東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

古い三菱製トランジスタラジオ(カーラジオ) AR-232 HXの修理(2/5)

2013年12月08日 | 古ラジオ修理工房

この三菱製カーラジオAR-232 HXの修理履歴です。それぞれをクリックしてください。

  修理(1/5) 修理(2/5)  修理(3/5) 修理(4/5)
  修理(5/5)

 今回は、三菱製カーラジオの電子回路を調査することにしました。東芝製との違いを確認しながら調査しました。まず、カーラジオ自体が東芝製よりもコンパクトに作られています。そのため、プリセット機構の後ろの空間が狭くなっているため、電子回路基板を入れる空間がとても窮屈になっています。いろいろ考えると、カーラジオをコンパクトにするために、A級増幅を採用したのかとも思えます。A級増幅は部品点数が少ないですので。東芝製の場合は、この基板の後ろにB級増幅用の電力増幅トランジスタ2個が放熱板と共に配置されています。

       コンパクトさを優先したのか、電子回路基板の入る場所がとても窮屈
       電力増幅トランジスタの位置、〇:三菱製,基板後ろの四角:東芝製



 次に電子回路を調べてみました。するとトランジスタの配置が三菱製と東芝製が違うのです。三菱製は高周波関連にトランジスタ4個を、低周波関連に2個使用しています。一方東芝製は高周波関連に3個、低周波関連に4個使用しています。東芝製は複同調IFTを2個使用しているため、高周波用トランジスタが3個で済んでいるようです。低周波増幅は東芝製の方が2倍のトランジスタ数を使用しているため余裕があるように見えます。

         三菱製カーラジオの電子回路基板 〇:高周波用トランジスタ


 三菱製カーラジオの電子回路に使われているトランジスタですが、1個が三菱製で残りは日立製でした。三菱はゲルマニウムトランジスタをあまり製造していなかったようです。私が大学生の頃にトランジスタがゲルマニウムからシリコンに変わっている過渡期でした。その頃、三菱のシリコン製トランジスタはよく見かけましたが、ゲルマニウム製トランジスタをあまり見たことがありませんでした。

    高周波増幅用2SA355 ft:40MHz        混合発信用2SA147 ft:70MHz
 

 まず、高周波関連のトランジスタは、高周波増幅用として2SA355(日立製),混合発信用として2SA147(三菱製),中間周波増幅用として2SA12(日立製)でした。2SA12はJIS規格になって最初に登録されたPNP型高周波増幅用トランジスタです。JIS規格前は2N218の名称で、もともとは日立がアメリカのRCAかどこかとライセンス契約して生産したトランジスタです。2SA初番のトランジスタを私は初めてみました。

  中間周波増幅用2SA12 ft:8MHz             低周波初段増用2SB75 150mW
 

 次に低周波関連のトランジスタは、初段増幅に2SA75を使用しています。その次に電力増幅用トランジスタ2SB337を使用していました。A級増幅しているため最大電力50Wの電力増幅用トランジスタです。ちなみに東芝製カーラジオではB級増幅で最大電力2Wで済んでいます。この電力の差が、A級とB級の違いを端的に表しています。

     低周波増幅用2SB75                            低周波電力増幅用2SB337
 

 三菱製と東芝製のカーラジオを見ると、決められた寸法の中に必要な機能を納めるために苦労していることがよく分かります。当時はプリセット機能がメカニックだったため、筐体内の7割近くをプリセット機構が占めています。機械屋さんもその精巧なメカニズムを小さく設計するのは大変だったと思います。その精巧なメカニズムやその動きには感動すら覚えます。しかし今、そのプリセット機構は全て電子化されています。おかげで、今のカーラジオ内は意外にスカスカです。時代の流れを感じます。

       低周波電力増幅用トランジスタ2SB337 最大電流7A,最大電力50W


 ところで、三菱製カーラジオの電力増幅用トランジスタ2SB337は常に発熱したはずです。カーラジオの音声出力は5W位ですので、0.5A位は常に電流が流れいるはずです。この発熱対策として、カーラジオ筐体の下と上に熱風対流用の穴が貫通しています。ちなみに東芝製は放熱板1枚で対処しています。

     三菱カーラジオ裏の放熱用穴          三菱カーラジオ上の放熱用穴
 


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