とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

絵に恋をする

2013-01-06 23:16:23 | 日記
絵に恋をする



 ジュリー・マネの肖像(ベルト・モリゾ)

モリゾの女性肖像画の中では私の最も好きな作品である。目すがたが愛くるしくて、じっと見ていたい作品である。


 中村仙女の公演が終わってから、問い合わせが相次いであり、事務局の古賀さんは対応に追われていました。今度は何時仙女は来るのか、地元の演劇の公演も加えてほしい、他の俳優との共演を実現させてほしい、・・・等々の内容で古賀さんも嬉しい悲鳴を上げていたそうです。それから岡田さんの農園にも問い合わせがあり、出雲に農業をしながら定住したいが、住む家を探してほしい、という農業志向の若者が数名名乗りをあげたそうです。

 ああ、畝本さん、私です。ある日、学芸員の坂本さんから電話がありました。

 反響がすごいようですね、嬉しいですね。

 ええ、ええ、ありがたいことです。

 美術館の入館者も増えたそうで・・・。

 そうです、そうです、ありがたいことです。・・・この前、若い男のお客さんが私に驚くようなことを・・・。

 えっ、どういうことですか。

 京子さんの受賞作、郁子がモデルのあの絵のことなんですが・・・。

 それが、どうしたんですか。

 モデルの方に会わせてくれと言うんですよ。

 へえー、そりゃどうしてですか。

 会ってお話がしたいとか言うんですよ。

 そりゃ、意味深ですね。

 ええ、びっくりしました。

 それでどう仰ったんですか。

 いや、親の私としては少し警戒しなくてはと思い、貴方はどこのお方ですかと聞きました。

 どこの・・・。

 地元の方でした。で、このモデルが好きになったと言うんですよ。

 そりゃただごとじゃないですね。

 仕事のことも聞きました。地元の劇団のお方でした。郁子の噂を聞きつけて、公演の準備のときも様子を見ていたそうです。

 ほほう、そりゃ、光が見えてきますね。

 私は演劇のことは少しも分かりません。しかも、郁子がご縁劇場を続ける気持ちがあるか確かめてもいません。

 ということは・・・もしかしてつれない返事を・・・。

 いや、・・・随分迷いました。

 それで・・・。

 その男の目を見ていたら、これは勘ですが、真剣そのものという気がしたんです。

 ほほう、それで・・・。

 名乗りました、私は父親ですと。

 えっ。

 そうしたら、その男の顔が真っ赤になって恥ずかしそうな表情になりました。

 ・・・。

 本気ですか、と聞きました。

 ・・・。

 その男、もちろんです、とはっきり言いました。

 いい話だと思います。これもご縁ですね。私は、大きな光の輪の中に入っていくような気持ちになりました。

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