平成23年7月度 広布唱題会の砌
(於 総本山客殿)
(大日蓮 平成23年8月号 第786号 転載)
皆さん、おはようございます。
本日は、七月度の広布唱題会に当たりまして、皆様には多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。
皆様には既に御承知のとおり、今月は『立正安国論』上呈の月であります。『立正安国論』は、文応元(一二六○)年七月十六日、宗祖日蓮大聖人御年三十九歳の時、宿屋左衛門入道を介して、時の最高権力者・北条時頼に提出された国主への諌暁書であります。
『立正安国論』上呈の由来につきましては『安国論御勘由来』に、
「正嘉元年太歳丁巳八月廿三日戌亥の時、前代に超えたる大地震。同二年八月一日大風。同三年己未大飢饉。正元元年己未大疫病。同二年庚申四季に亘りて大疫已まず。万民既に大半に超えて死を招き了んぬ。而る間国主之に驚き、内外典に仰せ付けて種々の御祈祷有り。爾りと雖も一分の験も無く、還りて飢疫等を増長す。日蓮世間の体を見て粗一切経を勘ふるに、御祈請験無く還りて凶悪を増長するの由、道理文証之を得了んぬ。終に止むこと無く勘文一通を造り作し其の名を立正安国論と号す。文応元年庚申七月十六日辰時、屋戸野入道に付し故最明寺入道殿に奏進し了んぬ。此偏に国土の恩を報ぜんが為なり」(御書367)
と仰せあそばされています。
すなわち、大聖人様は正嘉元(一二五七)年八月二十三日の大地震をはじめ、相次いで起きた天変地夭、飢饉疫病等の惨状を見て、かかる国土退廃の根本原因は、ひとえに邪義邪宗の謗法の害毒にあると断ぜられ、直ちに邪義邪宗への帰依を止めなければ、自界叛逆・他国侵逼の二難をはじめ様々な難が必ず競い起こると、法華経・大集経・仁王経等、あまたの経証を挙げて警告をされ、こうした災難を防ぐためには、
「汝早く信仰の寸心を改めて速やかに実乗の一善に帰せよ。然れば則ち三界は皆仏国なり、仏国其れ衰へんや。十方は悉く宝土なり、宝土何ぞ壊れんや。国に衰微無く土に破壊無くんば身は是安全にして、心は是禅定ならん。此の詞此の言信ずべく崇むべし」(同250)
と仰せられて、一刻も早く謗法の念慮を絶ち、「実乗の一善」に帰することであると諌められているのであります。
「実乗の一善」とは、大聖人様の御正意は文上の法華経ではなく、法華経文底独一本門の妙法蓮華経のことであり、三大秘法の随一・大御本尊のことであります。すなわち、この大御本尊に帰依することが、国を安んずる最善の方途であると仰せられているのであります。
よって日寛上人は、
「立正の両字は三箇の秘法を含むなり」(御書文段6)
と仰せであります。
すなわち「立正」とは、末法万年の闇を照らし、弘通し給うところの本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法を立つることであり、正法治国、国土安穏のためには、この本門の本尊と戒壇と題目の三大秘法の正法を立つることこそ肝要であると仰せあそばされているのであります。
また「安国」の両字については、
「文は唯日本及び現在に在り、意は閻浮及び未来に通ずべし」(同5)
と仰せられています。
つまり、国とは一往は日本国を指すも、再往は全世界・一閻浮提を指しているのであります。また、この『立正安国論』の対告衆は時の最高権力者・北条時頼でありますが、実には一切衆生に与えられた諌言書であります。
すなわち『立正安国論』は、大聖人様が日本国の上下万民が謗法の重科によって、今生には天変地夭、飢饉疫病ならびに自界叛逆難、他国侵逼難等の重苦に責められ、未来には無間大城に堕ちて、永劫にわたって阿鼻の大苦に責められることを悲嘆せられ、身命を賭して、北条時頼ならびに万民をお諌めあそばされたところの折伏諌暁書であります。
されば、今日の混沌とした現状を見るとき、今こそ我々は『立正安国論』の御正意を体して、一切衆生救済、仏国土実現を目指して、僧俗挙げて折伏に励んでいかなければなりません。
なぜなら、今回の東日本大震災をはじめ、国の様々な混乱の原因は『立正安国論』に照らして見るに、まさしく、
「世皆正に背き人悉く悪に帰す」(御書234)
故であり、その根本原因は、すべからく邪義邪宗の謗法の害毒にあるからであります。したがって今、私どもは、
「早く天下の静謐を思はぶ須く国中の謗法を断つべし」(同247)
との御金言を肝に銘じて、一人ひとりが天下の静謐を祈り、国中の謗法を断つべく、折伏を行じていかなければならないのであります。
所詮、天下泰平・国土安穏は、我らが等しく願うところであります。
仏法には依正不二の原理が説かれておりまして、正報たる我ら衆生と依報たる国土世間とは、全く無関係にあるわけではありません。『瑞相御書』には、
「人の悦び多々なれば、天に吉瑞をあらはし、地に帝釈の動あり。人の悪心盛んなれば、天に凶変、地に凶夭出来す。瞋恚の大小に随ひて天変の大小あり。地夭も又かくのごとし」(同920)
と仰せであります。
すなわち、正報たる我ら衆生が一切の謗法を捨てて、実乗の一善たる本門の本尊に帰依すれば、妙法蓮華経の計り知れない力用によって、我ら衆生一人ひとりの生命が浄化され、それが個から全体へ、衆生世間に及び、社会を浄化し、やがて依報たる国土世間に及び、仏国土と化していくのであります。
逆に、我ら衆生の生命が悪法によって濁れば、その濁りが国中に充満し、依報たる国土の上に様々な変化を現じ、天変地夭等となって現れるのであります。
『立正安国論』には、
「若し先づ国土を安んじて現当を祈らんと欲せば、速やかに情慮を廻らし怱いで対治を加へよ」(同248)
と仰せであります。
国土世間が安穏であることは、我々の幸せにとって極めて大事なことであります。そのためには、謗法を対治しなければならないのであります。
すなわち、すべての混乱と苦悩と不幸の原因は、ひとえに邪義邪宗の謗法の害毒にあり、この謗法を対冶し、折伏を行じ、苦悩にあえぐ多くの人々を救っていくことが今、我々に課せられた最も大事な使命であることを知らなければなりません。
されば、我ら本宗僧俗は、遠くは一天四海本因妙広宣流布を目指し、近くは来たる平成ニ十七年・三十三年の目標達成を目指し、まずは全支部が、一支部たりとも遅れを取ることなく、眼前の目標である本年度の折伏誓願を必ず達成されますよう心からお祈りを申し上げ、本日の挨拶といたします。
唱題行(7月31日)の砌
皆さん、おはようございます。
今月一日から行ってまいりました総本山における七月度の唱題行も、本日をもって終了いたします。今まで参加されていた皆様には、たいへん御苦労さまでした。
また、今日は全国の少年部の諸君もこの唱題行に参加され、まことに御苦労さまでございます。皆さんが、普段から所属の寺院、あるいは自宅で唱題行を行っていることと思いますが、ここ総本山において行う唱題行は、またひとしおのものがあると思います。
大聖人様は『四信五品抄』に、
「問ふ、其の義を知らざる人唯南無妙法蓮華経と唱へて解義の功徳を具するや不や。答ふ、小児乳を含むに其の味を知らずとも自然に身を益す。耆婆が妙薬誰か弁へて之を服せん。水心無けれども火を消し火物を焼く、豈覚り有らんや」(御書1114)
と仰せであります。
解りやすく言いますと、妙法蓮華経の五字について、その意義や難しい理屈などを知らない無智の人が、ただ南無妙法蓮華経と唱えているだけで、妙法蓮華経の意義を理解している人と同様の功徳が得られるかどうかとの問いに対して、子供が乳を飲むのに、その養分などは知らなくても、飲めば自然に成長する。また名医と言われる耆婆の作る薬は、患者がその薬の調合がどうなっているかなどを知らなくても、これを飲めば病気は治る。水には心はないが火を消し、その火はまた、ものを焼く。もとより、これは心あってのことではないと、このように答えられているのであります。
つまりこの御文は、南無妙法蓮華経の偉大なる功徳を示されたもので、たとえ南無妙法蓮華経の深い意義を知らなくても、御本尊様を信じきって一心に題目をあげれば、必ず大きな功徳が顕れると仰せられているのであります。
今日お集まりの少年部の皆さんのなかには、多少なりとも南無妙法蓮華経の意義について知っている人もいるかも知れませんが、大半の人は小学生でありますから、充分には知っていないと思います。しかし、それでも構いません。ただ一心に御本尊様を信じ、お題目をあげていくことが大事なのであります。
真剣にお題目を唱えていけば、御本尊様の偉大なるお力によって、必ず大きな功徳を頂戴することができるのであります。いかなる困難も、必ず乗りきることができます。いかなる障魔も、必ず打ち破ることができます。我々の欠点も、必ず長所に変わります。今、悩んでいることも解決します。大切なことは、御本尊様を信じ、真剣にお題目を唱えていくことであります。
どうぞ少年部の皆さんは、これからもお寺や自宅で唱題に励み、来たるべき平成二十七年ならびに三十三年の誓願達成へ向けて、少しでもお役に立つ人材となっていただきたいと思います。
今日は、このあと少年部大会が行われますので、これをもって本日の挨拶といたします。
日蓮正宗公式HP