大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

明神男坂のぼりたい・50〔お祖母ちゃんをカバンに入れて〕

2022-01-23 06:40:55 | 小説6

50〔お祖母ちゃんをカバンに入れて〕 

    


 お祖母ちゃんをカバンに入れて多摩の山中に出かけた……。

 と言っても、お祖母ちゃんを絞め殺して、山の中に捨てにいったワケではない(^_^;)。

 だれでもそうだけど、あたしには二人のお祖母ちゃんが居る。

 お母さんのお母さんと、お父さんのお母さん。

 お母さんのお母さんの方は、石神井で、足腰不自由しながらも健在。

 カバンの中に入ってるのは、お父さんのお母さん。つまり父方の祖母。

 このお祖母ちゃんは、去年の7月に、あと10日ほどで88になるところで亡くなった。そのお祖母ちゃんの遺骨が、あたしのカバンの中に入っている。

 うちのお墓は、多摩にあるロッカー式のお墓。3年前にお祖父ちゃんが亡くなったときに初めて行った。

 お祖父ちゃんの骨壺はレギュラーサイズだったけど、三段に分けた棚には収まらなかった。しかたないんで、一段外して、なんとか収めた。

 これで、うちの家族は学習した。

「ここは、普通の骨壺で持ってきたら、一人で満杯。アパートで言ったら単身者用の1K」

「このセコさは、ほとんど詐欺だなあ」

 お父さんは怒っていた。

「そのうちに、なんとかしよう」と、言ってるうちにお祖母ちゃんが、去年の7月に、突然亡くなった。

 で、しかたないので、分骨用の小さい骨壺に入れてもらった。容量は500CCあるかないか。
 ほんのちょっとしかお骨拾えなくって、可哀想な気になった。

 そのペットボトルほどの骨壺が、あたしのカバンの中でカチャカチャ音を立てている。

 べつに骨になったお祖母ちゃんが、骨摺り合わせて、文句言うてるわけではない。フタが微妙に合わなくて、音がするんだ。電車の中では、ちょっと恥ずかしかった。

 あたしは、このお祖母ちゃんの記憶がほとんど無い。

 小学校に入ったころには、認知症で特養に入っていたしね。要介護の5で、喋ることもできなくて、頭の線切れてるから、あたしのこともお父さんのことも分からない。

 ただね、保育所に行ってたころ、親類の家で熱出して、かかりつけのお医者さんに連れて行ってくれたことだけ覚えてる。
 正確には、お父さんが、あたしを背負って、お祖母ちゃんが先をトットと歩いた。足の悪かったお祖母ちゃんは、普段は並の半分くらいの速さでしか歩けない。それが、そのときは、お父さんより速かった。

 だから、記憶にあるお祖母ちゃんは、後ろ姿だけ。

 その後ろ姿が、骨壺に入ってカチャカチャお喋りしてる。フタの音だというのは分かってるけど、あたしにはお祖母ちゃんの囁きに思えた。

 その囁きの意味が分かるのには、まだ修行が足りない。大人になって、今のカチャカチャを思い出したら、分かるようになるかもしれないなあ。

 だけど、この正月に亡くなった佐渡君は、ハッキリ火葬場で姿が見えた。声も聞こえた。お祖母ちゃんのがカチャカチャにしか聞こえないのは……あたしの記憶が幼いときのものだから……そう思っておく。

 多摩の駅に着くと、初めて見る女の子が来ていた。

「あ、未来(みく)ちゃんじゃないか。大きくなったなあ!」

 お父さんが、昔の営業用の声で言った。それで分かった。あたしの従兄弟の娘だ。

 うちは、お父さんもお母さんも晩婚。伯母ちゃんは二十歳で結婚したので、一番歳の近い従兄弟でも20年離れてる。
 だから、従兄弟はみんなオッサン、オバハン。従兄弟の子どもの方が歳が近い。

 だけど、この子には見覚えが無い。

 あ……思い出した。このオッサン従兄は離婚して、親権がない。それが、こうして連れてこれたというのは……お父さんは、一瞬戸惑ったような顔になってから声かけてた。身内だから分かる微妙な間。なんか事情があるんだろ。

 納骨が終わると、未来ちゃんの姿がなかった。

「腹が痛いって、待合いで座ってる」

 オッサン従兄は、気まずそうに言う。

 待合いに行くと、椅子にお腹を抱えるように丸くなった未来ちゃんが居た。

「大丈夫、未来ちゃん?」

 声をかけると、ビクっとして、でも顔は上げない。

 ちょっと意地悪かもしれないけど、しゃがんで顔を覗き込んだ。

「う、うん……大丈夫」

 どこが大丈夫なんだと思った。佐渡君と同じ景色が顔に見えた。未来ちゃんは人慣れしてない。おそらく学校にもまともに行ってないんだろうね。それ以上声をかけるのははばかられたよ。佐渡君と違って、血のつながりはあるけども、心の距離は、もっと遠い。

 

「なんか、この時代の人間はひ弱だねえ」

 家に帰ると、さつきが心の中で呟いた……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳴かぬなら 信長転生記 55『狩り』

2022-01-22 10:06:11 | ノベル2

ら 信長転生記

55『狩り』信長  

 

 

 市の袖を掴んで薮に隠れる。

 

 悲鳴から、おおよそのところは分かっている。

 戦を前にした兵どもが昂って女を追いかけまわしているのだ。

 それも、先ぶれを出して道を封鎖して。部隊規模での女狩りだ。

 戦の前後にはありがちなことで、織田軍ではきびしく取り締まっていた。

 取り締まらなければ民の信用を失う。だから、一流の戦国大名は、この種の乱暴狼藉には厳しい。

 違反者は、その場で切り捨てた。

 

「ねえ、助けよう」

「めんどうなことになる」

「だって、ニイ(三国志での偽名)は切り捨てたじゃない、こういうの!」

「俺たちは、諜報のために来ているんだ。無用の争いは避ける」

「あたし……放っておけないから!」

「市!」

 止める間もなく市は薮を飛び出す。

「仕方のない奴!」

 飛び出したからには、全力で闘う。

 戦うからには勝たなければならない。

 横に並んで、手のフリで指図する。

―― 左右に散開 女を通してから追手の兵を前後から挟む 声は出すな ――

―― 了解 ――

 女は三人、着衣に乱れはあるが、ケガはない。兵どもは、狩りのクライマックスを楽しんでいるようだ。

 ザ ザザザ ザザザザザザザ

 もう助けを呼ぶこともなく、女たちはまろぶように通り過ぎていく。

 

 シャリン

 

 錫杖を鳴らして市が飛び出す。

 先に出るつもりだったが仕方がない、俺は背後に周る。

「なんだ、坊主、邪魔をすると……」

 先頭の奴が言いきる前に、市は跳躍して錫杖で先頭の頭を叩きのめす。

 ドゲシ!

 着地した時には、そいつの剣を取り上げて左右の兵の胴を払う。

 バク! ボク!

 音が鈍いからみね打ちだ。

 後に続く兵どもに動揺が走るが、立ち向かう者は半分、あとの半分は女たちを追いかけようとする。

「お前たちの相手は、こっちだ!」

 そう叫んで、饅頭傘の顎紐を解いて放り上げる。

「この坊主、女だぞ!」

 兵どもに油断と欲望が湧き上がる。

 そうだろう、転生学院でも一二を争う美少女が、墨染めの衣に黒髪をなびかせているのだ。

 逃げた女などメではないはずだ。これで、女たち、しばらくは無事だ。

「押し包め! ただし傷はつけるな、じゅうぶん楽しんだあと、売り飛ばして元を取るぞ」

「そっちの坊主は始末しろ」

 ズチャ

 返事の代わりに剣を抜く音が揃う。

 あ、あのバカ!

 市まで饅頭傘を外す。

「おい、こっちも女だ!」

「おお、どっちも上玉だぜ!」

 くそ、最悪!

 キエエエエエエエ!

 先頭の兵を叩きのめして大刀を奪い、打ちのめしながら市と並ぶ。

 多少の腕はあると言っても、実戦経験はほとんどない市だ。守ってやらなければならない。

「強いのは俺がやる。シイはこぼれた奴をやれ」

「うん!」

「行くぞ!」

 フン!

 声を立てずに左の胴を払う、返す刀で右を打つと見せかけて、その前の兵を打ち据える。

 ドゲシ!

 ズサ! ビシ! ズビュ!

 音が違う、市のやつ切ってやがる。

 こうなっては、残りの兵も生かしておくわけにはいかない。

 ズビュ! ビシビシ! ズサ! ズサ! ビシ! ズビュ!

 切るとなると速く確実になる。もう戦場の呼吸だ。

「なぜ切った?」

 最後の一人を始末して、市の背中に問いかける。

「夢中だった……」

 目がイッてる。

「女たちを探すぞ……おい、シイ!」

「おいしい? あ、わたしのことだ!」

「しっかりしろ!」

 タタタタタタタタ

 一丁も行かぬ間に見つけた。

 女たちは、もう気力も体力失せた様子で、道を曲がった路肩でへばっていた。

「もう大丈夫だ」

 そう声を掛けると、血濡れた大刀を捨てて女たちに近寄る俺だった。

 

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本 武蔵       孤高の剣聖
  •  二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  •  今川 義元       学院生徒会長 
  •  坂本 乙女       学園生徒会長 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・49〔ちょっとシビア〕

2022-01-22 05:47:09 | 小説6

49〔ちょっとシビア〕 

     


「おーい、明日香の学校、校長クビになったぞ!」

 お父さんのシビアな声で目が覚めた。

 パジャマ代わりのジャージで二階に下りると、お父さんが新聞を広げている。

「この校長さん、たいがいだなあ……」

―― またも民間人校長の不祥事! ――

 見出しが三面で踊っていた。

 読んでみると、人事差別と人事権の恣意的な乱用。事故死した生徒・保護者への心ない対応。
 そんな副題のあとに、実名は伏せながら、関係者が読んだら、事細かに分かるようなことが書いてあった。

 再任用教諭の理由無き任用停止。元教諭、校長を提訴。

 あ、これは光元先生のことだ。

 始業式で、光元先生は一身上の都合で退職したと聞いた。

 光元先生は、TGH高校の前身都立瓦町高校の時代からの先生。学校の生き字引みたいな先生で、卒業生やら保護者からの信任の厚い先生だった。佐渡君が亡くなったときも校長室で、なにか話してる様子だったけど、中身までは分からなかった。

 新聞には「校長先生は、うちの子が亡くなったことを真剣に受け止めてもらえなかった」と、母親の言葉が書いてあった。

 佐渡君は交通事故で、あたしが救急車の中で見守ってるうちに死んでしまった。純然たる事故死。

 佐渡君は遺書を残していた。

 交通事故で遺書いうのは、なんか変……読み進んでいくと分かった。

 佐渡君は、生きる気力を無くしていた。で、なにが原因かは分からないけど死を予感して、遺書めいたものを書いていたらしい。
 お母さんは、それを生徒に公開して欲しいと頼んだらしいけど。校長は断った。で、全校集会で、ありきたりの「命の大切さ」「交通事故には気を付けよう」で、お茶を濁しよったのは記憶にも新しい。

 で、肝心の遺書は、新聞にも載っていなかった。教育委員会も内容を精査した上で、公開を検討……あほくさ。個人名が書いてあったら、そこ伏せて公表したらいいだけのこと。

 それから、佐渡君が死んで間もない日に、音楽鑑賞でオーケストラの演奏を聞きにいくはずだったのが、急に取りやめになった。「生徒が命を落として間もない日に、かかる行事はいかがなものかと思った」と校長は言ってるらしい。

 お母さんは、あとになって、そのことを知った。

「あの子は音楽の好きな子でした。実施されていたら、遺影を持って、わたしが参加するところでした。なんで、相談してもらえなかったんでしょう」

 こんなことは、何にも知らなかった。火葬場で会った佐渡君の幻も、そういうことは言わなかった。佐渡君は気の優しい子だから、たとえ校長先生でも、人が傷つくことは言いたくなかったんだろうと思った。

 で、光元先生は再任用の先生で、契約は一年。

「だけど、65歳までは現場に置いておくのが常識だ」

 お父さんは、そう言う。

 新聞には3月29日の最終発表で「次年度の採用はありません」と言われたらしい。

 29日って、どこの学校でも人事は決まってしまって、TGHで再任用されなかったら、事実上のクビといっしょなのは、あたしの頭でも分かる。

 校内でも、恣意的な人事が……ここを読んでピンときた。

 ガンダムが急に生活指導部長降りて、うちらの担任になったこと。

「ガンダム先生って、どこの分掌?」

 お父さんが聞いてきた。

「どこって、平の生指の先生」
「担任しながら生指か、そらムチャだ」
「なんで?」
「担任だったら大目に見られることでも、生指だったら見逃せないことがいっぱいある。まして、前の生指部長だろ。ダブルスタンダードでしんどいだろうなあ」

 お父さんは、ため息をついて新聞をたたんだ。

 気がついたら、お父さんと頭くっつけるみたいにして新聞読んでいた。

 お父さんと30センチ以内に近寄ったのは、保育所以来。ちょっと気恥ずかしいような、落ち着かないような気持ちになった。

 校長先生は、教育研究センターいうところに転勤いうことになっていたけど、これは事実上の退職勧告だろうなと思った。

 こんなことが自分の学校でおこるなんて、ちょっと意外。

 それと、佐渡君のお母さんが佐渡君のこと思っていたのも意外。

 切ないなあ……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女マヂカ・255『豊島郡長崎』

2022-01-21 13:10:18 | 小説

魔法少女マヂカ・255

『豊島郡長崎語り手:マヂカ  

 

 

 ズシ

 

 まるで、自動車そのものが気が付いたように停車した。

 むろん、自動車に意思があるわけではない。

 高坂家お抱え運転手の松本が、急ブレーキを踏んだのだ。

 松本は、高坂家の車であればパッカードもフォードも、江戸時代から使っている大八車でも、まるで自分の手足のように操れる。だから、急ブレーキを踏んでも、どこか柔らかい。

 キキー、ガックン!

 それに引き換え、後ろから付いてきた淀橋警察署のフォードは、つんのめるように急停車した。

「どうかしましたか?」

 警察のフォードから箕作巡査がまろび出て、パッカードの窓ガラスを叩いた。

「長崎の、どこへ行けばいいんでしょう?」

「え、分からずに走ってきたんですか?」

 

 パッカードに乗っているみんなが「あ、そう言えば!」という顔になって互いを見かわした。

 

 田中執事長の閃きで、九州の長崎ではなくて、豊島郡(後の豊島区)の長崎かもしれないというので、車で出発したのだ。箕作巡査も警察にかけあったが、分署である千駄ヶ谷署には自動車が無いので、本署である淀橋署からフォードを出してもらったのだ。

 パッカードには、松本運転手の他に霧子、わたし(マヂカ)、ノンコ、田中執事長。淀橋署のフォードには、箕作巡査の運転で、高坂侯爵と署長が乗っている。

 うかつだった。

 パッカードのみんなが思い、フォードのみんなは呆れた。

 人はともかく、魔法少女のわたしまで気が回らなかったというのは、気が逸っていたとはいえ、ちょっと異常。

「呪(しゅ)がかかっていたのかもしれない……」

「呪?」

 わたしの独り言を田中執事長が聞きとがめる。

「我々を自分の縄張りに絡めとろうとする犯人の呪です」

「そんなことが……」

「松本さん、もし、ここで停まらなければ、どちらに向かっていました?」

「はい……あたりまえですと……そう、あの神社の向こう当たりでしょうか、甲州街道への分岐になります」

「あの神社……見覚えがあるかもしれへん」

 

 ノンコが意外なことを言う。

 

「ほんとか?」

 ノンコは、完ぺきに令和の女子高生。それも日暮里高校だから、大正時代の豊島に詳しいのは変だ。

「うん、トキワ荘ってアパートの跡を見に来ことがあるのん」

「トキワ荘?」

「お父さん漫画家でさ、トキワ荘いうのは、マンガ家の聖地で。それが再建されるいうんで、跡地を見に来たんよ」

 みんなが怪訝な顔をしている。大正時代にはトキワ荘どころか、漫画という言葉も成立していないぞ。

「その、跡地は、あの神社が目印やったから……うん、周りの景色はちゃうけど、あの鳥居とかは憶えてる」

「そうか、ノンコは京都の野宮神社の宮司の家系だったわよね」

「え、あ、そうそう」

「『常盤荘』というのも、文人墨客が集うにふさわしい名前だね」

 高坂侯爵までもノッテきた。

「そう言えば、葛飾北斎の作品で北斎漫画という画帳が残されておりました。その類かもしれません」

「うん、田中の言う通り、そういうものに関係するものかもしれない」

「よし、取りあえず、そっちの方角に向かってみよう」

「承知しました」

 パッカードとフォードに分乗して、神社の向こう、後の時代にトキワ荘が建つ辺りを目指して進んで行く。

 ん?

 バックミラーに映る景色が、古いゲームの背景のように消えていく。異世界に入りかけているのかもしれない。

 

 しまったか……。

 

 気づいているのは、わたし一人だけ。

 いま言えば、いたずらに混乱を招く。

 今少し、様子を見るか……。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・48〔ガンダムの怒り〕

2022-01-21 06:07:27 | 小説6

48〔ガンダムの怒り〕 

 

    


 新学年の始まりにはいろいろある。

 一年のときに書いた健康調査とか住所・電話とか、変更があってもなくても、全員に配られる書類。

 たいていの者は変更がないから、新しいクラスと出席番号。あと、簡単な健康上のアンケートをチェックしておしまい。

 一年のとき、佐渡君が、この健康アンケートのとこに「ビタミン不足」と書いたのを思い出した。一応健康問題なので、佐渡君は、保健室に呼び出されて詳しく聞かれた。

「佐渡君、君は、なにのビタミンが足りないのかな?」

 保健室の先生に聞かれて、佐渡君は、こう答えた。

「はい、ビタミンIです……」

 頭の回転の鈍い藤田先生(一年のときの担任)は「ビタミンIって……?」やったけど、保健の先生はすぐに分かった。

「アハハ、佐渡くんは、オチャメな子ねえ(^▽^)」

 Iは愛にひっかけていた。気が付いた藤田先生はクラスで言って、みんな明るく笑った。

 佐渡君も笑ってたけど、ほんとうは切実だったんだ。

 

 あんなに寂しい死に方をして……。

 

 それから、進路に関する説明会と、早手回しの修学旅行の説明が一時間。「二年は、一番ダレル学年だから、締めてかかれ」と、まだ生活指導部長の名残が消えないガンダムの長話。その間に一年生が発育測定。

 で、今日は、あたしたち二年が発育測定。

 身長、体重、座高、胸囲、聴力、視力と計る。

 クラス毎に最初に計る項目が決まっていて、あとは空いたところを適当に見つけて周っていく。ここで暫定委員長、副委員長の力が試される。空いたとこを要領よく回るのは、この二人の目端にかかっている。

 南ララアも安室並平も目端が利くとみえて、わがガンダムクラスは、いちばん早く終わったぞ。

 当たり前だったら、教室に戻って、担任が待っていて視力検査やっておしまい。で、チャッチャとやったクラスから早く帰れる。

 ところが、教室に戻ると肝心のガンダムが居ない。

 まあ、先生も測定係りやってるから、仕方がない。

 で、教室のあっちこっちで、スマホをいじりだした。

 仲よくなった者同士が番号の交換やったり写真を撮ったり、動画を見たり。

 あたしは、ネットで『はるか 真田山学院高校演劇部物語』を読む。この本は、この5月には改訂されて、『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』で出版される。799円と女子高生の心をくすぐるような値段。買って読もうと思てるんで、比較のためにチョビチョビ読み直してる。

「鈴木さん、あなたラインしないの?」
「え……あれって、ヤギさんの手紙みたいにキリ無くなるから、ちょっとね(^_^;)」
「えらいね!」

 ララアが誉めてくれた。

 ほんとうは、やりたい相手は居てる……関根先輩。

 こないだは、さつきに告白させられてしまったけど、さつきはスマホを知らないから、先輩の番号は聞き損ねた。ララアに誉められるほどイイ子ではないよ。

 だけどさ、人の特徴を美点から見ていこいうララアの自然な対応には好感が持てたよ。

 それから5分ほどして、校内放送が入った。

 ピンポンパ~ン

「ただ今より、臨時の全校集会をやります。生徒は、至急体育館に集合しなさい」

 体育館にいくと、明日は3年の発育測定だいうのに、測定機材は隅に片づけられていた。

「黙って、チャチャッと座れ!」

 まだ生活指導部長の名残が抜けないガンダムが仕切りはじめた。新しい生指部長は黙ってる。ガンダムはなんか怖い顔してるぞ。

 みんなが静まったとこで、教頭先生がマイクの前に立った。

「ちょっと事情があって、校長先生がしばらくお休みになられます。その間は、わたしが校長の代理を務めます。いま君たちに言えるのは、そこまでです。なんだか、よく分からんかもしれませんが、先生たちも、いっしょです。で……」

 あとは、事務的な話。奨学金やら、各種証明書の発行が今日明日はできないような……。

 ガンダムの顔が、いよいよ厳しく、大魔神のようになってきた……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

やくもあやかし物語・120『アキバ封鎖!?』

2022-01-20 15:40:22 | ライトノベルセレクト

やく物語・120

『アキバ封鎖!?』 

 

 

 エッサホッサ エッサホッサ

 

 ラムレムメイドさんにかごを担いでもらって東に向かう。 

―― あ、アキバ! ――

 神田明神下の交差点まで出てくると、東の方にアキバのビルやらお店がエメラルドの都のように輝いているのが見える。わたしってば、オズの魔法使いのドロシーみたくドキドキしてる。

 いよいよ来たんだ!

 思わず、少女漫画の主人公みたいに胸に手を当ててしまう。

「ちょ、苦しい」

「あ、ごめん」

 ポケットに収まっている御息所を押えてしまっていた(^_^;)

「あれ、なんで停まってるんだろ?」

 信号が青になったのに、ラムレムメイドさんはカゴを進めようとしない。

「申し訳ありません」

「通行止めです」

「え?」

「『霊道工事中』なので」

「迂回しなければなりません」

 わたしには、見えない。普通に行けば、中央通からアキバの駅に向かっているように見える。

「わたしには見える……車止めとかがあって、指示棒持ったメイドたちが済まなさそうにしてる」

「そうなの?」

「やくもさまやくもさま」

「昌平小学校の方から参ることにします」

「あ、はい、お願いします」

 

 エッサホッサ エッサホッサ

 

 北に二百メートルほど進んでから横断歩道を渡る。

 渡ってすぐの左側に小学校。

 都心の小学校なので、六階建てで最上階は、どこかの市民会館というくらいに大きなガラス張り。

 自分の出た小学校とは、ずいぶん違うなア……お上りさんの感覚になるのも嬉しい。

「あら!?」

 御息所が小さく叫んで、再びカゴが停まってしまった。

「「やくもさまやくもさま」」

「また、通行止め……」

 今度のはわたしにも見えた。

 小学校の東側の道は、ここはテキサスの国境かってくらいのフェンスが張り巡らされていて、五メートル間隔ぐらいで、メイドさんが指示棒……ではなくて、銃を持って立っている。

「アキバは封鎖中です!」

「進入禁止です!」

「それ以上近寄ったら……」

「「「撃ちます!」」」

 ズチャ!

 メイドさんたちが、一斉に銃を構えた。

「ちょっと」

「なんなのです?」

「「これは!?」」

 ラムレムメイドさんが腰に手を当てて抗議する。

「わたしたちは」

「神田明神直属のメイドです」

「「無礼ではありませんか!」

 ラムレムメイドさんが詰め寄る。

 あすがに、メイドさんたちは一歩引きさがる。

「わたしが説明しよう」

 メイドさんたちを押しのけて、メイドカチューシャの代わりにティアラを頂いたメイド将軍みたいなのが出てくる。

「将門さんが身の内に引き受けておられた悪鬼どもが解き放たれたので、アキバは閉鎖しております。まして、その神田明神からやってきたあなたたちを通すわけにはいきません!」

 そんな……

「無礼であろう!」

「メイド将軍!」

「なにが無礼か! 関八州を守護するはずの将門が、災厄をまき散らす方が、よっぽど無礼であろうが!」

「「なにを!」」

「待って、ラムレムメイドさん」

「「やくもさま」」

「そこだ!」

 ピシ!

 メイド将軍が音を立てて鞭を突き付けてきた。ひょっとしてSMの方の将軍?

「なぜ『ラムレムメイド』などと名乗る? おまえたちは著作権というものを知らぬのか!?」

「あ、ちがうの! わたしが親しみを込めて言ってるだけで、この二人が自分で名乗ったわけじゃないの!」

「同じことだ、間違った呼び方をされて注意しないのは認めたも同然ではないか!」

「あ、えと、じゃあ、きちんと呼ぶから……えと?」

「アカです」

「アオです」

 あ、見たマンマなんだ(^_^;)

「いまさら言いなおしても遅いわ!」

 ピシ!

「頭に乗るな、メイド将軍!」

「アカ」

「しかし、アオ」

「ごめん、二人とも」

「「いえ、やくもさまのせいではありません」」

「では、どうしても、ここを通してくれないの?」

「あと、十一匹の悪鬼をやっつけてこい! それか……将門みずからが、頭を下げるのなら考えてやらなくもないがな……」

 フハハハ

 メイドたちがバカにしたように笑う。

「貴様たち!」

「なんという無礼を!」

 なんか、大変なことになってきたよ……

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・47〔新学年の始業式〕

2022-01-20 07:19:17 | 小説6

47〔新学年の始業式〕 

       

 


 ゲ、ガンダム!!

 同じような声が、あたしの列からわき起こった。

 今日は一学期の始業式。朝、学校に行くと昇降口のガラス戸に新しいクラス表が貼りだしてあった。一年で同じクラスだった子が五人いるけど、あまり付き合いのない子らなので、特に感慨はない。ただ学年一のイケメンとモテカワが居るのが気になったぐらい。

 ま、その話はあとにして、始業式での担任発表。

 あたしらは、3組なので三番目の発表。ガンダムが前に立っているのは不思議ではない。生活指導部長なので、全校集会ではいつも前でにらみをきかしてる。

「三組担任、岩田武先生」

 司会の先生が言ったとたんに、「ゲ、ガンダム!!」になってしまった。

「三組を鍛え上げることは、もちろん。二年生をTGHで最高の学年に鍛え上げてやるから、そのつもりでいろ」

 それだけ言うと、ニヤリと方頬で笑って、担任団の席に戻っていった。

 クラスのみんなは、怖気をふるった。

 なんで岩田武がガンダムなのかは、字を見たら分かると思う。音読みしたら「ガンダム」。それに、その名にふさわしい程の頑丈さと、しつこさ。

 校門前で、朝の立ち番してるときに、あの美咲先輩がスカートの中を盗撮されたことがあった。二百メートルほど離れてたけど、「コラー!」の一声と共に駆け出して追跡。なんと一キロ追いかけて犯人を捕まえた。ついでに途中で喫煙していたS高校の男子生徒の写真も撮って、S高校の生活指導に送り、ありがた迷惑にも思われた。

 で、これだけの大立ち回りしながら息一つ乱れずポーカーフェイス……いかにもガンダム。だから、さっきの挨拶で方頬で笑たのは極めて異例で、クラスのみんなが怖気をふるったのも無理はない。

 演劇部辞めてから、学校にアイデンテティーを感じなくなったあたしでも、この展開は興味津々だよ。

 で、クラスのイケメンとモテカワ。

 イケメンが安室並平。なんかアンバランスな名前だけど、趣味じゃないんで、よくもてるという以上のことは、よく分からない。

 モテカワは南ララァ。カナダからの帰国子女。日本人のお父さんとカナダ人のお母さんに生まれたハーフらしい。水泳部らしく張りのある煎餅みたいに日焼けしてるけど。地は色白だと、同じ水泳部の女子の弁。髪は水泳部にありがちな自然な茶パツ。この自然な茶パツが、とてもワイルドで、その下には信じられないくらいの可愛い顔。むろんプロポーションは抜群。

「暫定的に、学究委員長は安室。副委員長は南。学年始めはいろいろあるから、二人とも、しっかり頼む」

 ガンダムが、口数少なに言う。みんなも「さもありなん」と納得顔。

 なんで、イケメンとモテカワで納得やねん!? 

「これで、シャアがおったら、完ぺきだぞ」

 横の席の男子が呟いた。

 ガンダムには詳しくないので、終わってからスマホで検索した。アムロが主役で、ララァいうのが、永遠のヒロイン。シャア言うのんがシオン軍のボス。で、担任がガンダム。

 確かに出来すぎ。ちゅうか……波乱の予感。

 

 波乱というと、午後の入学式。

 

 二年生に出席の義務は無いんだけど、さつきが興味を示したので、体育館のギャラリーで見ることにした。

「ただ今より、令和三年度入学式を挙行いたします。国歌斉唱、一同起立!」

 司会の教頭先生が言ったとたんに、あたしは気をツケして、直立不動で『君が代』を音吐朗々と歌い出した!

―― え、あたし、こんなに歌上手かった!? で、むっちゃ恥ずかしい(#'∀'#)! ――

 みんながギャラリーのあたし見上げてる。言っときますけど、歌わせているのはさつき!

―― 和漢朗詠集の読み人知らずの名歌よね。これを国歌にしてるとは、なかなかよ! ――

 一人で感心してる。

 式のあと、校長室に呼び出された。

「あんな立派な独唱は、甲子園ぐらいでしか聞けない。大したものだね!」

 来賓の指導主事さんに誉められた。

「チェンバレンが、こんな英訳しております」

 さつきが、勝手に言わせる。

 A thousand years of happy life be thine!
 Live on, my Lord, till what are pebbles now,
 By age united, to great rocks shall grow,
 Whose venerable sides the moss doth line.

 いつのまに勉強したんだ? はた迷惑な!

 あたしの新学年も波乱の兆し……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

せやさかい・272『恋するマネキン』

2022-01-19 13:49:56 | ノベル

・272

『恋するマネキン』頼子     

 

 

 チャンス!

 

 思わずガッツポーズすることってあるわよね。

 食堂のランチがあと三個で、並んでるのが二人だったり。

 ジュースの空きパック投げたら、ゴミ箱にストライクだったり。

 苦手な授業で、先生が前から当てていって、次はわたしの番というところでチャイムが鳴った時とかさ。

 

 そういうガッツポーズを思わずしてしまった。

 

 下足室でローファーに履き替えようと思ったら、ソフィアがまだ来てない。

 ソフィアは、クラスメートだけども、わたしのガードでもある。

 だから、部活も剣道部を諦めて、同じ散策部に入ってくれていたりする。不自然な形にならないようにしながら、学校の中でもガードしてくれている。

 学校の中では、目立つようなガードはしない。

 ただでも、二人とも外国人(わたしは二重国籍だけど)。ブロンドとプラチナシルバーの髪だから、制服を着ていても目立つ。

 わたしがヤマセンブルグ公国の王女だというのはバレてんだけど、なるべく特別扱いはされたくない。

 ソフィアも心がけていて、学校の中では『夕陽丘さん』とかで呼んでくれる。二年になると、周囲の空気を読んで『ヨリコ』とか『ヨリッチ』とかの愛称で呼んでくれるようになって、肩がこらなくなった(^▽^)。

 流行り病で、世間への露出もほとんどなくなったので、近ごろでは、学校に八人はいるらしい交換留学生のひとりぐらいに思われているっぽいので、ずいぶん気楽になったしね。

 そして、入学以来、特段の問題も起こっていないので、学校の用事とかで、ソフィアが間に合わない時は一人で帰っていいことになった。

 

 そして、いまが、そのチャンスなのよ!

 

 ソフィアは委員会に出て、どうやら間に合わない。

 これは、もう、サッサと帰って自由なアフタースクールを楽しむべきなのよ!

 まずはね、駅前の本屋さん。

 今日はね、愛読書『恋するマネキン』の第七巻の発売日。

 優れモノのライトノベルで、発刊と同時にアニメの放送も始まったという、背水の陣。メディアミックスの壮大な実験とか言われてる。

 アニメの主人公、加奈子をやっている百武真鈴が可愛くてツボなのよ。

 文芸部やってたころに読んだ『伊豆の踊子』のヒロイン・薫に通じるものがあって、もう、めちゃくちゃご贔屓なのよ。

 フィギュアも春には出るというので、さっそく予約したくらい。

 そうだ、日本橋のドールショップにサンプルが出てるはずだから、いっそ足を延ばしてみよっかな♪

 もう、ローファーに羽が生えたみたいに軽やかよ!

 

 ヨリッチー!

 

 羽の生えたローファーが、まさにわたしを飛び立たせようとした、その瞬間に呼び止める声が轟いた(-_-;)!

「ごめんごめん、委員会長引いちゃったけど、なんとか間に合った!」

 そう、我が愛しくも忠実なガーディアンが、忠誠心という極超音速エンジンをふかしてやってきたのよ。

 で、その瞬間、正門を出てしまった。

「殿下、申し訳ありませんでした。卒業式に関わる重大案件であったので、抜けるわけにもいかず、危うく任務を放棄するところでした」

 スイッチが切り替わった。

「アハハハ……」

「最終案件は執行部で話し合われるということで、なんとか抜けてこられましたデス!」

「おお、久しぶりの『デス』が出た!」

「初心に帰れデス」

「うん、さすがは情報部のホープよね」

「はい、それで、すごい情報を掴んでまいりました!」

「情報?」

「殿下、『恋するマネキン』のヒロイン加奈子のCVが判明しました!」

「え、ほんと!?」

 事実だったらすごいことよ! 

 加奈子のCVをやっている百武真鈴は正体を明らかにされていない。

 いっしょにやっている声優たちにもかん口令が敷かれていて、ファンの間では、神声優真鈴とうなぎ上りの人気。

 それが知れたというんだから、すごいことよ!

「真鈴の正体は、なんと、田中真央なんです……」

「え?」

 とっさには分からなかった。

 田中って苗字の子は何人かいる、鈴木と並んで、日本人の苗字多い順ベストテンに入る名前だしね。身近のではクラスの田中さん。生徒会の役員をやってるはずだけど、下の名前までは知らない。

「その、田中さんですよ。田中真央!」

「え、うそ……」

 声質も喋り方も全然違うし。

「怪しいと睨んでいたんです、人間化けるには、正反対ぐらいが、実はやり易いんです。今日の委員会で録音して、声紋をチェックしました……同一人物デス」

 その時、後ろから、わたしを呼ぶ声がした。

「夕陽丘さーん、待ってえ、話があるのん!」

「え、あ……」

 それは、たった今、話題に上がったばかりの田中真央だった……。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・46〔天ぷら〕

2022-01-19 08:19:24 | 小説6

46〔天ぷら〕 

       


 気がついたら電話していた。

 誰にって……関根先輩に。

「明日、10時に外堀通りのテラスに来て……訳は、来れば分かります」

 この言葉も、あたしの意志とは無関係に出てきた。

『無関係ではない。明日香の心の底にあるものをちょっと後押ししただけだ』

 と、さつきは心の中でニヤニヤしている。我ながら、変なものをを住まわせたものだ。

 リビングで『天晴れレストラン』見ていたら、石神井朝市の野菜を使った料理をやっていた。

『おお、あれはなんというのじゃ? あの油の中でパチパチいってるのは?』

「天ぷらだよ」

『てんぷら? 妙な名前の料理だな……どんな味がする!?』

「えと……江戸前の天ぷらだから、これは、石神井の朝市の野菜が中心だけど、白キス、穴子、車海老とかに小麦粉を溶いたのを付けて、180度くらいのごま油で揚げて……ほら、あんな風に、天つゆに漬けて食べるのよ」

『なるほどぉ……』

 姿は見えないけど、目を輝かせて、ヨダレを垂らしそうになっているさつきの顔が浮かぶ。

 気が強くてイッちゃった感じ(なんたって元祖丑の刻参り)の女の子なんで、ちょっと意外。

 石神井の朝市は、しゃくじいにも連れて行ってもらったことがある。

 それこそ、天ぷらとかも作ってくれた(野菜天が多かったけど)。しゃくじいは男のくせに料理が上手かった……すき焼き……おでん……手巻き寿司……ギョウザも皮から作って……そうだ、しゃくじいは、家族みんなが食卓囲んで作るところから楽しめる料理が好きだった。

『いいお祖父ちゃんだったようだな』

「ちょ、勝手に心を覗かないでよ(;'∀')」

『覗くまでもない、明日香の心は、あれこれダダ洩れだぞ』

「え、そうなの?」

『明日香は素直な女子(おなご)だ』

「え、あ、そかな……」

『ああ、料理を作っている時に見せる笑顔が、しゃくじいは好きだったみたいだぞ』

「あ、うん、しゃくじい好きだった」

『なあ、天ぷら食べたいぞ』

「もう晩ご飯食べたから、今度!」

『じゃあ、明日にしろ。その代わり、明日香の悩みは解決してやる』

「え、それは……」

『遠慮するな、これでも恩に着ているのだぞ』

「あ、それは、どうも(^_^;)」

 嫌な予感を抱えながら、うちは自分の部屋に戻った。

 

 さつきとは、簡単な協定を決めた。

 

 お風呂とトイレ入るときはあたしの中から抜け出すこと(ウォシュレットで嬌声をあげたので、風呂だけじゃなくって、トイレまで付いてきてることが分かった。家族への説明に困ったよ) 

 ことわり無く、あたしの人生に関わるような大事なことには関わらないこと。

 しかし、さっきの電話の件でも危ないものなんだけどね。

 

 さつきが住み着くようになってから、昔の戦の夢をよく見る。

 たいてい少人数の家来を連れて奇襲攻撃する夢、さつきはすばしっこくって、将門軍の遊撃部隊長という感じ。

 山肌を駆け上ってくる国府軍にグラグラに煮えたウンコ混じりのオシッコを柄杓で撒く(女の子がやることか!?)とか。わら人形にヨロイを着せて、敵に矢を撃たせて、不足気味な矢を敵からいただいたり。意表を突く戦法みたいだけど、これは『三国志』の中の赤壁の戦いで、諸葛孔明がとった戦法の応用だということが分かった。

 ガラの悪さに似合わず勉強家だということも分かった。

 あれだけ言ったのに、すぐお風呂やトイレに付いてくる。まあ、女子同士だからいいけども。

 そのくせ、部屋に居るときは、どうかすると何時間も本の中に居たりする。

 どうかすると、本を読みながら泣いている気配もする。

 

 あ、それからね、明神さまに挨拶するときは居る気配が無い。

「ねえ、自分の親なのに挨拶もしないの!?」

『もう、千年もいっしょなんだから、いい』

 やっぱ、ちょっちひねくれ者?

「ひ、ひねくれ者言うな!」

 巫女さんが、びっくりしてこっちを見てる。

「アハハ、夕べ見た夢思い出しちゃって」

「うちはやってないけど、神社の中には夢違(ゆめたがえ)って、悪い夢払ってくれるところもあるから……」

「アハハ、大丈夫です(^_^;)」

 あたしの口を借りて叫んだりしないでよね。

『すまん、ついな』

 どうやら、さつきにとって、父親は、ちょっと煙たい存在のようだ。

 

 で、日が改まって、日曜日。

 昨日の雨を引きずったような曇り空。テラスで関根先輩に会った。

 

「花見には、ちょっと残念な空模様だな」

「これくらいがいいんです。人も多くないし。ゆっくり語り合うのにはピッタリです」

 ここまでは、あたしの意志。あとはさつきが、あたしの口から勝手に喋ったこと。

「……今日の明日香は、まっすぐオレのこと見るんだなあ」
「だって、先輩のこと好きだから。うん、大好き」
「よ、よせ、こんなところで、人が見てる」

 確かにテラスは二人だけじゃなくて、お年寄りが三人居。めちゃくちゃきまりが悪い。

「美保先輩には負けないから。あたしのハジメテをあげるのは先輩だと決めてます。だから、先輩も……いや、学君も言ってほしい、本当の気持ちを!」

「お、おい。明日香ぁ、人の目があ(#'∀'#)」

 先輩は、大きなヒソヒソ声。三人の年寄りはニヤニヤと成り行きを見ている。

「人の目があっても、好きは好き。これくらいに!」

 ペチョ

 あたしは、先輩に胸を押しつけて抱きついた。

「あ、明日香……!」
「答え聞くまで、離れない!」
「お、オレも明日香のことは……」
「好き!?」
「あ、ああ……」

「よっしゃ、今日は、ここまででいいわ! じゃ、ちょっと御茶ノ水まで歩きましょうか」


 先輩にベッチャリひっついて東の方、川沿いを歩いた。

 先輩の当惑と、あたしへの好意が重なって感じられた。御茶ノ水へは10分ほどで着いた。

「じゃあ、新学期になってもよろしく!」

「あ、ああ」

 聖橋に着いたら、あっさりと先輩と別れた。

 

『色恋は、戦と同じ』

 あ、でもね。

『駆け引きが大事。今日は、ここであっさり引いて、あいつの中に明日香を温もりの記憶として染みこませる』

 それはいいけど……。


『なんじゃ?』

「天ぷらは、しばらくおあずけ!」

『え、それはないだろ! わたしも、天ぷらの恩義に感じてだなア』

 大鳥居から随神門を潜った時には、さつきの気配が無い。

 明神様にお辞儀して回れ右……すると、大公孫樹(おおいちょう)に隠れるようにしていた。

「なんで、そんなとこに……」

 追いかけると、スルスルと男坂の石段を下りて家に入ってしまった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

銀河太平記・089『西ノ島は順調』

2022-01-18 13:04:55 | 小説4

・089

『西ノ島は順調』 加藤 恵    

 

 

 それからの西ノ島は順調だ。

 A鉱区は落盤事故の後、ナバホ村とフートンの協力もあって、順調に開発が進んだ。

 単に採掘量が増えただけではなく、純度の高いパルスガ鉱がまとまって出てくるようになって、島の収入は目に見えて増えてきた。

 

「これはいただけないよ」

「うちも受け取れねえ」

「受け取ってもらえなきゃ困るんです」

 押し問答が続いている。

 

 昼ご飯の終わった食堂に、島の三人の代表と、手すきの社員や村民、同志たちが集まって議論している。

 ヒムロ社長は、A鉱区で採れたパルスガ鉱石の売り上げを三つの集団で分けようというのだ。

「カンパニーで採れたものだから、売り上げは、当然カンパニーのものだぜ」

「そうだよ、フートンも村も手伝ったけど、その分は先月までに十分頂いている。今月分の売り上げはカンパニーのものだ」

「はい、その気持ちはありがたいんだけども、西ノ島は、みんな相見たがいだと思うんです。A鉱区のパルスガ鉱も、堀進んで行けば、村やフートンの鉱区にも繋がっているかもしれない。お互い持ちつ持たれつの島でもあるし。ここは、均等に分けるということで」

「いや、権利関係ははっきりしておいた方がいい。かつて、漢明も満州も、そういうところを中国的あいまいさでやってきて自滅してきた経緯がある。大陸の同胞たちはともかく、西ノ島の中華民族は明朗潔白を旨としてやっていきたいんだ」

「われわれインディアンもそうだ」

 いやはや、どうにもまとまらない。

 わたしが所属していた……なんで過去形? エホン、今でも所属してるんだけど、天狗党はヒエラルキーがはっきりしていて、決断が早かった。

 島に来た当初はまどろっこしく思うこともあったけど、落盤事故からこっち、このあいまいさもいいと思うようになってきた。

「ちょっといいですか」

 わたしと並ぶ新参者が手を挙げた。

「なんだい、兵二君」

 社長は、新参者にも丁寧だ。

「僕のいた火星には『講』というものがありました。火星は、まだまだ発展途上で、政府も企業も町も村も先行きが分かりません。そこで、仲間たちがお金を出し合って、プールしておくんです。そして、不時の出費に備えたり、講の親睦に使ったり、方向がはっきりした時の資金にしたりしています。火星は独立はしましたが、まだまだフロンティアなので、いまの西ノ島に通じるところがあると思います。どうでしょう」

「でも、兵二」

「なんでしょシゲさん?」

「そんなフアジーにしておいて、横領とか使い込みとかの心配はねえのか?」

 シゲさんの質問に、みんなの注目が集まる。

「僕は、火星でも扶桑しか知りませんが、どこも似たり寄ったりだと思います。貧しい星なので、みんな信用を大事にしているところがあります」

「なある、簡単なようで難しい問題だな」

「いや、それに乗ってみよう!」

 村長が立ち上がった。

「我々も、おおよそ、そんな感じでやってきたじゃないか。インディアンの先祖も、そんな感じだった。ヘイジ、いいのではないか?」

「フートンも賛成だ」

「あ、そうですか。それならば兵二君提案の方向で……ここにいるみんなもいいだろうか」

「おれたちは野次馬だ、決定は、代表できめればいいさ。なあ、みんな」

 シゲさんが一瞬でまとめてしまう。

「資金管理を決めなければなりませんが、少し時間を置いて決めましょう。それまではカンパニーで預かるということで」

「「異議なし」」

「では、解散にしましょうか」

 社長が、そう告げて、みんなの腰が上がった時に、三度、兵二が発言した。

「すみません、僕も慣れて来たんで、あれこれ調べたんですが、島の北部の権利関係がよくわかりません。だれかご存知でしたら教えてください」

「あそこは国有地です」

 社長が答える。

「島の開拓を条件に、フートンが買おうとされたんだが、あそこだけは島全体が国有だった名残で、国が手放さないんです」

「なにか、心配事でも?」

「いえ、国有地ならいいんです」

「それじゃ、今日はここまでにします。あと、連絡事項ないですか?」

「あ、そだ、いいですか」

 自分の役割を思い出した。

「なんだい、メグミ?」

「明日から、順繰りにパチパチのメンテに入ります。ほとんどオーバーホール的なものになりますんで、まる一日は作業体は使えません。ご了承ください」

「最近は、オートマ体の方が馴染んできたぜ。ま、黙ってりゃだけど」

「ボイスは、まんまだもんな」

 アハハハ

 シゲさんが言ってサブがまぜっかえす、暖かい笑い声が上がる。

 パチパチは、自分が手掛けたので、ちょっと嬉しい。

 それから、みんな、引き取り手のない落盤犠牲者の遺骨に手を合わせて食堂を後にした。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室                西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
  • 村長                西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・45〔御茶ノ水幻想・4〕

2022-01-18 06:03:10 | 小説6

45〔御茶ノ水幻想・4〕 

        

 

「ただいまあ」

「おかえり……」

 めずらしい、お父さんが二階のリビングに居る。

 と、思ったら、もうお昼。

「明日香。生協来たとこだから、パスタの新製品あるよ」
「あ、食べる!」

 あたしは、自分の意志じゃないのに応えてしまった。どうやらさつきがお腹を空かしているらしい。

 レンジでチンして、和風キノコバターとペペロンチーネを二つも食べてしまう。

「ああ! メチャクチャおいしい!」

「明日香が、そんなに美味しそうに食べるのん久々だなあ」
「ああ、育ち盛りだから。アハハ(^_^;)」

 まさか、自分の中でさつきが美味しがってるとは言えない。

「ごちそうさま!」

 自分の部屋に戻ってから、どうしょうかと思った。

「さつき、ずっと、こうしてあたしの中に居る気?」

『仕方ないだろ。どうやら、この時代では、明日香の中からは出られないみたいだ』

「だけどねえ……」

『狭いけど、いろいろある部屋だなあ。おお、あの生き写しみたいな絵は明日香だな!』

 馬場先輩に描いてもらった絵に興味。

『うわあ、この絵にはタマシイ籠もってるぞ! ううん……残念なことに、これ描いた男は、明日香のことを絵の対象としか見てない。いや……しかし……まあ、大事にしろ。何かにつけて明日香の助けになってくれるぞ』

 それは、もう分かってる。

『そこの仕舞そこねた雛人形も大事にしろよ。もう少し、この部屋に居たいらしいから。その明日香の絵とも相性良さそうだぞ』

「分かってる。それより、少しでもいいから、あたしの心から離れてない。落ち着かないよ」

『明日香は依り代だからな……うん? その日本史いう本はなに?』

「ああ、教科書。日本でいちばん難しい日本史の本」

『おもろそうだなあ……しかし、日本史という言い方はおかしくない? まるで日本という異国の歴史みたい。日本国の歴史だったら国史だろうが……』

 さつきが呟くと、心が軽くなったような気がした。

「さつき、さつき姫……」

―― なに? ――

 なんと、山川の詳説日本史の中から声がした。

「さつき、いま教科書の中に居るの!?」

―― あ、そうみたい ――

「大発見。本の中にも入れるじゃん! 本だったら、けっこうあるから、本の中に居てよ!」

―― おお、わたしも興味津々だしな ――

 一安心、のべつ幕なしで心の中におられてはかなわない。

 ベッドにひっくり返ると、スマホを取り出してググってみる。

 

 さつきひめ ⇒ 五月姫

 

 おお。

 椿の苗木の名前で出てきた。

 大振りのキッパリした赤い花。

 シャッキリしてて感じがいい。ちょっと好感度があがった。

 スクロールすると、すごい名前が出てきた。

 

 滝夜叉姫

 

 え、なにこれ?

 ……平将門の娘、父の無念を晴らすため、毎夜、白装束で鞍馬の貴船神社に通いった。頭にロウソクを括り付け、藁人形を五寸釘で打ち付けて、父を陥れた者たちを呪い続け、ついには、呪力を身に着け、滝夜叉姫となって様々に人を呪い殺し、害をなした。

 え……? 

 丑の刻参りの元祖と言われる。

 ええ!?

 聞いてないんですけど!

 

『明日香、おまえ、なかなかええ体してるなあ』

 次に声が聞こえたのは、お風呂に入ってるとき!

「ちょ、教科書の中にいるんじゃないの!?」

『風呂は、さつきも好きだぞ』

「て、あなた、実は丑の時参りの滝夜叉姫なんでしょ!?」

『あ、もうバレたか?』

「妖術とか呪術とかで、鬼みたくなって、最後は大宅中将光圀てのに退治されたんでしょ!」

『アハハ、昔の話だよ、気にするな』

「いや、だって……」

『しかし、明日香、おまえ、まだおぼこ(処女)だったんだな』

「グ(# ゚゚#)」

 顔のニキビを発見したほどの気楽さで言われたが、言われた本人は、真っ赤になった……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳴かぬなら 信長転生記 54『宿が無い』

2022-01-17 15:46:30 | ノベル2

ら 信長転生記

54『宿が無い』信長  

 

 

 予想を超えていた。

 酉盃の旅館街で二軒宿を当ってみたのだが、二軒とも満室で断られたのだ。

「なんで、酉盃の宿まで満杯なのよ!」

「予想より曹軍の規模が大きい」

「なんで!?」

 市のいらだちも分からないではない。

 昼間調べた限りでは曹軍は三個軍団。一個軍団は定員一万が常識だ。

 豊盃も、それを基本に作られた三国志南部の主邑で、額面通りの三個軍団ならば、佐官以上の将校全てを収容しても、わずかに余裕がある。

 それが、西隣の酉盃の宿まで一杯にしているのだから、丸々一個軍団は多いということになるだろう。

「形の上では三個軍団を装って、その上で部隊の定員を増やしているんだろう。おそらくは、予備軍の扱い。扶桑との戦いが佳境に入った段階で、予想を超える予備軍を投入して、一気に勝ちを収める腹だ」

「で、宿はどうするの!? もう腹ペコのクタクタなんですけど、お姉さま!」

「仕方ない、奮発して将官クラスの宿を当ってみよう」

「将官級って、四ツ星!?」

「いや、五つ星。確実に空いているところを狙う。軍団長の身内というつもりでいろ、金さえ出せば詮索されることはないだろうが、怪しまれることは避ける」

「了解、お兄さま、いえお姉さま! お風呂でお背中流させていただきます!」

「いくぞ」

「あ、待ってえ(^▽^)/」

 

 しかし、五つ星も満室であった。

 

「申し訳ございません、陪邑の宿坊ならばあるいは……」

 番頭が済まなさそうに、詫びながら陪邑の宿坊ならばと勧める。

「それって?」

「城外にある町を陪邑という。そこにある寺の宿だ。治安が悪い。並の女旅なら勧めんだろ。俺たちを見て、これなら大丈夫だろうと進めるんだろう」

「もし陪邑にお泊りでしたら、これをお持ちなさいませ、お二人はお美しすぎます」

「これは?」

「はい、今度の戦では、お坊様方の中にも還俗して軍に身を投じるお方がございます。うちの宿で還俗されたお方のものでございます」

「そうか、ありがたくいただいておく」

 

 宿を出て振り返ると、まだ明るいというのに五つ星は最上階のロフトまで煌々と明かりが灯っている。

 宿のロフトは物置か使用人たちの部屋だ。番頭の言うとおりの満室だ。

 閉門寸前の西門を出てから、僧衣に改め饅頭傘を被る。

「どうして、なかなかのものだ。二人とも隙が無いから、けっこう強そうな僧兵に見えるぞ」

「もう、さっさと行こ!」

「そうか、腹が減っていたんだな……あの屋台で饅頭(まんとう)を買おう」

「饅頭傘で饅頭……下手なギャグだけど、お腹空いてるからまあいい」

「亭主、肉まんを二つずつくれ」

「あた……拙僧はカレーまんがいい」

「肉まんしかないあるよ」

「それでいい、こいつは冗談を言ったのだ」

「まいど、しまいものだから、一元でいいあるよ」

「すまんな」

 饅頭を懐に入れると、市の饅頭傘が小刻みに揺れている。

「どうかしたか?」

「だって、しまいものだよ。ギャグだね」

「仕舞いものと姉妹ものか」

「だって、おかしいよ(^_^;)」

「企まずの、ギャグだな」

「はやく食べよ」

「待て」

 饅頭の包みを開けようとすると、路傍から人の気配。

 

 もし、御坊

 

 呼びかけてきたのは、二等軍曹という感じの兵隊だ。

「この先の道は、軍事行動のため通れん。四半時待つか、別の道を通られよ」

「で、あるか。心得た」

 返事をしてやると、二等軍曹は他の通行人にも注意をするために行ってしまった。

「待っていたら陽が沈むよ」

「分かっている、行くぞ」

「あ、やっぱり」

 道を進むと、俺たち以外の旅人は軍の威光を恐れたのだろう、人影を見ることが無い。

「軍事行動って、なにをやってるんだろうね?」

「とんだ軍事行動かもな」

「え?」

 市が不審がると同時に女の悲鳴が起こった。

 

 キャーーー!! だれか、お助けええええ!!

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本 武蔵       孤高の剣聖
  •  二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  •  今川 義元       学院生徒会長 
  •  坂本 乙女       学園生徒会長 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・44〔御茶ノ水幻想・3〕

2022-01-17 09:21:53 | 小説6

44〔御茶ノ水幻想・3〕 

 

 

 将門……って、明神さまの?

 

「神田明神は、大黒、少彦名、と、この儂、平将門三人の共同経営だ」

「え?」

「すまん、思い浮かべただけで、明日香の考えは分かってしまう。ここからは、人同士の会話ということにしよう」

「え、あ、はあ……」

「五歳の時に越してきて以来、明日香の事は、よく知っておる」

「えと、越してきたのは四歳なんですけど」

 あ、チェック細かすぎた(;'∀')?

「つい、数え年で言ってしまった。生身の人間と喋るのは何十年もやっておらぬのでな。許せ」

「あ、いや、そんな(^_^;)」

 思わず両手をパーにしてワタワタと振ってしまう。

「神田明神と称してしまうと、共同経営の大黒、少彦名まで、含んでしまうのでな。最初に明らかにしておく。平将門として話をしておる。ここまでは、よいか?」

「あ、はい」

「ここはな、明日香風に申すと異世界だ」

「えと、勇者とか魔導士とか出てくる?」

「少し違うが、おおよそは、そうだ」

「わたし、ここから冒険とかするんですか?」

 どうしようRPGとか苦手だよ。魔法とか技とか錬金術とか、なかなか覚えられなくて、トロコンどころか、最後までいったゲーム少ないし、ドンクサイからオフラインのしかやったことないし……

「早まるな……すまん、またフライングしてしまった」

「いえ、いいんです。話、早いし(^_^;)」

「そうか、ここはな、儂のセカンドハウスなんだ」

「セカンドハウス?」

「調子がいい、横文字が出て来たな」

「神田明神以外に家を……あ、ひょっとして御旅所ですか?」

「おお、明日香は御旅所を知っているんだ」

「お祭りの時に、小さな神社みたいなとこで、お神輿置いて休むじゃないですか。お祖父ちゃんが『御旅所っていうんだ』って教えてくれました」

「うん、その一つだよ。祭り以外でも、時々やってきては、休憩したり散歩したり、けっこう自由にやってるんだよ」

「周囲は、なんだか時代劇がかってますけど(^_^;)」

「ああ、武蔵野という感じが好きなんでな……なんせ、本性は平安時代の田舎武士だからね」

「でも、オープンワールドかってぐらいに広いんですね」

「ああ、太田道灌と共用してるんでね、チャンスがあれば、あちこち案内してあげるんだが」

「あ、はい……」

「ここに呼んだのは、頼みがあるからなんだ」

「頼みですか?」

「娘を預かってほしいのだ」

「将門さまの娘さんですか?」

「ああ、さつきっていうんだ」

「さつき……いいお名前ですね」

「うん、五月生まれだからつけたんだけどね、『となりのトコロ』のさつきと同じだから、父親としても気に入ってるんだ」

 なんだか、利発で家族思いの女の子って感じ。

「ああ、親思いのいい子なんだけどね、儂と違って、めったに外にも出なくてね」

「引きこもり……」

「親思いのあまり、さつきは鬼になってしまって、あちこちで暴れまわったあげくに、大宅中将光圀ってのに退治されてしまって、以来、引き取って、ここに住まわせている」

 そか、その娘さんが心配で、ちょくちょく寄ってるんだ……親子の情なんだねえ。

「あれから千年……このまま、この世界に籠らせておくと、また鬼になってしまいそうでな。明神のひざ元、男坂でもあるし、明日香の世話になりたい」

「ひょっとして、わたしの従姉妹とかって設定になって、いっしょに暮して、学校とかもいっしょになるパターン?」

「そこまでは考えていない。明日香以外の人間には見えないし、声も聞こえない。一緒に暮らすことで明日香を煩わせることはない。明日香に付いて回ることで、さつきの世界を広げてやりたいだけなんだ。そういう刺激があれば、あれも、鬼になることはなくなるだろう。そうすれば、さつきは、また儂の所に戻って来る」

「え、あ、そか」

「頼まれてくれるか?」

「まあ、そういうことであれば……で、さつきさんは?」

『ここに居るよ、よろしくな、明日香』

「え!?」

 驚いて振り返るけど、人の姿は無い。

『ここよ、ここ』

「え?」

「すまんな、さつきは、もう明日香の中に居る」

『アハハハ、そういうことだ、よろしく頼むぞ!』

「ちょ、あんたが笑うと、体がガクガクするんだけど!」

『それだけ相性がいいということだ、さ、それでは行くぞ!』

「あ、ちょっと!」

 自分の意思とは無関係に体が動き出して、板橋のおじさんに連れてこられた道を逆に走り出した!

 いっしゅん振り返ると、将門さまが気楽に手を振っているのが見えた……

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE滅鬼の刃・24『だいじょうぶかな』

2022-01-16 15:10:16 | エッセー

RE エッセーノベル    

24・『だいじょうぶかな』  

 

 

 元日の新聞を読んでいないのはわかってました。

 

 読んだ新聞を丁寧にたたむお爺ちゃんですが、折り方……というか広告の戻し方に特徴があります。

 広告の折り目と本紙の折り目を逆にするんです。

 たぶん、折り目を同じにしていると、一か月も重ねると折り目が重なったところが分厚くなりすぎるから。

 ただの習慣かもしれませんが。

 他にもあるんですが、内緒です。

 まあ、そんなで、読んでないことは知っていました。

 でも、読んだつもりになっていたら……と思うと言えませんでした。

 だからね、「出すのは、お祖父ちゃんやってよね」と念を押しました。

 もし、出すのも忘れるようだったら……ちょっと、あぶないじゃないですか(^_^;)

 まあ、ちゃんと出してくれていたので、一安心。

 

 お祖父ちゃん、このごろ人相が悪くなりました。

 多分、老眼がさらに進んでるせいです。

「メガネ買い直したらあ」

 言ってみましたが「まだだいじょうぶ」と言います。

「いまの度数分かってる?」

「え、えと……」

「机のここに貼ってあるから」

「え……ああ、これかあ」

 と、目を細めますが見えていません。

 貼ってあるのは、レンズの端っこに貼ってあった度数表示の豆粒ほどのシールです。

 次に買う時にスカタンしないよう(以前、同じ度数のを買って無駄になったことがあります)貼っておいたのです。

「そうそう、3.5だ。思ってたのといっしょだったぞ」

 ぜったい嘘です。

 老眼鏡というのは、普通に5.0まであるようです。

 一昨年の暮れに老眼鏡を買い直して、その度数が(3.5)でした。

 いちど目医者さんに行ったらと言うのですが、なかなか行きません。

 

 お祖父ちゃんは、座卓の横に未読の本を積んでいます。

 読んでしまった本は、まとめて下の部屋の本棚に移します。

 だから、いつも同じくらいの本が積んであっても、同じ本ではありません。

 それが、この数か月、本の移動がありません。

 取り越し苦労なのかもしれませんが、ちょっと心配のお正月でした。

 

 

http://wwc:sumire:shiori○○//d〇.com

 Sのドクロブログ☠!

 

 だいじょーぶかよ!?

 言霊っていうのがあるから、はっきりとは言わないけども、きてんじゃないかって気がする。

 新聞は読むだけでも、目にも頭にも悪いもんだって、教えてくれたのは祖父ちゃんだけどさ。

 それなら、新聞止めちゃえばって思った。

 こないだ料金上がって、月に4400円だもんね。

 基本、年金生活の祖父ちゃんには、ちょっと贅沢品、てか無駄だと思う。

「また、嘘書きやがって!」

 ネットで情報とってるから、新聞の嘘とかいい加減さとか分かってるはずなのに、やめねえ。

 年間で52800円だぜ!

 もう、丸っと止めちゃえば清々しいのにね。そいで、その分栞にちょうだいよ。有意義に使うからさ!

 

 本だってさ、このごろ読んでないじゃん。

 座卓の横に『SAO』とか『こち亀』とか『アクセルワールド』とか『りゅうおうのおしごと』とかあるけど、ひとつも進んでない。

 廊下の本棚にさ『岩波歴史講座』って、読んだら呪われそうな本がズラリと並んでる。

 ケース入りなんだけど、もう黄ばんで、はんぶん朽ち果ててるの。

 たぶん、若いころに無理して買ったんだと思う。

 年齢とか経歴とから言っても、団塊の世代の尻尾でさ。まあ、サヨクなわけですよ。

 でね、一冊出して見てみたわけですよ。

「ゲ!?」

 吐きそうになったね!

 傷んでんのはケースだけで、中身真っ新!

 挟んである紐の栞も、なんだか押し花みたいにペッタンコ!

 ああ、積読は昔からなんだ!

 まあ、情けないような、安心したような……。

 だけどね、ちょっと心配になった。

 孫娘まで、ペッタンコにしないでよね!

 ちょっと、栞って名前がおぞましく思えた正月だったぜ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔法少女マヂカ・254『田中執事長の閃き』

2022-01-16 10:42:04 | 小説

魔法少女マヂカ・254

『田中執事長の閃き語り手:マヂカ  

 

 

 鉄道では行くだけで二日かかる。

 最高時速なら鉄道よりは速いが、道路が未整備な大正時代では、車でも三日、どうかすると四日。

 可能性としては飛行機。

 だが、まだ民間航空は成立していない。

 ちょっと無理をして、創設間もない軍の飛行機なら、あるいは……しかし、侯爵のツテを頼っても、軍の飛行機を使うのは難しい。

 調べてみると、長崎には、まだ飛行場そのものが無い。

「どないすんのん?」

 ノンコが泣きそうな顔で聞いてくる。

 魔法少女のわたしでも、窓辺で爪を噛むしかないのだ。準魔法少女のノンコは涙をためてオロオロするしかない。

 霧子は、ソファーで仰向けになって、腕を組んで天井ばかり見ている。

「凌雲閣のドアはどうかしら……」

 自信のない声で呟くように言う。

「だめでしょ、あれをは、時間を遡れるけど、浅草近辺にしか飛べないよ」

「そうね……」

「ねえ、遡れるんやったら、そこから長崎に行ったら?」

「だめよ、遡れると言っても震災の前後数日しか飛べない。飛んでも、震災で鉄道も道路も寸断されてる」

「そうか……」

 アイデアが出尽くすと、再び沈黙が部屋を支配する。

 この堂々巡りを、もう二時間も続けている。

 

 窓の下には、車寄せから正門へのアプローチが見下ろせる。

 箕作巡査は、フィアンセが誘拐され、居てもたってもいられないはずなのに、きちんと門衛室の前で、いつものように立哨している。

―― いや、こうしている方が落ち着くんです。ひょっとしたら、いい考えが湧くかもしれませんし ――

 いい男だ。

 田中執事長は、後ろ手組んで、車寄せのロータリーをグルグル歩いている。

 時々、二階のこの窓に目をやって、互いに――いい考えは?――という顔をするんだけど、横に首を振り合うだけで終わってしまう。

 時々、他の執事やメイドが仕事の指図受けに来たり、伺をたてにくるが、それには微笑みを浮かべ慣れた様子で指示をしている。さすがは、高坂家筆頭家老の家系の執事長だけのことはある。

 若い執事が荷物を載せた台車を押してやってきて、なにやら指示を受けている。

 高坂家では、ほぼ毎日郵便や小荷物を出す。侯爵家としての付き合いや日々の生活、侯爵の仕事がらみでも、けっこうな荷物や郵便物になるからね。

 田中執事長は、それを毎日チェックして間違いが無いようにしている。

 こんな時でも、日々のルーチンに手を抜かない姿勢は立派なものだ。

 

 あ……という感じで執事長の手が停まった。

 

―― そっちに参ります! ――

 口の形で、そう言うと、三十秒後にはドアがノックされた。

「なにか思いついたの!?」

 霧子が、真っ先に詰め寄ると『まあまあ』という感じで切り出した。

「池袋の西、豊島郡に長崎がございます!」

「「「え、東京に!?」」」

 言って思いついた。

 九州のそれが、あまりにも有名なもので『長崎』と言えば、そこしか思わなかったが、『堀の内』や『二宮』のように、どこにでもというほどではないが、地名は全国規模で存在するものが多い。

「下手人も来いと申すからには、すぐに来られる『長崎』を差して居ると存じます!」

 執事長は『下手人』などと大時代の言葉を使う。

 なんだか、遠山の金さんのように見えてきた。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする