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風に向かう刻

主にオートバイ。時々クルマ。
なんだかんだと永年のブログです。

ひみつどうぐ登場!

2010年05月22日 | CBR1000RR 整備

 今日は回りくどい事抜きで参ります( ̄ー ̄)ニヤリ
ついに手にいれちゃったんですよね~コレ!

01_pullercage

 気になる中身は後程。(中身の写真がおもいっきり写ってますが)

_______回想_________________________________
 まずは思い出話から。
あれは町田の鶴川辺りに住んでいる(正確には麻生区)頃の事でした。
当時、まだ若かった私は色々と強引だったのだと思います。

 愛車NSR250R(MC21)の整備を、少ないお小遣い(笑 の中で買った
ホームセンターの安い工具を用い、ノリと勢いで頑張っていた頃。
ステアリングステムのロックナットを貫通ドライバーで外したり
ステムベアリングを貫通ドライバーで打ち抜いたり、
ナメたブレーキパッドの吊りボルトプラグを貫通ドライバーで(以下略

 貫通ドライバーはいい相棒だったのだとは思います。
ですが、そんな私にもどうにもならない敵って奴が現れまして。

 それが、【 ホイールベアリング 】だったのです。
たかがホイールベアリングと侮る無かれ、
ホイールの左右に位置し、アクスルシャフトが貫通するこやつは
各々のベアリングの内側にぴったり接するかたちの
ディスタンスカラーというパイプ状の軸受けが入っています。

 ベアリングが適正に打ち込まれている場合、
それこそ髪の毛が通る程の隙間もないのが当然の状態で
必殺の”貫通ドライバー”でも、反対側に打ち抜くことは不可能でした。

 そこで思い出したのは、当時近所に出来たばかりのTSR町田店。
自宅から150mぐらいの場所だったので、天佑とばかりに駆け込みました。

 ところが店に入ると、店員さんの視線が痛いんですよね。
奥にはちょっと強面の偉い感じの男性がいたりと気圧されつつ
店員さんに事情を説明しようとすると・・・

「君、その格好で来たの?(笑」

よく自分の姿を省みると、両腕にフロントホイールとリアホイールを通し
マウンテンバイクに跨りつつ、手も顔も油汚れで真っ黒。
上半身は微妙にアロハシャツ気味で、下半身は長めの半ズボンでした。

『あー・・・こりゃ明らかにオカシイ人だわ(汗』

そう恥じ入るとともに、店員さんに改めて事情を説明すると
当初の印象とは随分と違い、
流石はレース屋さんといった感じのプロ集団でありながらもとても丁寧。
持ち込みのホイールにも嫌な顔もせずに作業をしてくださいました。

 作業の間、強面の偉い感じの方とも暫し話をさせて頂きました。
そのすぐ後に知ることになるのですが、
その方はなんとTSRの藤井代表だったようです(笑
「レースはいいよ!」「サーキット走ってみない?」のような話で
「TSRのトラックで東京組を鈴鹿にバイクを運んでくれる」とか、
「ツナギはどこどこのメーカーが安くていい」とか、
「TOBYのステアリングダンパーは最高だ!」とかとても熱意のある人でした。

 今でも多少悔いが残っているのですが
当時まだ青かった私は、その期待に応えきれずそのまま・・・。
引っ越した事もありますが、気が付いた時にはTSR町田店は閉店していました。 
 
 
 その時、TSRのメカニックの方が利用されていた工具が

02_puller_inner

 このスライドハンマー装備のベアリングプーラーとヒートガンだったのです。
流石レース屋という手際で、非常に巧みな作業だったのが鮮明に残っています。

 TSRほどのお店では、私の安物と同じ事は無いとは思うのですが
今回買った物とTSRメカ使用の物は、ケースから中身までかなり似ています。
購入に至った動機の一部には、そのイメージもあります。

_______回想終わり_____________________
 

 それでは早速、ひみつどうぐを使用して作業に入るとしましょう♪
私のCBR1000RRは、走行が23,000km程度になりましたので
ホイールベアリングの交換時期としても適当であり、
先日の車検の帰りに初めて違和感を感じたのも理由で今作業を行う事にしました。

03_orderparts

 工具入手よりも早い段階で、これまたNSR時代からよくお世話になっている
府中の【 パーツランドM's 】さんで純正部品の注文をさせて頂きました。
純正パーツだけでは流石に申し訳ないので、少量のTTS(2stオイル)も注文。

 それに加え、近隣のホームセンターや工具屋を回っても適当なものがなかった
600℃まで加熱出来るヒートガンもネット経由で手配しておきました。
 
 
___________Fホイールベアリング外し_______________

04_fwheelremove

 まずはホイールカラーを手で外し、
ダストシールはついたままでの取り外し作業です。
件の工具の爪を、ベアリング端についたRに引っ掛けて内側からボルトで固定。
上部にスライドハンマーを取り付けた後、ヒートガンでホイールハブを加熱。
ベアリング以外の部分を熱膨張させ、抜けを良くするのが目的です。

05_fpullout

 スライドハンマーに程良く衝撃を与える事で
実に簡単に、そしてスマートに抜き取ることが出来ました。
ダストシールと抜けたベアリングが、写真左の特殊工具についています。
 ホイールの真ん中には、例のディスタンスカラーが確認できます。
このカラーは、両側のベアリングからの固定がなければ完全にフリーなので
そのままそっと抜き取り、反対側も同じ要領でベアリングを抜きました。

 マニュアルなどでは、ブレーキディスクを外しての作業指示がありますが
ブレーキの固定ボルトは再利用不能なので、敢えて外さずに作業しています。
勿論、ブレーキディスクは歪むと大変に危険な部分なのですが
このスライドハンマー付きのベアリングプーラーは、
ホイール自体の内側に押し込む方向での力が一切掛からず、
”ベアリングだけを外に叩き抜く”ので、ディスク本体に一切の力がかかりません。
この辺りも、この特殊工具の素晴らしい所ですね。

 余談ですが、クランクケースなどのベアリングを抜くときには
更にこの特殊工具の真価が発揮されます。
複雑な形状のケース部に、櫓を組んで抜くタイプのプーラーは適切ではありません。

 
___________Rホイールベアリング外し_______________

06_rwheelremove

 リアホイールには、ドリブンフランジ(スプロケットハブ)もついていますので
まずはホイール外側に直にベアリングがついているディスク側から。
要領はフロントと同じですが、駆動輪だけに大きめのベアリングが使用されています。

07_rpullput

 こちらもなんなく取り外し完了です。特殊工具バンザイ!
フロントに比べると、かなりごついディスタンスカラーが使われています。

08_hubcase

 同じ要領で、
ドリブンフランジを取り外した反対側もベアリングを取ります。
この銀色の空間には、ハブダンパーが入りますが作業の都合で外してあります。
ハブダンパーの話は後ほど。

___________ドリブンフランジ、ベアリング外し_______________
 
 続いてドリブンフランジのベアリング取り外しです。

09_driven_color

 ベアリングプーラーが引っ掛からないドリブンフランジカラーは
ソケットレンチのエクステンションバーを使って打ち抜きます。
ベアリングと違い力の掛かっていないパーツなので、軽く抜くことが出来ます。

10_outrange

 続いてドリブンフランジベアリングの打ち抜き・・・なのですが
ここで想定外(なんも考えていなかった)問題が発生(笑
写真のプーラーは30mmなのですが、まさかの内径28mm。
 
 ベアリング発注時に、28mmだという事は知っていた筈なのに
アクスルシャフトが25mmなので、てっきりそれと同じだと勘違いでした。
冷静に考えると、カラーが内側にあるわけですから25mmな訳ないのです。
今回入手したベアリングプーラは
…25mm.30mm.32mmというサイズなので適応するものがないのですが、
ドリブンフランジは反対側から打ち抜ける構造なのでそのようにしました。
手元にあった最大のソケットで、31mmのものを使用してバランスよく抜きます。
 
 
 
___________外したパーツ一覧_______________

11_removedparts

 この作業で外したパーツはこれで全てです。
ベアリング・シール・ダンパ類だけでも沢山ありますね。
 
  
 ここで気づいたのですが、
私はベアリングドライバーを持っていないのです。
(ベアリングを適切に打ち込む為の工具です)
以前からソケットで対応していたので、特段問題は無かったのですが
CBR1000RRのベアリングは、流石に250ccのNSRよりは大きく対応出来ず。
手持ち最大の31mmというサイズでもダメでした。 

 で。ちょこっと近所の業務用工具ショップに買い物です。
店員さんに「ベアリングドライバーって扱っていらっしゃいますか?」
と問うも、???という反応で全くご存じないようでした(笑
一応手を尽くして調べて下さったのですが、結局扱い無し。
土建屋さんが使う工具屋さんには流石に無理だったようです。
仕方がないので、やはり巨大ソケットで対応することに。

12_socket

 手持ちの玄翁より重い450gのハンマーと共に
33mmと36mmの2つを購入して参りました。
ベアリングのアウターレースを叩く為のものなので、
外径を基準に選んだのですが・・・適正なものは1個5000円程度でして
流石にそれは買えないので、ギリギリのサイズのものを選びました。
 
 
 
____________ベアリング下拵え_______________

13_oldbear

 まずは古いベアリングの状態から確認です。
手で回す限りでは、回転に引っ掛かりなどは皆無ですが
トルクが掛かった時に少し違和感を感じていました。
シールを外すと、中のグリスは赤黒く変色していましたが
錆などはなく、状態もそこまでは悪くないようです。

14_newbear

 続いて新品のベアリングも同様にシールを外し
手持ちの耐水、対錆、耐熱のグリスを叩き込んでゆきます。
初期状態でも必要充分なグリスが塗布されていますが
ここは気分的なものですね。グリスが外に圧をかけない程度。

 この作業は、全てのベアリングに対して行います。
 

  
________ドリブンフランジベアリング取り付け________
 

15_hubassy

 カラーとインナーレースの接触面を脱脂し、
カラーをベアリングに打ち込みます。
駆動トルクが直に掛かる場所ゆえに、二重ベアリングになっています。

16_dobuleshot

 ドリブンフランジ側のベアリングが入る場所を”脱脂”し
ベアリングの周囲も”脱脂”した上で、ソケットを使用して打ち込みます。
内側についている傷のようなものは、ソケットから剥離したメッキです。

 ここで敢えて【 脱脂 】と強調するのには理由があります。
よく、ネットなどの情報を見ると
ベアリングを正確に打ち込む手間を手抜きする為に、
ベアリング及びホイール側にグリスを塗布する記述がありますが
それでは、【 ベアリングを圧入する意味が無い 】ですよね。
特定の位置で定位し、動かないようにする為の圧入ですから
そこにグリスの介在があっていいはずがありません。

 その証拠に、サービスマニュアルには
ダストシールにはグリス塗布の指示がありますが、
ベアリング側には塗布の指示がありません。

17_driven_color

 ドリブンフランジの反対側から
適正な位置にデュアルベアリングが打ち込まれている事を確認します。
 
 確認後ダストシールを取り付け、リップにグリスを入れて完了です。
 
  
_______Rホイールベアリング・ダンパ取り付け___________
 

18_rearhub_dumperless

 CBR1000RRは右側からのベアリング取り付けが前提なので
ブレーキディスク側のベアリングとシールを打ち込んだ後
裏返してホイールハブ側を上面にし、
ディスタンスカラーを入れた後でこちらもベアリングを打ち込み。
 
 この窪みには、ハブダンパーが入ります。

20_dumper

 これが新旧ハブダンパーです。
左が新品、右が古いものですが、写真だと判りにくいものの
古い方が僅かに肉痩せしていますね。
叩いて衝撃を与えると、古いものは硬質な反応が返ってきます。

 流石に4年、23000kmも乗ると硬化して当然ですね。

21_dumperset

 新品のハブダンパーを取り付けてゆきます。
駆動トルクの掛かる側が厚く成型されていますが、
配置するだけで、そのように並びます。設計にちょっと感心。
 

22_rearcomp_2  

 最後に、先に組み上げて置いたドリブンフランジを
ハブダンパの隙間に差し込んでリアの作業が完了です。
アクスルシャフトを取り付け、ごろごろしてみました( ̄ー ̄)
いやぁ、感動的な程に気持ちよく回りますね。
ディスタンスカラーとインナーレースの当たり具合も問題ないようです。
 
 
 ここでも性格が出るのですが
折角分解したところで、機能に関係のない汚れは掃除する気がありません。
スプロケの内側に油や汚れがついていようがなんの事もないのです(笑
 
 
___________Fホイールベアリング取り付け_______________

 それでは最期にフロントホイールのベアリングとシールです。
こちらも右ベアリングからの取り付けになります。

23_frontsetbefore

 まずは、脱脂した上で
ヒートガンでハブそのものをよく温めます。
そして、ベアリングをセットしソケットで・・・

・・・・!!!? ”すとんっ” とベアリングが収まりました。

これにはかなり驚きました。
勿論純正指定のパーツなので規格が違うとかではないのですが
リアに比べ、ハブ周りの金属の体積が少なく熱の周りが良かったのと
肉抜きも激しい構造が重なって丁度良く熱膨張したようです。

 少し見辛いですが、ハブの回りを観察すると
”中空”どころではない手の込んだ設計なようで
肉抜き穴からハブ内部はもとより、下の敷物まで見えるほどです。
純正ホイールでこの手のかけようは、流石フラッグシップSSですね。 

24_frontdistance

 続いて裏返してディスタンスカラーをセット。
そのまま加熱してベアリングを手でそっと押すと
またストンと入ってゆきました。
ホイルの熱が抜けると、一気に締まるので純粋に熱膨張のようです。
ベアリングとカラーの当たりの調整も容易で非常に助かりました。

25_frontcomp

 両サイドにダストシールを取り付け、リップにグリスを塗布。
ホイールカラーを入れてフロント回りも完成です。
 
 
 
 以上で、ひみつどうぐヽ(´ー`)ノを使用した
フロント・リアホイールの軸受け系パーツの総交換が完了です。
あとは車体に取り付けるだけですが・・・これは晴れた日にやる予定です。

 文章にすると長めになりますが、
構造を理解して行う分にはお手軽な作業でした♪
そうそう、今私の机の上には・・・

26_desk

 23,000km頑張ってくれたベアリングが置いてあります。
13,000kmぐらいがんばってくれたプラグもおいてあったりしますが
なんとなくこういうパーツって、身近に置きたくなりますよね(笑 


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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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う~ん。 (無為徒食)
2010-05-22 07:21:42
もはや趣味のレベルとはいえないのでは?
返信する
>徒食先生 ()
2010-05-22 21:53:26
コメントありがとうございます!

いや~それがそれほど・・・
まだまだ遊びの域を出ていません(笑

でも、ハブダンパーの交換はお勧めです!
純粋なゴム部品なので、劣化はそれなりにしている筈ですから
交換すると、シフトフィールからショックからと
随分と変わりますよ^^

ホイールさえ外せればあとは簡単に交換出来ますので
なさってみるのも良いかもです!
返信する
リヤタイヤを交換したときの感じでは、まだまだ行... (無為徒食)
2010-05-23 12:11:41
次の車検のときには考えてみます。

しかし、もう1か月以上乗ってないんですよ。
エンジンだけでもかけてあげなきゃ……。
返信する
こんにちは。 (はる)
2016-01-03 15:05:02
またまた失礼いたします。

ドリブンベアリングの内径が28で、
工具がハマらなかったとの内容でしたが、
工具の販売元によりますと、25の先端の対応が25~29となっていますが、実際は使えないのでしょうか?

自分もこの作業を近いうちにする予定ですので、ご教授下されば助かります。

また、別の記事で書かれていたベアリングドライバーは
フロント、リア、スプロケ側のすべてのベアリングに対応しているのでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。
返信する
>はるさん ()
2016-01-03 15:25:48
ご質問ありがとうございます。
お急ぎとのこと、たまたまPC前におりましたので返答致しますね。

 ドリブンスプロケットのベアリングの話ですが、
昨年末の今回作業ではなんの疑問もなく終わりましたので
あまり記憶に引っかかっておりません^^;
数年前は試した感じではあまり都合がよくなかったような・・・。


 ただ、そもそもが抜けない(抜きづらい)場所のベアリングを確実に抜くための工具ですので、
ドリブンスプロケットのように反対側から簡単にアクセスできる場合ならば、
当然ベアリングの再利用はないものとして、
私の用途ならば雑に叩き抜いても問題ないと考えています。

 貫通ドライバーでも、私がしたように適当なソケットでもです。
バランスよく叩けるならば手段はなんでもOKかと思います。


 
 他方の某工具屋のベアリングドライバーですが、
典型的な安物ですので、強度的、サイズ的に利用時の工夫は必要です。
そのまますんなり行くとはお考えにならないほうがよいと思います。
出来れば純正特殊工具がオススメですが、
確実に打ち込みたければせめて外径に合わせた専用サイズのものを用意された方がよいかと存じますよ。

 私の場合は、相手を壊さずにあたってくれればよかったので、
工具の多少の破損を伴いながら作業自体は完了しています。


 最後に蛇足ですが、
はるさんご自身のスキルレベルがどれくらいか存じませんので安易なことは申し上げづらいのですが、
ご質問頂く内容から、記事を書いた者の責任として申し上げます。

 ご存知の通りホイールも命に関わる重要な機能部品の一つですので、
くれぐれも確実に、工程上で少しでもおかしいと思ったらば乗る前にお近くのプロにご相談下さいね。
返信する
ありがとうございます。 (はる)
2016-01-03 21:30:30
いつもご丁寧な返信に感謝いたします。

もちろん自己責任にて、ご参考にさせていただきます。

正直、バイク人生の中でホイールベアリングを触るのは初めてです。
安全第一で行います。

繰り返しになりますが、ご丁寧な返信本当にありがとうございます。
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