人々の憎悪を増幅させていく差別主義者トランプへの、
スパイクリー監督からのストレートな批判。
特にラストの方、ずっと映画の文法できたのにラストのその数分間に
記録映像ぶつけてくる終わり方に、スパイクリーの我慢できない憤りを感じました。
黒人差別って教科書の中の昔の話じゃなく、
全部今に続いてることなんだなぁというのが、映画を見るとよくわかりますね。
エンターテイメントの作りだけど、結構重いししんどいです。
映画で見るフィクションでさえ、差別っていちいちヘドが出るけど、
なくならないというか、増えたりしてる世の中が理解不能。
そして、人種差別の映画見ると、それが外国の映画でも結局
この日本のこともあれこれ考えてしまうから、余計疲れますね。でも見なきゃ。
白人至上主義者の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)に
潜入捜査をする黒人と白人の警官コンビ。
黒人の警官は完璧に差別主義者の白人のしゃべりをマスターした電話で応対し、
実際に出かけていって潜入するのは白人の警官。
中々ドキドキさせますが、
この主演二人が差別に対して実際に思っていることを、
セリフなどでストレートに言うシーンがあまりなかった気がして
この二人のスタンスが少し曖昧なまま話が進むのが奥歯に物が挟まった感じ。
普通こういう映画は、最初は無関心だったのが反差別に目覚めていくとか
元々反差別の理想のある人が熱意を持って立ち向かうとか、そういうのだと思うけど
これはそういうわかりやすい描写はあまりなのです。
注意深く見ると、わかる点はあるけど、
それはそれで、より考えさせる作り方なのかもしれませんね。
潜入している警官が極端で過激な差別主義者夫婦の家に招かれた時に
チーズクラッカーかなんかのお皿を差し出されるのですが、
それが多分ユダヤの戒律では食べられないものなのか
警官が微妙な表情をするシーンがあります。彼はユダヤ人なのですが
KKKはユダヤ人も差別するし、この夫婦は特にユダヤ人を憎んでいるので
警官は結局、なんでもないように振る舞います。
そういう細かいシーンでわたしが気づかないところも、他にもあるように思う。
この警官は、わたしの苦手な俳優アダム・ドライバーが演じてるんだけど
この役は良かったです。今までの彼の映画の中で一番いい気がする。
そして主役の黒人警官は、デンゼル・ワシントンの息子なのね〜!
父親ほど整った容姿ではないけど、演技はいいと思う。かなりいい。
不満というか、気になったのは、スパイク・リー監督っていつもこうなのか、
女性の扱いに微妙なところ。
たとえば、ユダヤ人差別の夫婦の妻役。すごくでっぷり太ったおばさんなんだけど
彼女を若くてきれいな女にしても良かったのになぁと少し思った。
こういう役を、いかにも愚鈍そうな巨体の女にしなくてもいいのにな。
外見のせいで憎々しさが倍増しちゃうのは、ちょっと違うと思うんですよ。
それから、警察署の男たちはちょい役でも結構それぞれ立体的に描かれてるのに、
主役の黒人警官と恋愛関係になる、黒人解放運動をしている女子大生の彼女が
どうにも存在感がないのも残念。とてもチャーミングな子なんだけど。
他の部分を少し削っても、彼女についてもう少し掘り下げたら
ドラマとしてはいいのにな、と思う。
でも監督としては、人間ドラマ的に描きたくないのかもしれないな。
それならこれでいいのかも。
あと、自分に引きつけて考えたところで、
ユダヤ人警官が、自分はほとんどユダヤコミュニティで育ってないせいで、
ユダヤ人としてのアイデンティティが強くなくてとまどう感じとかは、
同じユダヤ人でも幅があるのは在日もホント同じよねぇと思いました。
全体的にはもっと羽目を外したどぎついタランティーノ風味で、
ちらっと風刺があるような映画かと思ってたら、
結構本気で、自分はあまりエンターテイメント的な映画と思わなかった。
ラストもあれだから、やっぱりメッセージ映画ですね。
今年に入って、グリーンブックとビールストリートとこの映画と、
アメリカの黒人差別の映画を3本見たけど(切り口も濃度も方向も全部違うけど)、
みんなも色々見るといいのに、とすごく思います。
とりあえず違うテイストのものを3本くらい見たら、
どんな人でも少しわかるようになる気がする。(えらそうですみません)
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