人権と公共性について真っ当でフェアな考えを持っている人が
実際に自分がじかに体験しても、自分がそれまで信じていたような行動ができるのか、
問題が他人事の間はきれいごとが言えるけど、
その負担を現実の中で受け入れるのは難しいことがありますよね、
と、そうことを言ってるのかなと思う呟きを見かけた。
>僕は、ホームレスが居座ってあまりの異臭で10分と滞在できなかった図書館でのできごとをつぶやいて以降、この種の話題と公共性の折衷について、回答を出せずにいる。自身が体験してしまうと、なかなかに何かを言い切るのは難しい。
「パブリック図書館の奇跡」はまさにそういう映画でしたね。
毎日凍死者の出る地域でシェルターも足りず、
図書館を夜間開放しろと要求するホームレスたちの話。
あるホームレスを異臭のクレームが相次いだため図書館から連れ出したら、
そのホームレスに訴えられたというエピソードも。
映画では、ホームレスを排除しない側についた職員が主人公で、
ラストの見せ場はそうくるかという展開でわりと、うまくまとめてたと思うけど、
実際こういうことがあると自分ならどうするか、考えさせられました。
自分には差別心はないといいながら生活保護叩きをする人は多いし
いつも行く図書館に一日中すえた匂いのホームレスが集まっていたら、
クレームをつける人も多いでしょう。
わたしも、クレームはつけないまでも密かに不快に感じてしまうと思う。
特にひどい匂いは集中力も思考力も奪うので、
自分の市民の権利を脅かされているように感じるかもしれない。
でも、ではそのホームレスの権利は?
その場をわたしより切実に必要としている人だったら?
映画ではそっけない態度ながらホームレス排除をすることはなかった主人公が
ホームレスの決起に巻き込まれることでもっと積極的にホームレスの側に立つのですが
その主人公にも過去があって、それを暴き立てるマスコミの浅ましさも描かれています。
巻き込まれて迷惑顔だった女性職員の気持ちの変化や
一見上へ倣えのことなかれ官僚的館長に見えた人のいざという時の決意、
市長選のためになんでも利用しようとする検察官、
家出した息子を夜な夜な探し歩きながらも支配的な自分から抜けるのが難しい刑事。
脇役もバランスよく配置されています。
監督脚本主演はエミリオ・エステベス。
俳優としては特に好みではなく、若手スターだった時もどちらかというと苦手だったけど
最近ちょっと見直しています。これからもまだいい映画を撮りそうですね。
この映画の中では、彼の演じる主人公がとにかく言葉が足りず
そのせいでややこしい事態になっていくので、その点もどかしかったけど
そういう人になるのにはそれなりの過去があったとわかってちょっと納得。
事件が起こる前に、描き出される彼の日常も少し伏線になっています。
本に救われたという話も最初は、本が大好き〜!というふんわりした話かと思ったけど
彼が崩壊していた人生を立て直すきっかけになったのが本だったというところで
ちょっと重みが出てきます。
本や本屋や図書館の少しいい話、って感じかと思ってあまり期待しないでみたけど
結構骨太ながら優しい映画でした。
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