とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

洋画の世界

2011-12-14 23:11:25 | 日記
洋画の世界





 グイド・レーニ(1575年~1642年)の「受胎告知の天使」(Landesmuseum, Oldenburg)

 私は今日天気がよかったので久しぶりに繭篭りの家に出かけ、草取りをした。草取りといってもあまり伸びていなかったし、枯れ草が多かったので時間がかからなかった。そして、洋風の窓がある例の部屋に座って、西洋画が好きだったというこの家の娘さんのことを考えた。

 ああ、長柄さん、どうも、今あの家から電話しています、・・・。私はその部屋からケイタイで電話した。急に確かめたいと思ったからである。

 ・・・ええ、それで、この前の話ですけどね。長柄さん、どうして急にあんな話をしたのですか。

 あっ、そうですか、それで・・・。ごめんなさい、急に、・・・。気にされたんですか。と長柄さん。

 そりゃ、気になりますよ。あれからいろいろ調べました。

 ごめんなさい。ごめんなさい。

 その部屋にいますけど、絵とどう繋がっているのか分かりませんが、・・・。

 いえね、彼女、その部屋に美術全集たくさん置いて読んでました。

 そうですか。その本も全部持って行ったんですか。
  
 いえね、とにかくたくさん積んであったので全部持って行くのは諦めたようで、たくさん処分を頼まれました。その時、好きな画家の話をしてました。

 えっ! ということは彼女幅広く研究していたということですね。

 そうだったみたいですね。

 すると、ですね。彼女たち家族が家を出ることとどういう関係があるのですか。・・・もしかして彼女は実の子どもでなかったとか、・・・。

 いや、そんなことはありません。実の子どもです。

 ああ、そうですか。・・・あのー、立ち入ったことを聞きますが、お母さんとの関係は旨くいっていたんですか。

 いやー、そんなことは私は分かりません。・・・何にも変な噂などなかったですね。

 そうですか。じゃ、お父さんとはどうですか。

 いやー、それもよく分かりません。

 そうですか。ケイタイを持ちながら私は困り果ててしまった。切ってしまおうと思った。すると、長柄さんが気配を察したのか、思わぬことを言った。

 彼女、家にきたとき変なことをときどき言ってました。

 どんなことですか。

 えーと、なんだっけ、・・・ジュタイなんとか・・・。

 受胎告知ですか。

 ああ、そうです。

 ・・・。

 私はまた奇妙な世界、というか、暗くて奥深い世界にさまよい出たような気分になった。

 
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