とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

実父と養父

2013-03-04 23:01:23 | 日記
実父と養父




伊勢 水屋神社

 椋の木がご神木の神社は全国に多数あるようである。この神社は樹木、拝殿ともに端正で素晴らしい景色を作り出している。画像拝借多謝。

 小仲笙子、遊木信吉。・・・この二人の縁談は大きな山場を迎えました。二人は長柄さんの家で会ってお互いの気持ちを確かめ合いましたので、宮司の遊木太郎夫妻に後押しされながら私が養父の小仲渓川画伯と実父の小室新之助氏との説得役を果たさねばならなくなりました。どちらも面識はあるもののこと縁談となるとどう転ぶか分かりませんので、慎重に話を進めるように努力しました。先ず小室さんの工房に出かけました。すると、小室さんは少しも拘らない様子で、もう、養女に出した娘ですから私がとやかく言う筋合いではない、とあっさり仰いました。そういう返事を頂いた私は次に養父の小仲さんに電話しました。


 ああ、お久しぶりです。出雲の畝本です。

 あっ、畝本さん、どうも・・・、何用で・・・。

 ええ、実は縁談なんです。

 縁談。誰のですか。

 いえね、お宅の笙子さんです。

 誰か養子にでも来てくれるお方がいるんですか。

 いや・・・、まことに申し上げにくいのですが、お嫁さんとしてぜひというお方がおられまして・・・。

 嫁にですか。

 そうです。

 うちの跡取りなんですが・・・。

 いや、それは私も重々存じ上げております。

 それで、本人はどう言っているんですか。

 いずれ二人でお願いに・・・。

 相手はどんな方ですか。

 遊木信吉と言いまして、出雲のお宮のご長男です。

 お宮の長男。

 そうです。

 お宮ですか。

 笙子さんは出雲大社で巫女修業なさっているわけですが、信吉さんも神職の勉強をしていまして・・・、それで知り合われたようです。

 ええ、巫女のことはむしろ私が勧めました。

 えっ、お義父さんが・・・。

 そうです。家は代々神道ですから。

 そうですか。・・・それでは、ちょうど・・・。

 しかし、あまにも急な話で・・・、しかも本人から何も聞いていません。あなたから先にお話があるとは思いませんでした。

 あっ、これは大変出過ぎたことをいたしました。お許しください。

 はっはっはっ、貴方にお会いしたときから思っていましたけれど、貴方はほんとうに不思議といいますか、面白いお方ですね。

 ええ、色んなお方にそう言われております。少々出過ぎたところがありまして・・・。

 はっはっはっ、少々ではないですね。

 いや、はや、もう言いようがありません・・・。

 ・・・分かりました。

 えっ、じゃ・・・。

 一度そのお方に会ってみたいですね。

 ええっ、ありがとうございます。・・・私は舞い上がってしまいました。

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