平成23年4月度 広布唱題会の砌
(於 総本山客殿)
(大日蓮 平成23年5月号 第783号 転載)
皆さん、おはようございます。
本日は、四月度の広布唱題会に当たりまして、皆様には多数の御参加、まことに御苦労さまでございます。
まず初めに、このたびの東日本大震災により被災された皆様、同じく災害に遭われた本宗信徒の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
この大震災によって、多くの方が尊い命を亡くされましたことに、悲しみの念を深くするとともに、犠牲となられた方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げます。
被災者の皆様が、このたびの痛みを一日も早く癒され、再び未来へ向かって力強く立ち上がり、強盛なる信心をもってこのたびの大難を克服せられますよう、心からお祈り申し上げるものであります。
このたびの大震災を見て、かねてより大聖人様が『立正安国論』において警鐘を鳴らされていたことが空事ではなく、まさしく現実であることを厳しく知らされた思いであります。
『立正安国論』には、正嘉元(一二五七)年八月二十三日の大地震をはじめ、近年より近日に至るまで頻発する、天変、地夭、飢饉、疫癘等の惨状を見て、その原因は、世の中の人々が皆、正法に背き、悪法を信じていることにより、国土万民を守護すべきところの諸天善神が所を去り、悪鬼・魔神が便りを得て住みついているためであるとされております。そして、正法を信ぜず悪法を信ずることによって、三災七難等の災難が起きると、仁王経、大集経、薬師経等を挙げて、その理由を述べられ、これら不幸と混乱と苦悩を招いている原因はすべて謗法にあり、この謗法を対治して正善の妙法を立つる時、国中に並び起きるところの三災七難等の災難は消え失せ、積み重なる国家の危機も消滅して、安寧にして盤石なる仏国土が出現すると仰せられています。そしてさらに、こうした災難を防ぎ、仏国土を建設するためには、一刻も早く謗法の念慮を断ち、「実乗の一善に帰せよ」と諌められているのであります。
「実乗の一善に帰せよ」とは、万民一同が謗法の念慮を断ち、実乗の一善、すなわち三大秘法の大御本尊に帰依することであり、実乗の一善に帰することが、人々の幸せと国土を安んずる絶対不可欠な要件であると仰せられているのであります。
すなわち、仏法においては依正不二の原理が説かれ、主体たる正報と、その依りどころたる依報とが一体不二の関係にあることを明かされているのであります。
故に、大聖人様は『瑞相御書』に、
「夫十方は依報なり、衆生は正報なり。依報は影のごとし、正報は体のごとし」(御書918)
と仰せられているのであります。
よって、正報たる我ら衆生の六根のあらゆる用きが、そのまま依報たる国土世間へ大きく影響を与えているのであります。
例えば『諸経と法華経と難易の事』には、
「仏法やうやく顛倒しければ世間も又濁乱せり。仏法は体のごとし、世間はかげのごとし。体曲がれば影なゝめなり」(御書1469)
と仰せられ、さらにまた、先程の『瑞相御書』には、
「人の悦び多々なれば、天に吉瑞をあらはし、地に帝釈の動あり。人の悪心盛んなれば、天に凶変、地に凶夭出来す」(御書920)
と仰せられているのであります。
この依正不二の原理は、凡夫の智慧をもっては到底、計り知ることのできない、仏様の透徹された智慧であり、三世十方すなわち、無限の時間と空間を通覧せられて、宇宙法界の真理を悟られた仏様が明かされた絶対の知見であります。
したがって、宇宙法界の根源の法たる妙法に照らして示された、この依正不二の大原則を無視して、今日の如き混迷を極める惨状を救い、真の解決を図ることはできないのであります。
すなわち『立正安国論』の正意に照らせば、正報たる我ら衆生が一切の謗法を捨てて、実乗の一善たる三大秘法の随一・本門の本尊に帰依せば、その不可思議広大無辺なる妙法の力用によって、我ら衆生一人ひとりの生命が浄化され、それが個から全体へ、衆生世間に及び、社会を浄化し、やがて依報たる国土世間をも変革し、仏国土と化していくのであります。
反対に、我々衆生の生命が悪法によって濁れば、その濁りが国中に充満し、依報たる国土の上に様々な変化を現じ、天変地夭等となって現れてくるのであります。
これが『立正安国論』に示された原理であり、この『立正安国論』に示された大聖人様の御正意を体して、仏国土実現を目指して一切衆生救済の慈悲行たる折伏を行じていくのが、我ら本宗僧俗の大事な使命であります。
もちろん、今、大震災の復興へ向けて、各機関の方々、ボランティアの方々、国内のみならず、国外からも支援の手が差し伸べられていることは大いに評価すべきであり、賞賛に値する行為であることは間違いありません。
しかしまた、さらに根本のところから、仏法の視点に立って、今、我々がなすべきことは何かといえば、私ども一人ひとりが『立正安国論』の御理想実現へ向けて、一人でも多くの人に、また一日でも早く、一人ひとりの心田に妙法の仏種を植え、折伏を行じていくことが、今、なすべき最も大切なことであります。
どうぞ、皆様には、
「大悪をこれば大善きたる」(御書796)
との御金言を確信し、僧俗一致してますます信心強盛に折伏に励まれますよう、心から願うものであります。
なお、今回の大震災に当たり、宗門といたしまして義援金を募集したところ、全国の寺院、僧侶、寺族、御信徒から多くの寄金をお届けいただき、心から厚く御礼を申し上げます。このあと、宗務院におきまして配分などを検討の上、災害復興に向けて供してまいりたいと思います。皆様方の御協力に心から感謝申し上げ、この席を借りて厚く御礼申し上げます。まことに有り難うございました。
以上、本日はこれをもって挨拶とさせていただきます。
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