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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:30年後の同窓会

2018-08-04 | 映画


50歳のスタンド・バイ・ミーと書いてあるけど、違うよなぁ。
この退役軍人たちは、新しいことを何か学んで成長して旅立っていくのではない。
忘れていたことを思い出したり、過去と折り合ったり、
折り合えないと諦めたり受け入れたりは、するけど。
学んで賢くなって成長して旅立つには、もういろんなものを抱えすぎているからね。

邦題とポスターのせいで、おっさんたちの懐古的なほろ苦友情話かと思って
特に見るつもりもなかったのに、友達がこれはベトナム帰還兵たちの話で
公式サイトにある高遠菜穂子さんのコメントを読んでみて、と言うので、読んで、
それから見に行ってきました。

酔っ払いでガサツでいい加減なバー店主サルの店に、ベトナム戦争での仲間が現れる。
1年前に妻を亡くし、つい先日息子をイラクで亡くしたドクが、
息子の遺体を引き取るのに同行してくれと頼みにきたのです。
途中でもう一人の仲間で今は牧師をしているミューラーも加え
三人で、勇敢で名誉の戦死のはずの息子の遺体を引き取りに行ったのだけど・・・

友達は褒めてたし、高遠さんのコメント文はとてもいいと思うけど、わたしはもやもや。
どうもこの映画では、戦争に対して、いい戦争と悪い戦争が、
意味のある戦争と意味のない戦争があるような描き方がされてるようで、
そこに引っかかったのでした。

映画で登場人物は、ベトナムのもイラクのも戦争には意味がなかったと言ってるけど
なんかそれはベトナムやイラクで無駄に死んだアメリカ人を思っての考えでしかなくて
戦争そのものも、軍隊そのものを否定はしていないように見えるのです。
戦争に関して。政府は嘘つきだ、とも言ってるけど、
では状況が違えば、戦争は必要で良いことたりえるのか?という疑問が残ったのよね。
本当に共産主義者が増えてたら、ベトナム戦争はアメリカ人にとって
許される正義に成りえたという風に読めるのです、この映画の書き方では。
無意味な戦争は悪い、とは言ってるけど、でも無意味じゃない戦争なんてないんだ、とは
言ってないんだなぁ。。。
また、そもそもあの3人は結局、戦争は否定してても、
そこでの軍人としての自分たちは否定してなくて、
その時代がノスタルジーにさえなってるわけだから、
そりゃ、あとになって軍隊を皮肉な目で見はしても、否定できないのは、仕方ないのかな。
戦争で亡くなったアメリカ人兵士たち一人一人は確かに被害者だけど、同時に、
アメリカという国自体がベトナムや中東に大して大きな加害者だという視点が全然なく、
家族や国を守るためと信じて戦うアメリカ人たちのことは
仲間意識で肯定してるだけに見えてしまった。
どんな戦争でも、戦争そのものにある愚かさを描いたわけではないのが、ちょっと残念。

そして、この映画、おじさんたちのノスタルジーにもちょっと甘すぎる気がするし、
ラストはちょっとやりすぎ。感傷的にまとめすぎ。
普通それは中盤で出てくるはずでしょうというものが、出てきて泣かせるんですけど
感動のシーンで映画を終えるための演出とはいえ、ちょっと無理があるしあざとい。

と、文句を言いましたが、映画としては悪くなかった。
この3人の男たちは映画の登場人物としてはそれぞれに魅力があったし、
この3人の、戦後の30年の別々の人生を、もう少し丁寧に描いたものも見たい気がする。
イーストウッドの「15時17分、パリ行き」みたいに、
彼らの人生を淡々と丁寧に拾っていくようなものが見たいなぁと。
ただ、「パリ行き」は普通の若者が英雄になった話で、
こっちは戦場でひどい目にあってもまだ英雄から遠い人たちの話だけど、
どっちもベースに愛国的なものは常にあって、それは結局戦争に結びつき
アメリカというのは戦争なしでは成り立たない難儀な国なのかもしれないな。






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