とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

クレド サラヤジ

2010-08-22 06:26:22 | 日記
クレド サラヤジ



 「クレド サラヤジ」。この言葉の日本語訳は、「それでも生きていかなくちゃ」という意味である。私の愛読書となったパク・キョンナム(朴慶南)さんの詩画集(北水刊)の表題である。難しい本ではない。セキ・ウサコさんのメルヘンチックな絵がほんわかとしたいい雰囲気を作り出しているので、ミニ絵本と考えてもいい。キョンナムさんは米子市出身の女性エッセイストである。
 筆者の「人生のエッセンス」が各ページにほんの数行の文章でつづられている。「好きになる第一歩は/感じること/ふれることだよ」。「自分が好きになった人でしょ/自信を持ってぶつかっていけばいい」。例えばこういうページを読むと、忘れていた何かを思い起こさせてくれる。
 また、「生きているということは/自分が何か役に立つことがあるからじゃないか/と思うんです」という言葉に接すると、来し方を振り返り、そして今の自分の生きざまを内省し、うん、そうかもしれない、自分も何かの役に立っている! と思えてくる。こう思うことができれば、日増しに存在感が希薄になっていくように思える自分を内から支える柱となる。
 キョンナムさんの両親は幼い頃日本に来た。だから、キョンナムさんは日本で生まれ育った在日韓国人二世である。「この言葉(クレド サラヤジ)は、両親の大切な故郷の言葉です。ときおり、祖母や母がふっと口にするのを聞いて育った私も、たまーにつぶやいてみます」。すると、力が湧いてくるという。
 韓流ブームの昨今、韓国語(朝鮮語)を耳にする機会が多くなった。そんな中で、この「クレド サラヤジ」という言葉は、韓国という国を私に近づけてくれた。(2006年投稿)

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