大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・121『アキバ子』

2022-01-26 15:04:21 | ライトノベルセレクト

やく物語・121

『アキバ子』 

 

 

 こっち こっちこっち

 

 メイド将軍に阻まれ、途方に暮れていると、どこからともなく呼ぶ声がする。

「やくもさま、足もとです」

 赤メイドが、口も動かさずに呟く。

「足もと?」

 わたしも、口を動かさずに聞いてみる。

「マンホールです」

「「足もとの」」

 アカ・アオの声が揃って、ソロっとマンホールを視野の端っこに捉える。

「あ、わたしみたいなのが居る!?」

 ポケットから首だけ出した御息所が小さく驚く。

 マンホールの蓋が少しズレていて、御息所と同じくらいの女の子が口の形で『こっちこっち』と言っている。

 え、マンホールの中?

—— はい、マンホールです ――

「これは、裏アキバからのお誘いのようです」

「ラッキーです。裏アキバは、まだお味方のようです」

 アカクロメイドは、そう決めつけると、カゴをマンホールの上に据えて「「お乗りください」」とカゴの簾を上げる。

「う、うん」

 言われるままに乗ろうとしたら、カゴの底が開いていて、その下のマンホールも開いている。

「カゴに乗るふりをして、マンホールに入ってこいってことよ」

 御息所が分析。

「よいしょっと」

 カゴの底経由でマンホールに入ると、ガシャリと音がして、マンホールの蓋がしめられる。

 

 あ、真っ暗!

 

 ちょっとビックリして、よろける。

「おっと」

 声が掛かったかと思うと、誰かが支えてくれる。

 あれ? 御息所もお迎えの子も、1/12くらいの大きさ。わたしを抱きとめるなんてできない。

「ちょっとだけ、お手伝い」

「え?」

 ちょうど非常灯のようなものが点いて、その姿が見える。

「「あ、メイドお化け」」

 御息所と声が揃う。

「説明は後よ、ついて来て」

 足元のお誘いに目配せすると、地下下水道……というにはキレイで、赤じゅうたんが敷かれた地下通路。

 壁や天井も、チェックや水玉や花柄や縦縞、横縞のパッチワーク。

「この柄って……」

「考えない方がいい」

「う、うん」

 地下通路を抜けると、アキバの駅前広場……なんだけど、アニメの背景画のように、よく言うときれい、あからさまに言うと実在感が無い。

「ここが裏アキバ」

「う、うん」

 メイドお化けの短い説明に頷くしかないんだけど、ちっとも釈然としない。

「二丁目でもね、やくもに任せっきりではあんまりだって声があがってね、ま、それで、わたしが、ちょびっとだけ手伝うことになったわけ」

「嬉しい、手伝ってくれるの!?」

 将門さまはあんなだし、アカアオメイドともマンホールで別れてしまうし、正直なところ、どうしようかって思ってたところ。

「手伝うと言っても、この裏アキバに渡りを付けるところまでよ。あ、その子がね……」

「わたし、裏アキバの妖精でアキバ子と言います」

「空き箱?」

「いえ、アキバの子どもで、アキバ子です」

「あ、えと……」

 正直、1/12サイズでは心もとない。

「そのまま業魔と戦っては分が悪いのです。地上では業魔どもに姿を見られっぱなしですし、戦うにしても、御息所さまは、お小さいまま……」

「あんたに言われたかない」

「アハハ、ですよね。でも非力なのは事実でして、万全の力を発揮していただくにはアキバの夢の力を纏っていただかなければなりません」

「アキバの夢?」

「説明していては時間がかかります。わたしの中にお入りください。エイ!」

 そう言うと、アキバ子はグルンとでんぐり返し。

 すると、アキバ子は本当の空き箱になってしまった。

 驚いていると、空き箱の蓋が開いて、中から小さなハートがホワホワ光りながら浮かび上がってきた。

「さあ、そのハートを見つめて!」

「う、うん」

 メイドお化けに言われて、ハートを見つめていると、猛烈な眠気に襲われる。

「じゃ、活躍のほどは二丁目のみんなで観てるから、がんばってねえ(^o^;)!」

 あ、なんだか無責任、なんか言ってやらなきゃ……思っているうちに意識が無くなって……いった……。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子

 

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明神男坂のぼりたい・53〔ラッキーAMY!〕

2022-01-26 07:10:47 | 小説6

53〔ラッキーAMY!〕 

      

 


 今日はガンダム(岩田武先生)の気まぐれで席替えをやった。

 四月もこの時期になると、年度初めのルーチンは、たいがい終わってしまってる。だけど、木曜は定例のロングホ-ムルーム。ただボサーっとしてるワケにはいかないんだ。


「本当は中間テストまでは出席番号順だけど、もう二年生だし、適当に慣れてきただろうから、席替えするか?」

 

 ウワアアアア(((^O^)))!

 みんなから歓声があがった。


 クラスというのは、それ自体あんまりおもしろいことはない。

 授業やら学校行事の便宜のために分けられてるのは、小中高と八年目になったら、よく分かる。

 お仲間の基本は、自然にできた仲良しグループだよ。

 だいたいクラスの中でできるけど、たまにクラスを超えてグループになることもある。そして、90%以上は男女別。いくら男女平等、機会均等だといっても、別々が自然だと思う。何年か前に小学校で男女混合名簿だったけど、なんにも変わらない。やっぱり男女に別れてしまう。先生の仕事も複雑になるだけで、二年ほどで廃止になった。

「目がわるいとか、勉強したいから前の方に来たいやつは、手をあげろ」

 これは先生の担任としての「配慮はした」いうアリバイ。

 ガンダムは、この三月までは生指部長だったから、そのへんにぬかりはない。

 好きこのんで前に行きたいヤツは……いた。近藤と芹沢という女子が手をあげた。単に目が悪いのか、なんか人間関係かは分からないけど、ガンダムは、この二人チェックしただろうなあ。

 席替えは、最初の十人まではクイズで決める。

「校長先生の名前は?」

 数人の手が上がって、まだ名前を憶えていない男子が答える。

「○○○○先生!」

 一瞬の間があって、みんなが笑う

 それは、不当人事やら恣意的な学校運営やって、三月でクビになった前校長の名前。

 ちょっと気まずい間が開く。

「ご近所問題、江戸の総鎮守と言われる神社は?」

「ハイ、神田明神です!」

 もちろん答えたのはあたし! 他にも二三人は分かってたようで、残念そう。

「じゃ、神田明神の御祭神は?」

 続いて答える。

「ハイ、大己貴(オオナムチ) 少彦名(スクナヒコナ) 平将門です!」

「え、あ、そうだな」

 ガンダムは大己貴命と少彦名命は知らなかったみたい。

―― うちの親父目立ちすぎ ――

 五月の声がしたような気がした。           

「今のAKBのセンターは?」

 くだけた質問もある。

「うちの担任はイケメンランク十段階評価で、何番目か?」

 これは、オッサンふざけすぎ。ガンダムはイケメンいうカテゴリーにもともと入らない。でも無理矢理一番と言わせて、クイズを締めくくった。あとは黒板にあみだくじ書いて決めた。


「じゃあ、自分の机と椅子持って移動、始め!」

 三十三人の生徒が、一斉に机と椅子を持って八メートル四方の教室を移動。これだけで五分は潰れる。そして机動かすときの積極性なんかをガンダムは見てる。単に時間消化だけじゃなくって、見るべきは見てる。やっぱり、元生指部長、やることに無駄はない。

 この席替えで、前が伊藤ゆかり、後ろが中尾美枝になった。

「よろしくね、明日香」

 美枝が気楽に声かけてきた。

 あんまり話したことはないけど、気楽なオネーチャン風。元気な子で、声も大きい。いつもニコニコしてるけど、言いたいことはハッキリ言う。前のクラスでイジメやってた男子を凹ました武勇伝のウワサ。

 前の伊藤さんは、落ち着いた優等生。で、この二人は一年の時同じクラスで、性格ぜんぜんちゃうのに仲がいい。
 積極的な美枝が、気遣って間に入ったあたしに声かけてくれたのが嬉しい。

「あたしたち、チームAMYいうことにしよっか?」

「AMY?」

「ほら、明日香、美枝、ゆかり」

「あ、頭文字?」

 美枝の提案で即決。

「あ、でも、あたしがトップ?」

「あ、他の並べ方だと発音できないし」

「YMA AYM MAY」

「MAYはメイって読めるかな?」

「でも、エイミイって元気っぽいじゃない?」

 ゆかりがフォローしてなるほどという気がする。

「神田明神も、将門さんがイチオシで有名だったりするし」

「あ、だったらわたし(ゆかり)がトップなの?」

「ハハ、ちゃっかりあたし(美枝)がセンターでもあるぞ(^_^;)」

 なんだか、調子よく決まってしまった。 

 

 放課後、食堂のジュースでエイミーの発足式。

 自販機のボタンを押すと、めったに出ない『当たり!』が出て、幸先がいい。

「「「ラッキー!」」」

 二個のジュースを食堂の湯呑に三等分。

「「「かんぱーーい!」」」

 湯呑をかたして、食堂を出る。

 初夏をを思わせる日差しが、ちょっぴり眩しかった!

 ここにきて二年生は、おもしろくなりそう。

 

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