とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

出雲画廊にて

2013-06-24 23:28:12 | 日記
出雲画廊にて



 銀座(フリー画像)

 
 冴子さんの電話が気になっていたので、久しぶりに出雲画廊に出かけました。養子の靖男君がすっかり店に馴染んで愛想よく出迎えてくれました。店内の作品を回って見ると、壮観でした。京さん夫婦の作品を中心に、笙子さんの巫女シリーズ、巨匠大島俊太郎の作品がずらりと並んでいました。それに、治子の作品も多数出ていました。

 靖男君、すごいね。見応え十分だよ。

 ご縁美術館にも数点買い上げていただきました。

 そりゃよかった。

 靖男君もセールスするの。

 ええ、地元は私の担当です。県外、主に銀座の画廊ですが、千賀子さんの担当で、やっと道がつきました。

 千賀子さんて、だれ。

 笙子さんのお姉さんです。

 えっ、あの美術雑誌の記者・・・。

 ええ、そうです。退職してこちらの店のセールスしていただいています。あちこち顔がきくので随分さばいていただきました。

 しかし、彼女、思い切ったことをしたね。

 ええ、義母も驚いています。・・・そこへ冴子さんが現れました。

 冴子さん、頼もしいね。二人も従業員が出来て。

 千賀子さんは予想外でした。急にお手伝いしたいと言い出したので・・・。京子さん夫婦を高く評価しているようだし、笙子さんを早く中央に出したいという気持ちもあって、それで決心したようです。

 鬼に金棒だね。冴子さん、貴方の仁徳だよ。

 そんなことはないでしょ。銀座と旨く繋げてくれたので助かりました。

 で、話は変わるけど、この前の話ね、もっと詳しく知りたいんだけど・・・。長柄さんからは随分こき下ろされました。でも、やはり、私は引っ込むことはできないと覚悟しました。

 長柄さん、私のところへも電話してきて、皮肉を言ってたわ。急に気持ちが変わったみたいですね。

 いや、そこがよく分からないんだけど・・・。私は善意の忠告だと受け取っています。

 善意・・・、あの人性格いいからね。

 それで、倭歌子さんのことだけど・・・。

 市川翠園の弟子だということは千賀子さんから聞いて驚きました。

 千賀子さんから・・・。

 ええ、あの人はときどき会ってたみたいです。

 素直に引き受けたんですか。

 喜多川さんの誘いだったので、修業のつもりで引き受けたらしいです。

 でも、郁子さんはどう受け取るか・・・。

 いや、その点も喜多川さんは見通していますよ。

 というと・・・。

 郁子さんも将来ある身、戦いますよ、立派に。

 受けて立つ・・・。

 そうです。それから・・・。

 それから、なにか・・・。

 ええ、これは私の予想ですけれど、・・・引き抜くことも考えているんじゃないかと・・・。

 引き抜く。

 ええ、喜多川さんならやりかねない。

 怖い男だね。

 二つの劇団を統合することも考えいるんじゃないですか。

 統合。

 そうです。そうなると集客力はすばらしいものになります。

 怖いね。ぞっとする。・・・私は喜多川さんが怪物に思えました。

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