平成十九年十二月度 広布唱題会の砌
(大日蓮 平成20年1月号 第743号 転載)
皆さん、おはようございます。本日は、総本山の十二月度の広布唱題会に当たりまして、皆様方には、支部総登山の方々を含め多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。
さて、本年もいよいよ残り一月となりましたが、皆様方には本年度の折伏誓願を達成すべく日夜、御精進のことと存じます。
折伏に当たって心得べき大事なことは、対象者の千差万別な事情によって色々ありますが、そのなかで共通して言えることは、御本尊の功徳を信じ、絶対の確信を持って折伏することであります。言葉の巧みさではなくして、御本尊の勝妙にして広大無辺なる功徳を素直な気持ちで、しかし力強く、確信を持って相手に説くことが大事であります。
『総在一念抄』を拝しますと、
「たとえ字の読み書きができなく、一字をも解する力もない愚かな人でも、御本尊を固く信じて題目を唱え奉れば、身口意三業のなかで、まず口業の功徳を成就する。もし口業受持の功徳を成就すれば、その功徳は口業だけにとどまらず、仏種を胸のなかに収め、心に刻んで、必ず出離生死の人、すなわち三界六道の生死の苦しみや迷いから離れて悟りの境地、すなわち仏の境地に至ることができる」(御書 一一五㌻・取意)
と仰せられております。
この『総在一念抄』の御文は、口業の功徳について述べられているわけでありますが、このことは、折伏に当たって私どもがしかと心得ておくべき大事なことではないかと存じます。
つまり、いかなる人でも一切の差別なく、ひとたび御本尊様に向かって至心に題目を唱え奉れば、御本尊様の広大なる功徳によって、まず口業の功徳を成就し、やがて成仏に至るのでありますから、何を差し置いても、まずお題目を唱えせしめていくということが肝要であります。
もちろん折伏をすれば相手は様々な反応を見せます。素直な人もおりますが、たいていは反発して、なかには悪口罵言等する人もいます。しかし、同じく『総在一念抄』のなかには、
「此の経の諸経に超過する事は誹謗すら尚逆縁と説く不軽軽毀の衆是なり。何に況んや信心を致す順縁の人をや。故に伝教大師云はく『俗謗彼此決定成仏』等云云」(同㌻)
と仰せであります。
「誹謗すら尚逆縁と説く不軽軽毀の衆是なり」とは、法華経の不軽品に示されている説相であります。すなわち、不軽菩薩が法華経を弘通した折に、人々は不軽菩薩を軽蔑し、杖木瓦石をもって迫害しましたが、この時に不軽菩薩を軽んじた人々は、一度は地獄に堕ちましたが、その罪を畢え已って再び不軽菩薩の教化を受け、法華経を聞いた縁によって救われるのであります。つまり、逆縁によって成仏することができたわけであります。
このように、法華経の功徳は謗ずる者さえも逆縁となって成仏に至ることができるのであります。まして、素直に信心をいたす順縁の人は申すに及ばず、必ず仏果に至ることができるのであります。すなわち、法華経が諸経に超過して勝れていることは、順縁も逆縁も、信ずる者も謗ずる者も共に救っていくという偉大なる用きがそこにあるからであります。
したがって、このことを伝教大師は『依憑集』に「信謗彼此決定成仏」と説かれているのであります。「信謗彼此決定成仏」とは、信ずる者も謗ずる者も、彼も此も共に決定して成仏す、ということであります。
つまり、折伏することは、その折伏それ自体が縁となって、たとえ謗ずる者であっても、広大なる御本尊様の功徳によって逆縁となって救われるのであります。そこに折伏の偉大なる効用が存するのであります。
『法華文句』に、
「而強毒之」
という文がありますが、これは「而して強いて之を毒す」と読みます。すなわち、正法を信じない衆生に強いて説き、仏縁を結ばせることでありますが、末法本未有善の衆生は徳が薄いため、大方は自ら妙法を求めることはいたしません。故に、折伏をして敢えて三毒の心を起こさせて、毒鼓の縁、すなわち逆縁を結ばせて妙法を受持し、仏道を成じさせることが必要になるのであります。
故に大聖人は『法華初心成仏抄』に、
「とてもかくても法華経を強ひて説き聞かすべし。信ぜん人は仏になるべし、謗ぜん者は毒鼓の縁となって仏になるべきなり」(御書 一三一六㌻)
と仰せられているのであります。なかんずく「謗ぜん者は毒鼓の縁となって仏になるべきなり」との御金言を、我々はよく知らなければなりません。末法における弘通が折伏を正規とする所以が、実にここにあるのであります。
今、宗門は日顕上人猊下から賜った、平成二十一年の御命題「地涌倍増」と「大結集」の達成を目指して僧俗が一体となって前進をしております。
こうしたなかで、明年は全国四ヵ所で「地涌倍増大結集推進決起大会」が行われます。これは再三、申し上げておりますように、御命題達成へ向けて全国の講中が一丸となり、より一層の気運を高め、この大会を機にさらに一段と勢いと弾みをつけて、異体同心、一致団結して、なんとしてでも御命題を達成すべく、「プレ大会」として開催するものであります。
したがって、この決起大会の成否はまことに大事で、この大会を完全勝利して、残り一年、いよいよ来たるべき平成二十一年の大佳節へ向かって、師子奮迅の大折伏戦を展開していきたいと思います。
そしてそのためには、まず眼前の目標を達成すべく、講中が一丸となって、本年残り一ヵ月間を悔いなく、最後の最後まで闘っていくことが肝要であります。
どうぞ皆様方には、あらゆる人々、それが法華経を誹謗する人であっても、我々の折伏が縁となって必ず成仏に至るのでありますから、このことをしっかりと心に刻んで、順逆二縁ともに救う御本尊様の広大無辺なる功徳を確信し、力のあらんかぎり折伏に邁進していただきたいと思います。
本日ここにお集まりの方々をはじめ、全国の法華講員の一人ひとりが御命題達成を目指して御精進くださることを心からお祈り申し上げるとともに、これからの御健闘と勝利を祈り、本日の挨拶といたします。