医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

カルシウムを制限しないと尿路結石になるのか

2005年11月14日 | 生活習慣病
尿路結石は1,000人に2人の割合で発生します。激しい痛みを伴い、女性の5%と男性の10%は70歳になるまでに一度は発症するといわれています。再発することも多く、2回以上腎結石が起こった場合には再発の危険性は大きくなります。石の種類は蓚酸(しゅうさん)カルシウム、尿酸アンモニウム、リン酸カルシウムなどさまざまですが、カルシウムによる結石が最も多く、結石全体の75%から95%を占めます。男性で2倍から3倍多く、普通20歳から30歳までに現れ再発も良く起こります。カルシウムは蓚酸(最も頻度が高い)、リン酸、炭酸と結合して結石を作りますから、低カルシウム食は尿路結石を予防するという印象を受けがちです。

この「印象」というのが科学を曲げてしまう事がよくあります。

N Eng J Med. 2002;346:77(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★☆☆☆)からの報告です。

蓚酸カルシウム石の再発性の尿路結石があり高カルシウム尿症の男性患者120名が5年間無作為試験で調査されました。60名は通常のカルシウム(30mmol/日)だが動物性蛋白(52g/日)、塩分(50mmol/日)と減量された群、他の60名は伝統的低カルシウム食群(カルシウム10mmol)に分けられ比較されました。

結果は、5年で正常カルシウム・低動物性蛋白・減塩食群60名中12名、低カルシウム食群60名中23名で再発が生じました。低カルシウム食群と比較して、正常カルシウム・低動物性蛋白・減塩食群の再発の危険率は0.49 (P=0.04)と有意に低い事が判明しました。観察中、尿中カルシウムは両群とも170mg/日まで有意に減少しました。尿中の蓚酸分泌は低カルシウム食では増加しましたが、正常のカルシウム・低動物性蛋白・減塩食群では減少しました。

この論文では、再発性尿路結石の患者に対する低カルシウム食ダイエットの有効性には疑問がある。尿路結石の患者には低カルシウム食ダイエットよりも低動物性蛋白・減塩食ダイエットが重要であると結論づけています。

しかし、いまだに尿路結石に対して低カルシウム食を促しているお医者さんも少なからずいます。

さて、明日からダラスで開かれる学会に行ってきます。ネットが繋がる環境でしたらアップしたいと思います。

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