さてさて参りましょうか、怒濤の午後編。
…とその前に。
昨日の日記をご覧頂いた方から、
『スペンサーって誰よ?』との突っ込みを頂きまして。
そういえばそうですよね、
バイク好きの僕でさえ、世代的に1周り以上程前の話。
あんまりバイクを知らない方々には、
どんな人間なのか想像もつかない事と思います。
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そこでざっと紹介させて頂きます。
フレディー・スペンサー氏は、
ロードレース世界GP(サーキットを走る最高峰のレース)で
1983年に史上最年少で500cc世界チャンピオンになり、
1985年には250ccと500ccに同時エントリーし、
共にチャンピオンになるというもの凄い結果を残した人物。
この双方の記録は、未だに破られていません。
勝ったバイクは当然HONDA。
それもNSRとあって、個人的には気になるライダーでした。
そのNSRですが、噂では彼にしか扱えない
”スペシャル”で”極端な”性格のマシンだとかで
今回の彼の講義では、
”そのマシンで如何にして勝てたのか”
という理由を垣間見た気がしました。
決して派手でも超人的でも無謀でもなく、
正に”意識下に置かれた操作”を極限まで高める事で
恐ろしいまでの性能を有した極端な性格のマシンを
操っていたのだということ。凄い男です。
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そんな彼の下、
昼食を摂りながらの短い昼休みが終わる頃。
午前中の講義では不覚にも、
降ろす暇がなく持ったままだった、
タンクバッグやらライディングジャケットやらを
バイクから外してロッカーに仕舞おうと
講堂に戻ると…
…講義始まってました!
もう、真っ青になりながら荷物をロッカーに放り込み
教室の後ろからヒョコヒョコと席に着きました。
本当にごめんなさい…。
ここから午後の講義が始まります。
主にコーナリングへのアプローチなどの内容。
ところが、午前中からの時間が押している影響で
ものの数十分で、ロードコース(もてぎフルコース)の
走行予約時間がやって来てしまいました。
相変わらず熱の入ったフレディの講義も
運営側のストップでやむなく中止。
フレディはかなり不機嫌そうに教室を後にしていました。
教壇側のドアを出ると、
運営スタッフの背中を『パーン』と叩いていました(笑
本当にちゃんと教えたかったんだなぁ…と、ここでも実感。
講堂を出ると、集合してロードコースの説明。
ここで僕、鍵をなくした事に気づくんです。
先ほどの遅刻の影響で、どこに行ったかわからず
とりあえずロッカーに走るも行方不明。
青い顔をしながら、説明に途中参加しました。
実際はその後の移動前に、
祈る思いで自分のバイクの所に走ると
リアシートを外すキーシリンダーに挿さっていました。
普段のバイク生活でもよくあるミスです。
ここで鍵が見つからなかったら相当なマヌケでした。
そして2グループ30台づつに別れて移動。
第一パドック側のコントロールタワー付近は
前日の日本GPの撤収作業中なので使用できないとの事で
裏ストレート側の、【東コントロールタワー】前に移動します。
程なく、国内仕様CBR1000RRらしからぬ
静かながらも全開な音でフレディが登場。
マシンは'08のトリコかな。ロスマンズっぽいツナギ姿です。
続いては、お手本の実演を兼ねて
30Rのヘアピンをデモラン。
長い脚ゆえ膝をガリガリやりながらも、
車体のバンクは必要最小限のままで
【恐ろしく安定した挙動】で駆け抜けて行きます。
3回ぐらいやってくれたのかな、
なによりも危なげない、安定感が際だつ走りです。
フレディがピットレーンに戻ってくると
いよいよ我々の走行時間の始まりです。
先導のCBR1000RRに跨るフレディ。
なんですかこの…格好良すぎる後ろ姿は。
身震いするようなオーラが出ています。
走行方法は、
30台づつに別れたグループで交代しつつ行われ
1チームは5台づつです。
各々にインストラクターの先導着き。
CBR1000RR、CBR600RR、CB1300SFなどが先導してくれます。
事前受付の段階で既に、
【車種毎に相性のいい】組み合わせで組まれており、
僕たちのチームは
先導がCBR1000RR(黒銀)であり、続いて
CBR1000RR('08)→GSX-R1000?→CBR1000RR('04)→CBR1000RR('07)→CBR1000RR(僕)
となっていました。
正直言ってこれは好都合でした。
殿を走らせて頂くことにより、後ろを気にせず好きに走れます。
先の赤グループ30台の走行を見つつ、
自分たちの走行開始を待ちます。
ここで、運営側の方から集合の呼び出しがかかりました。
皆で『なんだろ?』などと思いながら集合。
集合の理由は
【もてぎフルコースを、フレディの運転でタンデム】というもの。
ただ…倍率は実に6倍。
30人中5人しか当選しないものでした。
しかも、時間が押しており”実質は何人乗れるか解らない”との事。
『1人か…或いは2人か…無理なら諦めて』と主催者の弁。
そんな状態ですから、凄く魅力的な企画であるにも係わらず
大して期待もせずに抽選を待っていました。
すると、
【2番目に僕の当選番号が読み上げられました】
うおっ!!!!!!!!
派手なアクションまではしなかったものの、
これは本当にビックリしました。
実は最初、よくある”タンデム権”なのかと
軽く考えていたのですが…
フレディの本来の目的は、
『自分の右手の動きをよく見せるため』
だったんです。
それというのも、午前中の座学から始まり、
本日の全ての講義が”そこに集約されている”故。
この理由はまた後ほど。
当選のワクワクも冷めやらぬまま
先に走行していた赤ゼッケンの30台が戻り
いよいよ僕たちの走行時間です。
10秒おきぐらいづつ、5台セットで出てゆきます。
実はこの時が、僕のサーキット初走行。
お恥ずかしながらまだ走ったことがなかったんです。
先導車両も流石にプロ。
慣熟ということを熟知されておいででして
ダウンヒルストレートの終わりで180km/h程度、
130Rでも145km/h程度で済むぐらいに先導して下さいました。
これなら全く不安もなく走れます。
楽しすぎてあっという間に5周をこなし、ピットに戻りました。
そうそう、走行中にフレディーに抜かれました。
全く気づいていなかった所を
”スパッ”と華麗に抜いていかれました(笑
気づかない僕もどうかと思いますが、
'08国内のCBRは本当に静かです。
オンボードカメラでブレています。
右に映っているCBRがフレディ。
『GPライダーに抜かれた!』などと、阿呆な感動(笑
ピットに戻ると、
今度は入れ替わりで赤ゼッケンが出てゆきます。
ここでメットを取ろうとすると…
主催者の方が
『先ほどの抽選にあたった方はメットはそのままで』との事。
これは否応なく期待が高まりますね。
程なく、タンデム用のCB1300が用意され
一人目の当選者の方が呼ばれました。
乗車前に説明を行い走り出します。
この間、もうドキドキです。
数分後、我々が走った走行よりも圧倒的に早く
タンデムのフレディは戻ってきました。
続いていよいよ僕の番です。
フレディが車体を安定させてくれるCB1300に
後ろから乗ります。
フレディの背中をこんなに間近に見られるだけでテンションUP。
こちらもバイク乗りゆえ、
軽く、それでいて邪魔にならない程度に
フレディの腰をグリップします。
ここで『手はタンクに置いてね』との事。
バイク乗りなら解ると思いますが
ちゃんと操作するには必要な処置ですよね。
それ以外にも、”自分の操作を見せる為”もあるようでした。
ピットレーンを走り出し、驚きのスムーズさで加速してゆきます。
ここでまたバカをやらかしまして。
【メットのシールドを閉めてなかった】んです。
さりとて、走行中にタンクから手を放すわけにもゆかず
暫く我慢していたのですが、
なにせ速い。全く危なげないのに速いんです。恐ろしく。
メーターをチラっと見たら、
5速の時で6700rpm程度だったかな…
HONDAの公式車両なので、
180km/hリミッタは外してないでしょうから、
おそらく余裕で180km/hは出ていた筈です。
そんな状態でシールド無しでは肝心の
【フレディの操作】が見えません。
仕方がないので、ホームストレートあたりで手を放し
シールドを下げました。
そこで一安心、タンクに手を戻すと…
フレディに【ぺしっ】と右手を叩かれました。
続いて左手で、自身のスロットル操作を指し、
『ちゃんとみとけ』との合図。
ホントにアツく、真摯な先生です。
そこからは右手を完全に凝視。
この僅か数分間、間違いなく断言できます。
僕のバイク人生に於いて代え難い学習となりました。
敢えて言葉にすることはしませんが、
まさに神業、”そういう事”です。
しかしフレディは後に
『君達にも同じことが出来るんだ』と仰っていました。
僕もそう思います。いや、必ず成します。
興奮冷めやらぬウチに、
先に乗った方や、後に乗って戻ってきた方、
乗れなかった方々とフレディの操作について話したりしていると、
昨日の日記に書いた、
某誌の大屋さんからお声掛け頂きました。
「いつも拝見しています」などとお伝えしつつ…
大屋さんから質問をされました。
曰く、取材も兼ねて”時間が取れれば”抽選外ではあるが
タンデムさせて貰える予定だとの事でしたが、
ちょっと厳しいタイミングだったので
僕に質問されたようでした。
端的に申し上げて「凄かった」としか
言いようがない程ですが、可能な限りお伝えすると
同行のカメラマンさんがビデオカメラを構え
「録らせて頂いていいですか?」との事。
それも先ほどと同じ内容を話してくれとの事でした。
そして始まる、インタビュー撮影(笑
カメラ慣れなんてしてるわけもありませんから
さぞかし僕の受け答えは妙だった事でしょう。
とはいえ、これまた貴重な経験でしたね。
本誌に有効活用して頂けたら幸いです。
余談ですが、大屋さんは
雑誌で拝見するより数段イケメンでしたよ~(笑
そうこうしているウチに、
二本目の走行時間がやって参りました。
先ほどのフレディの教えを脳裏に刻み込み、
最初の2周は”ブレーキング”の再現に全力を費やしました。
残りの3周ほどは、ギアを1~2段落とし
”スロットルワーク”の再現に努めます。
自分のオンボード動画をみると、
1本目と2本目の安定感の違いが顕著です。
本当に貴重な学習をさせて頂きました。
朝一番の講義で、
『今日は速さを見に来たんじゃない』
と言っていましたが、そういう事だと理解しました。
そうそう、2本目もフレディに抜かれました。
今度はタンデムしているCB1300に、です。
左前に走っているCB1300がフレディ。
相変わらずスイスイと鮮やかでした(笑
速さは問題ではない、といいつつも
流石に2本目は1本目より20%程ペースアップ。
ウチの1000ccSS組みは、速めに先導してくれたらしく
前の組に追いついてはペースを落とすことがありました。
因みに後ろの組はミラーから見えない事が多い感じ。
ここでも殿の特権を活かし、色々な事を試させて頂きました。
気持ちよい2本目もあっという間に終わり
ピットロードに戻るとなにやら慌ただしい雰囲気。
走行時間が10分程あるらしく、
我ら黒ゼッケンチームがもうちょっと走れる事になりました。
気持ちよくもう1周。本日最後の走行。
走行後はまた集団にてASTPに戻ります。
講堂に戻り一息ついていると、
カジュアルな格好に着替えたフレディが再度入室。
生徒達に最後の質問タイムとなりました。
ここでも1時間程話してくださったのかな。
本来は【ライディング基礎講座】だというに、
ともすると、フレディが珍しくて見に来た人や
単なるフレディファン(コスプレ趣味含む)、
自称レーサーの失礼なヤツまで大きく包み込むフレディは
本当に凄い男でした。
流石に独自理論で挑発的な失礼な質問に対しては、
『僕はこのやり方で3度チャンピオン獲ったんだ』と
苦笑混じりに言っていましたが(笑
最後の講義も終え、
一度フレディが退室したあと、
数分してからもう一度戻ってきてくれました。
今度こそ最後。
”フレディとのふれあいタイム”です。
皆、思い思いに準備してきたアイテムに
次々とサインを貰い、写真撮影をしてもらってゆきます。
バイクのイラストやら色紙、
サインの為に買ったらしい新品ヘルメット、
ツナギから色々なものまで。
気さくにサインをしていってくれます。
ところが僕、なんにも用意していなかったんですよね。
元々、サインなんかに頓着が無いのもあったのですが
本日一日ですっかりフレディのファンになってしまいました(笑
気が付くとサイン会の列に並んでいました。
並びながら、サインして貰うものを考え…
唯一思いついたのが、
【フルフェイスメットのシールド】だったんです。
当然さっきまで利用していたもの。
お世辞にも綺麗なものではなかったのですが
他にサインを頂くものが思い浮かびません。
いよいよ順番が回って来まして、
英語でシールドにサインをお願いすると…
なんと、
【自分の袖でメットのシールドを拭いて】
サインをしてくれようとするんです。
もう『アワワワっなんという事を!』という世界ですよ。
実は、綺麗なシールドではないですが
直前にメガネ拭きで拭き上げてあったので
フレディの袖が汚れることは無かったのですが
こんなエピソードも、フレディの人格の現れですね。
この大切なシールド。
僕の宝物になってしまいました。
サインを貰うときに、主催者の方が
「もうこのシールド使えなくなっちゃいますよ?」
と気遣ってくれましたが、
無論です。使うつもりもありません(笑
…とここで我に帰る。
シールドなんて当然1枚しか持っていないわけです。
『帰りどーすんだ?…まあいいか』
ですね。なんとかなります、きっと。
最後にありがとうを伝え、握手をしてもらい。
写真も撮ってもらってから会場を後にしました。
駐車場では、主催スタッフの方にもお礼を述べ
数分雑談をさせて頂いた後帰路につきます。
3時間少々を持って無事帰宅。
本日の走行距離は487.6km(講習含む)でした。
シールドなしの帰りの高速は、
とても辛かったですが、そんなものが吹き飛ぶぐらい
本当に最高の体験でした。
胸を張って、
【バイク人生最高の思い出です!】
そんな事を言えそうな気分です。
本当にありがとう、フレディ!












