素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

三田完著『当マイクロフォン』を一気に読む

2011年10月18日 | 日記
 あの中西龍(りょう)さんの人生を、哀切さと詩情に満ちたフィクション(う~ん半フィクション?)に仕立てたものである。しんみりとした独特の語り口とは裏腹に、破天荒な人生であったことを知る。

 ここに“人間の業”を背負って生き抜いた中西さんの人生を単に羅列しても意味がない。三田さんの描く世界につかるしかない。NHKという巨大な組織の中の人間模様もからめてよく描かれていてなつかしい番組やアナウンサーも数多く登場するので放送史という側面からもなつかしくもあり、面白かった。NHKでディレクターとして勤務していた三田さんであればこそ書けた小説である。

 大山旅行のホテルで、夕方のNHKニュースを見ていた時、全国版から地方版(おそらく松江放送局)に切り替わった時、大阪で長らくメインのアナウンサーであった人が登場した。思わず「しばらく見ないと思ってたらここに転勤していたのか」とテレビの中のアナウンサーに語りかけてしまった。突然の独り言に妻はビックリしていたが、アナウンサーの転勤ということに感じるものがあったのは事実。なぜか小説を読んで合点した。

 昨日の19時からのBSフジ、“鬼平氾科帳”は、ちょうど7割ぐらい読み進んでいた時だったので、ナレーションを聞いた時の味わいがいつもとは少し違った。

 家に誰もいないのを幸いに、文中の詩やナレーションを朗読したり、私も好きな都はるみの♪涙の連絡船♪を歌ったり、笑ったり、自分と重なる“業の深さ”にしばし考え込んだりと他人が見たら「大丈夫かな?」と思うであろう有様であった。偶然出会った本であったが、人と人のつながりというものを深く考えさせられた。 






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