とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

2010-09-04 21:54:21 | 日記





  

 先月下旬に小グループで松江の寺社巡りをした。当日は生憎の雨模様だったが、かえって風情があった。奥谷の春日神社の狛犬を見、桐岳寺の庭園を訪ね、城山に登って松江神社を拝んだ。そのときである。お宮の境内の樹木に赤いきれいな実が固まってなっていた。私は案内者のお方にその木の名前を聞いた。「オガタマノキです。巫女さんが持つ鈴の原型ですよ」。郷土のあらゆることを研究しておられるご高齢のそのお方はそう説明された。オガタマノキ? 私はそのときどこかで聞いたことのある名前だと思った。
 続いて一行は城山稲荷神社に参詣した。石段を登りかけると、両脇にさっき見た赤い実があちこちに固まって落ちていた。見上げると大木がそびえている。オガタマノキだった。稲荷神社の説明を聞き、石段を降りた。やはり登り口のところの赤い実が気にかかってしかたがない。私が一房拾うと、みんなもそれぞに一つずつ選んで拾った。私はなんだかものすごい宝物を神から授かったような温かい気持ちに満たされた。
 さて、そのオガタマノキの実である。案内者の説明によると、天照大神が天岩戸にお隠れになったとき、アメノウズメノミコト(女神)が誘い出そうと思ってその実を持って神々の前で肌も露になって舞ったという。私が後で『古事記』の記載を確認すると、「小竹葉(ささば)」となっていた。よくよく調べると異説があり、オガタマノキの実を持って踊ったとも言われているという。その実の形を模して後の世に巫女さんの鈴が作られたそうである。
 思わぬ出会いは、優れた「先達」がいてこそ叶うものだとつくづく思った。(2006投稿)

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