築物を示すものの一つが、屋上の神社跡。鳥居や社の復活はなりませでしたが、台湾ドルの硬貨の賽銭がたくさん供えてあります。
 日本円は見当たらなかったので、5円玉をひとつ、置いてきました。




 屋上の壁面は、部分的にガラスで保護されています。これ、第2次世界大戦当時の空襲を受けた跡。南の地も、戦火に巻き込まれたことを示す生き証人です。


 交差点の対面には、同じく歴史的な建築物である台湾土地銀行の建物も。かつての第一勧業銀行台南支店で、この一角は、時が止まったのかのようです。




 4階の「林珈琲」で、チーズケーキセット(130NT≒496円)をつまみながら一休み。同じカフェには日本人の家族連れもいました。
 台湾は、「リノベーション」として現代の水準に近づけるのではなく、建物のオリジナリティを生かした「リニューアル」レベルでの再生活用が進んでいると前回訪台時に感じましたが、林百貨もまさにその典型例。本家日本でも数少ない戦前の百貨店建築を大切に使っていることに、日本人として感謝の念を感じました。

 予定では4~50分ほどで退散する予定だった林百貨ですが、結局2時間近くゆっくりしてしまいました。高雄からでもさほどの距離ではないで、立ち寄りスポットとして一押しします。